17.グレルという男
次の日学校へ行くと、とんでもない事になっていた。
机の上に罵詈雑言が書かれていたのだ。
それどころか、黒板には『雑魚エスタ』と書かれていた。
小学生か。
「なんだ、この学の無さそうなやつがやる露骨ないじめは。」
俺がそう呟くと、隣にいたナルキが言う。
「絶対あいつだよ。」
彼は一人の男を指差した。
指の先にいたのはグレルだった。
昨日の復讐のつもりなのだろうか?
「なんていうか、ガキかよ。」
ただよう小物臭がすごい。
俺は文句を一つ言ってやろうと思ってグレルの方へ歩こうとする。
が、その途中でハプニングがおこる。
「エスタ君、ララリアさんのこと殴ったって本当!?」
急に、エリーゼがこちらにくると、そう問い詰めてきたのだ。
「なんのこと!?」
そう返すと、彼女が食いつき気味に怒ってくる。
「知らないふりするんだあ。学級委員をこれから一緒にやってく仲だと思ってたのに、見損なったよ。」
「いや、本当に知らんわ。まずララリアって誰だよ。」
「え、名前すら覚えてないの。ほら、あの子。」
そう言うと、泣きながらこちらを見ている女の子の方を指差す。
彼女は恨めしそうな視線をこちらにおくる。
「ええ、俺なにもやってないよ……」
そうエリーゼに伝えると、聞こえていたのか、ララリアさんが叫ぶ。
「嘘つきッ! このクズッ!」
彼女の大きな声がクラスに響き渡り、ララリアさんと俺に注目が集まった。
それをいいことに彼女は好き放題ありもしない事を言いだした。
「この人、昨日私に下着をよこせって言ってきて、拒否したらなぐられたんですよ!」
瞬間、クラス全体でどよめきがおこる。
「うわ〜、最低〜」
「クズだな……」
「最下位のくせに……」
あちらこちらから冷たい視線が飛び交う。
俺はとっさに否定した。
「いや、ちょっと待て、俺はそんな事してない。」
「しましたよッ!」
即座に反論を喰らった。
彼女は、さらに追い討ちをかける。
「あなた言いましたよね? もしもパンツをよこさなかったら。一生お前の部屋で○○○○を○○○○するぞって! わたし、怖くて、でも逆らえなくて……」
「事実無根だッ!」
必死にながれに逆らうが、外野の反応はつめたいものだった。
「きも……」
「やば、生理的にむりかも……」
「なんで生きてんだよ……」
つめたいどころか、極寒だが……
なんでこんな事になっている?
俺が疑問に思っていると、外からもう一つの声が聞こえて来る。
「おいら、見てました!」
そうありもしない事実を言っているのは、昨日グレルと一緒にいた取り巻きの一人だった。
そこで俺はすべてを理解した。
これ、グレルが用意した茶番だ。
取り巻きは俺のことを指差して説明する。
「昨日おいら、狩りへ行ってたんっすよ。そしたら帰り道に女の子に恐喝してるやつがいて、見に行ったらこいつだったんすよ。」
「こちらのパマルさんは、私を助けてくれたんです。」
「当たり前のことをしただけっすよ。」
彼がそう言うと、クラスメイト達は喝采をおくる。
一方で俺に対しては、
「やっぱ本当なんだ。」
「きも、死ねよ。」
「Fクラスの恥だろ。」
みんな好き放題言ってくる。
なんだこの扱いの違いは。
なんで学園生活四日目でこんな理不尽なあつかいを受けなきゃならんのだ。
俺はたすけを求めるようにナルキの方を見る。
しかし、彼は俺と目があった瞬間にそらし、身を後ろにひいた。
こいつ俺を見捨てやがった。
完全に今は俺が劣勢だ。
こういうのは世の中言ったもん勝ち。この状況を巻き返す証拠のない俺は、今何を言ってもしょうがない。
くそッ!
俺グレルのこと嫌いだ!
☆★☆★☆★☆★☆★
朝から不幸なことが起こったが、考えても仕方ないので、一旦忘れて授業に集中する事にした。
俺の名誉回復をどうするかは寮にかえってから考えることにする。
ひとまずは忘れて気持ちをきりかえ、一限目の授業をうけた。
しかし、ハプニングは休み時間でも起きる。
授業が終わった瞬間、教室に一人の男がたずねてきたのだ。
その男の名はビルジュア・アストン。オルエイ高等学園の現生徒会長だ。
金髪青目で整った顔をしていて、勉強もできるし、戦闘は大人顔負けだそうだ。
天は二物を与えずとはいうが、あれは十物くらいは与えられている。
そんな彼が一体何目的できたのかと言うと、なんと俺だった。
「エスタという生徒はいるかい?」
彼がそうたずねながら教室に入ってきた時、周囲は歓声を上げていた。
そんな中、俺は嫌な予感が頭によぎる。
名前を呼ばれたので席をたちあがり、彼の元へと、あるいていく。
「な、なんでしょうか。」
「この張り紙を生徒会室前に貼ったのは君かい?」
そう言って、彼は紙をまえにつきだす。
そこにはとんでもない事が書いてあった。
『生徒会なんて所詮ザコのあつまりっしょ。この1-Fエスタ様の方が100倍強いし。くやしかったらかかってこい。』
俺は言葉をうしなった。
「い、いえ。俺じゃありません。」
生徒会をザコよばわりは流石にやばい。
目の前にいる生徒会長なんて、国最上位の四天王という地位を若くして得ている天才だぞ!?
俺はグレルの方をみる。
彼はにやにやの笑顔でこっちを見ていた。
これもグレルの仕業だと確信した。
「ひとまず、話を聞かせてもらえるかな?」
「は、はい……」
俺は生徒会室に連れて行かれる羽目になった。
周囲の俺をばかにするような笑い声が腹立つ。
☆★☆★☆★☆★☆★
会長から解放される頃には休み時間は終わっていた。
休み時間とはなばかりで、全く休めていないがしかたない。
しっかり切り替えて授業には集中しようと思う。
ただその矢先、さらなるハプニングが遅いかかる。
授業の先生に名指しで呼ばれたのだ。
「エスタ君、すこしいいですか?」
「またか……」
俺は先生の元へ行く。
先生は、ほんの少しいかりを込めて言った。
「教務室にて、これを私の机の上に置いたのはあなたですか?」
そう言いながら、彼が見せてきたのは大人のオモチャだった。
未成年は購入が禁止されていて、大人のためにつくられた『それ』だった。
しかも、表にエスタと俺の名前が書かれている。
十中八九グレルがやったのだろうが、それを証明する証拠がない。
「いえ、違います。」
そういうしかなかった。
「ではこの名前はなんですか?」
「多分、誰かがいたずらで書いたのかと……」
「はあ、このオルエイ高等学園にて、入学三日目でそんなイタズラをする子がいるとは、思えませんけどね。」
完全に俺を疑っている目だった。
しかし、俺にはこれ以上なにもいえない。
現に何もやってないし、やったのはグレルだとも言えない。
俺が何も喋らないのを見て、先生はため息をつく。
「もういいです、席に戻りなさい。次からはこういった事がなきようお願いします。」
俺じゃないのに……
なんだかもやもやした気持ちで俺は自分の席に戻った。
決めた、グレルぼこす。




