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俺は、魔力0の最弱魔族!〜学園ランキング最下位の俺だが、理不尽跳ね除けトップへと成り上がる!〜  作者: ダンディー


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16.グレル・サーズティン

「な、グレル!? なんでここに」


「様をつけろ、下民が。」


 見ると木によりかかったグレルの周りには3人の取り巻きが並んでいた。


 グレルは機嫌が悪そうにこちらを睨んでいる。


 俺は何があってもすぐに動けるように警戒していた。


 グレルが話しだす。


「テメエら2450オルも稼いだそうだな。」


「なんでそれを……」


 俺が聞くと、グレルが自身の取り巻きを指さす。


「こいつから聞いたんだよ。」


 指の先にいるのは、頭皮が薄く、太っている男だった。


 俺らが換金していた所を見ていたのか。


 見るとこの太った取り巻き、かなり息を切らしていた。


 もしかして、俺達の換金を盗み見てから全力疾走でグレルの元へと走っていって伝えたのだろうか?


 換金が終わってから大して時間が経ってないし、恐らくそう言うことだろう。


 なんて古典的で面倒な。


 少しこの取り巻きが不憫に感じる。


 それはそうとして、グレルの目的は恐らく昨日言っていた税金だろう。


 多分この後金をよこせとせびってくるはずだ。


「金をよこしやがれ。」


 ほら。


 やっぱり言った。


「昨日の朝言っていた税金ってやつか?」


「そうだ。ほんとは半分だが、テメェらの稼ぎの多さに免じて四割でいいぜ?」


「なんでせびってる側がそんなに上から目線なんだよ……」


「あ?」


 やべ、つい本音が出ちゃった。


 こいつとはなるべく関わらないようにしようと思ってたのに。


 俺の言葉にイラッと来たのか、グレルが目を細めて言う。


「テメェ、今なん」


「ほれ、やるよ。」


 下手に絡まれる前に、俺は大体四割くらいのお金を手に取り、グレルの手のひらにポン、と乗せる。


 貴族と敵対するのはやめた方がいい。


 俺は出来るだけ穏便に済ませるように行動する。


 俺がさらっとお金を渡した事に意表をつかれたのか、グレルはポカーンと口を開ける。


 そして、気を取り直して言う。


「意外と素直に渡すんだな。」


「税だけ払ってれば、下手に干渉して来ないんだろ? ならそれに越した事はない。」


「はっ、腰抜けが。」


 なんとでも言え。


 俺は余計な事に時間を割きたくない。


 というか、金を渡さなかったらキレる割に、金をすぐに渡せば腰抜け呼ばわりされるって、こいつは一体何をすれば満足できるんだ?


「ま、俺は平穏な生活をおくれたらそれでいい。これで帰っていいんだろ?」


「ああ、構わないぜ。チキン野郎。」


 余計な一言が多いが、まあ無視しよう。


 俺は勝手にお金を渡したことをシアに謝る。


「勝手に悪いな。」


「別に気にしないよ。今日はほんと足引っ張ってばっかりだったし。」


 そうやりとりを交わすと、俺達は自然に寮に向かって歩き出した。


 不意に、後ろからグレルの皮肉が聞こえる。


「さあ、帰れ帰れ、女のおかけで稼げただけの無能が。」


 なぜかめっちゃ煽って来る。


「所詮は学年最下位のカスだ。」


 お金はちゃんと渡したのに、こいつは何がしたいんだ。


「逃げて、隣の女の子にでも慰めてもらいな。」


 まあ、俺は気にしない。


「はは、ったく、親の顔が見たいぜ。こんなやつを育てた親は、相当弱っちい駄目親なんだろうな。」


 そこで俺は足を止める。


 そして、シアに小声でもう一度謝る。


「なあ、シア。ごめん、もしかしたら君を巻き込むかも。」


「いいよ、多分そうなるのは知ってたから。」


「嫌だったら先に帰っていてくれ、そんで、俺と関わらないようにしてくれ。そしたらあいつらに変な事もされなくなる。」


「私は気にしないって。やりたいようにやっていいよ。」


「俺が気にするんだが……」


 まあ、いいや。


 俺は振り向いて、グレルの元へと歩みを進みながら言う。


「なあグレル。」


「様をつけろっつってんだろ。」


「お前、もしかして喧嘩したいだけなのか?」


 そう言われて彼は黙る。


 俺は続けた。


「だって、金が欲しいだけなら、俺は良いカモだからな。そんな煽る必要は無えだろ。」


「俺様はただ腰抜けが嫌いなだけだ。」


「ものは言いようだな。でもいいぜ、その喧嘩買ってやるよ。」


「ああ?」


 俺はグレルに近づいていく。


 そして、昨日のことを問い詰める。


「お前、カオって生徒を思いっきり殴ったよな。」


「あん時、見てやがったのか。」


「たまたま通りかかっただけだったがな。おれ、あの後1時間くらい介護してたんだぞ。容赦無しに全力で殴りやがって…」


「妙に正義感の強いやつだったな。ムカつくからコケにしてやったんだ。」


「それに自分が一番強いとか言って、意味わからんルール作り出すし…」


「事実、俺がクラス順位一位だ。」


「クラス順位が高いからって一番強いとは限んねえだろ。」


「あ?」


 ほんとは貴族とは関わりを持ちたくない。


 俺の元いた村の村長は、理不尽を要求してくるその地区を支配している貴族にさからって殺された。


 あれを見ているからこそ、貴族がどれだけ理不尽な存在かは理解しているつもりだ。


 例えば、ここでグレルを怒らせて、その親まで怒ったとしよう。その時に、俺に命はないだろう。


 俺の憧れている夢の為には、いつかは関わる時が来るとは思っていたが、絶対に今ではないと思っている。


 でも、それでも…


「グレル、お前、ムカつくから一発殴らせろ。」


 俺がそう言うと、グレルの取り巻きは幽霊でも見たかのような驚いた表情をこちらに向ける。


 グレルは俺を一瞬睨んで、その直後爆笑する。


「ハハハハハ! 学年最下位が何をほざくかと思ったら、殴らせろだ? いいぞ、やってみろよ、できるものなら…」


 彼がそう言い切る前に、俺は彼の懐に入る。


 急の行動に意表を突かれたのだろう。グレルは、反応出来ていなかった。


 そこからは一瞬。


 俺の右拳は思いっきり彼の左頬へと吸い込まれていく。


 柔らかい感触と共に確かな衝撃が右手全体に走り、そのまま拳を振り抜くとグレルはハの字になって思いっきり吹き飛ぶ。


 彼が右手に持っていた金は地面へと散乱する。


 俺はそれを拾って言った。


「お前、思ってたより弱いな。」


「テメエッ! 卑怯だぞッ!」


「喧嘩に卑怯もクソもあるか。お前が油断してたのが悪い。金は返してもらうぞ。」


 そう言って、俺はグレルに背を向けて、寮へと歩みを進める。


 彼は左頬を押さえて去ろうとする俺に向かって叫ぶ。


「覚えてろよ、クソ野郎。俺様に歯向かったこと、後悔させてやるからな。」


「ああ、喧嘩ならいつでも買うぞ。」


 俺はそう言い残して、彼の前から去った。


 後ろの方から見守っていたシアと合流して一緒に寮へと帰る。


「満足した?」


 シアがそう言うと、俺は返した。


「多少はスッキリした。でもまあ、明日あたり何かやって来るだろうな。」


 俺達は、歩きながら喋った。




 ☆★☆★☆★☆★☆★




 寮へ着いた後、俺は一人で悶絶する。


「ああああああ! やっちまったああああああ!」


 俺がベッドで叫ぶと、下のベッドでくつろいでいたナルキから話しかけられる。


「エスタ、どうしたの?」


「貴族に喧嘩うっちまったああああ!」


 絶対ダメなのはわかってたのに、衝動的にやらかしてしまった。


「もしかして、グレルとなんかあったの?」


 ナルキが聞いて来るので答える。


「なんかあったというか、思いっきり殴ったというか。」


「殴った!?」


 驚くナルキを横に、俺は一人後悔に押し潰される。


「なんで俺はこう、やりたいと思ったらダメなことでもやっちまうんだああああ!」


 俺は過去の自分が恨めしくなった。


 別に死ぬほど嫌な事を言われたわけでも無いのに、ちょっとムカついたという理由で、貴族を殴ってしまった。


「くそう、こうなったらもうどうにでもなれ。」


 もはや、やけくそになっていた。


 俺はなんも考えない事にして眠りについた。

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