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狂鬼の鈴鹿~タイムリープしたらダンジョンがある世界だった~  作者: とらざぶろー
第三章 混成の1層3区

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51/202

18話 光明

 狂乱蛇擬きょうらんへびもどきの攻撃をParks(パークス)のリーダーである陵南りょうなんが弾く。だが、狂乱蛇擬は弾かれても弾かれても変わらず狂ったように陵南に突っ込んでくる。防御も硬く、弾いては首筋を斬り付けるが、表面の鱗に邪魔をされ致命傷を入れられずにいた。


 一瞬の隙で周囲を見回す。陵南と同じように、富士森ふじもり小宮こみや長沼ながぬまの三人もそれぞれ盾を駆使して狂乱蛇擬の攻撃を防いでいる。三匹もいれば避けるべき狂乱蛇擬が四匹もいる。それだけじゃない。幕下蛙も含めいつの間にか周囲には20匹はモンスターがいた。


 絶望するには十分な数だった。しかし、Parksのメンバーは諦めない。


「無茶するなッ!! 少しずつでいいから確実にダメージを与えていけ!!」


 陵南が自分に言い聞かせるように吠える。Parksのメンバーからも気合いのこもった声が返ってくるが、Urbanからは返ってこない。


 陵南が立川を正気に戻したことで、Urbanのメンバーもなんとか戦闘に参加している。だが、練度も士気も最悪だった。強力なモンスターをParksが引き受けているのに、弱いモンスターすら倒すのにてこずっている始末だった。


 どうすれば打開できるか。懸命に頭を回転させながら、狂乱蛇擬の攻撃を弾きいつもより深めに踏み込み斬りつけた。リスクをとった分突破口となる傷を入れることができたが、その分隙が大きくなる。


 側面から序ノ口蛙が陵南に飛び掛かってくるのが見えた。序ノ口蛙は3区で最も弱いモンスターではあるが、あいつらは探索者にしがみつき押し倒そうとしてくるため行動が阻害されてしまう。序ノ口蛙に抱き着かれれば、次の狂乱蛇擬の攻撃をいなせるか怪しくなってしまう。


「陵南! 油断しない!!」


 陵南と序ノ口蛙との間に戸吹とぶきが回り込み、構えた槍から鋭い3連突きを放ち序ノ口蛙を迎撃した。腹、胸、喉と繰り出された突きは、最後の喉に深々と刺さり序ノ口蛙を煙へと変えた。


「助かった!! 疑似粘性スライムが厄介だ! 戸吹行けるかッ!?」


「当然!! 立川そのまま幕下蛙の相手頼んだよ!!」


「くっそ!! 福生ふっさも手伝え!!」


 Urbanの二人に幕下蛙を押し付けた戸吹は、槍のリーチをいかし半透明で視認性が悪い疑似粘性スライムのコアを潰して回る。酸性の溶解液を撃ってくるが、魔力操作で強化した槍であれば、空中で叩き落としても武器が傷つくことはない。


「くそっ! 岩石土竜が二匹迫ってきてるぞ!!」


「戸吹はそのまま岩石土竜を頼む!! 立川ァ!! 一匹そっちで受け持て!!」


「町田!! レイナ!! お前ら行け!!」


「はぁ!? 岩石土竜とかウチじゃ攻撃通んないんだけど!?」


「倒す必要はない! 俺たちが行くまで時間を稼げ!!」


 何とかUrbanに任せながらも、モンスターの群れをさばいてゆく。3区の強力なモンスターである狂乱蛇擬、岩石土竜、幕下蛙のどれかでも倒せれば状況も好転するだろうが、それが難しい。3区のモンスターは硬い敵が多く、簡単には倒されてくれないのだ。


 陵南は状況の悪さに歯噛みする。Parksは一人で狂乱蛇擬などとやりあっているが、それもいつまで持つかもわからない。先ほどの様に陵南自身、他のモンスターの攻撃で決定的な隙を晒すかもしれないのだ。


 襲い掛かってくる狂乱蛇擬を睨み付ける。先ほど深手を入れたというのに、傷口が広がろうが構わず突っ込んでくる狂乱蛇擬。この傷をさらに追撃していけばこいつはもう倒せる。


 一匹仕留められれば、後は二人以上で挑んでモンスターの数を減らしていけばいい。


 裂ぱくの気合いを込め、狂乱蛇擬の頭をカウンター気味にシールドバッシュを行った。今までは狂乱蛇擬の攻撃を受け止めてから弾いていたため、狂乱蛇擬は予想できず勢いよく頭をのけぞらせる。


 シールドバッシュによりさらに広がった傷口に向け、渾身の袈裟斬りを放った。振り下ろされた剣は見事に狂乱蛇擬の傷口を抉り、首の7割ほどを切断することに成功した。


 だが、それでも狂乱蛇擬は死なない。蛇の生命力は凄まじいのだ。千切れかけた首も構わずに、大口を開けて噛みついてくる。だが、千切れかけた首のせいで突進力もない攻撃は脅威にもならない。


 陵南がカイトシールドで横殴りに顔を殴れば、抵抗も少なく狂乱蛇擬は弾かれた。そして、無防備にさらされた首めがけ剣を振り下ろす。狂乱蛇擬の首は完全に切断されたが、それでもまだ死なない。


 首だけになろうとも襲い掛かろうともがいているが、首だけではろくに動くこともできない。陵南は転がる首に剣を刺し、狂乱蛇擬を煙へと変えた。


「狂乱蛇擬はやったぞ!! すぐ加勢に―――」


 振り返り仲間の援護に向かおうとした陵南の目の前で、富士森が宙を舞っていた。見れば、狂乱蛇擬のすぐ脇で幕下蛙が突っ張りの姿勢をとっているのが見えた。


「富士森ッ!!」


 富士森を追撃しようとしていた狂乱蛇擬と幕下蛙の間に、陵南が駆け込む。だが、狂乱蛇擬と幕下蛙の二体からの攻撃を陵南も上手くさばくことはできない。


「なんで幕下蛙が!?」


 幕下蛙は上柚木かみゆぎと立川たちが相手していたはずだ。あいつらに何かあったのか。そう思うが、直前に見た記憶を思い出す。


 誰もやられていなかった。つまり、この幕下蛙は新たに出現したモンスターということだ。


 せっかく狂乱蛇擬をやったというのに、同格のモンスターが追加できた。その堂々巡りな状態に苛立ちを覚えるが、ならばまた倒せばいいことでもある。


「富士森! まだ動けるかッ!?」


 それにもまずは富士森が戦線に復帰する必要がある。二体のモンスターに攻められる陵南は、後ろを振り向く余裕がない。


「まだいけるけど、まずいぞ陵南! 新手のモンスターだ!!」


「わかってる!! 俺が幕下蛙をやる! お前は狂乱蛇擬をやってくれ!!」


「違う! そいつじゃない!!」


 痛むだろう身体に鞭をうち立ち上がった富士森が陵南に告げる。最悪の内容を。


「奥から新しいモンスターがまだ来てる!! 狂乱蛇擬も岩石土竜も幕下蛙もいやがるぞ!!」


 現状でもすでにギリギリだった戦場。まだまだ食らいつくしてすらいないのにおかわりが如くやってくるモンスター。絶望するには十分な条件だった。


「くそっ!! お前らまた逃げるしかねぇ!!」


「いや!! ウチまだ死ねない!!」


「リオ行くよ!!」


 Urbanの連中がまた逃げ出そうと持ち場を去ろうとしている。そうなれば確実に崩壊する。いくら逃げようとも、疲弊した今の状態で逃げ切れるわけがない。


 だからこそ、陵南は腹を括った。


「大丈夫だ!! まだ大丈夫!!」


 気休めでしかない。そんなの誰もがわかっていた。だが、それを言葉にできる人間は少ない。土壇場で、それでも大丈夫と踏ん張れるのは、探索者にとってかけがえのない才能であった。


「顔上げろお前ら!! こんな状況、俺らは経験済みだろうが!!」


 2区で緑黄狼に囲まれたときよりも状況はひどい。だが、似たような体験をして生き残った自負がParksにはあった。彼らは諦めなかったからこそ、今ここに立てているんだ。


「ああ! お前ら狂乱蛇擬とっととやっちまうぞ!!」


「おう! すぐ終わらせてやるよ!」


「そうだね! 来れるもんなら何匹だってくればいいよ!」


「それは勘弁だけどな!!」


 陵南の声にParksは士気を上げる。その様子にありえないとUrbanは呆気にとられるが、Parksの上がった士気のおかげでUrbanが逃げ出すことは無かった。


 だが、現実問題どうにもならないことはある。このままでは一人二匹の狂乱蛇擬や幕下蛙と戦う必要が出てくるだろう。そんなの無理だ。富士森が復帰するまでの一瞬の間でも陵南ですら反撃もできないほどだったのだ。


(どうする……どうすればッ!?)


 諦めず戦い続けたParks。絶望的な状況だろうと戦い続け時間を稼いだからこそ、彼らの前に一筋の光明が差した。


「【ウォーター・カッター】」


 突如降り注がれる水の刃。デカブツを狙って放たれたそれは、陵南の目の前の幕下蛙にも直撃した。


 怯む幕下蛙を前に何が起きたかを理解する前に、Parksは追撃を仕掛ける。立川たちは何が起こったのかキョロキョロあたりを見回すだけで攻撃できていなかったが、Parksはデカブツに深手を負わすことができた。


「やぁ、探索者高校の先輩方」


 混沌ひしめく戦場に現れたのは美しい容姿の整った4人の女性。鈴鹿であれば芸能人のような、と枕詞を付けただろうが、この世界の人間は違う。整った容姿というのはダンジョンでステータスを盛れている証左。その見た目はまさに救いの女神の様であった。


「お前ら、zooか!? いや、応援感謝する!!」


「話が早くて助かるよ。さぁ、せっかくのお祭りだ。みんな楽しもうかッ!」


 希凛きりんはピンクのメッシュが入った真っ白な長髪を風になびかせ、女神とはかけ離れた凶悪な笑みを浮かべ戦場に加わった。

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― 新着の感想 ―
なるほど、先輩だからzooより進んでたのか、そう言えば1年なんだったね、zooのみんなは
陵南「大丈夫だ!!まだ大丈夫!!」(まだあわてるような時間じゃない)
三匹もいれば避けるべき狂〜 ちょっと何言ってるのかわからないっすね
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