↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂鬼の鈴鹿~タイムリープしたらダンジョンがある世界だった~  作者: とらざぶろー
第十章 幼子の終わり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

211/245

7話 流転大聖龍

 友愛なる菌糸《きんし》は、鈴鹿にとって満足いくエリアボスであった。久しぶりの武器に加え、縦横無尽に迫りくるモンスターたち。友愛なる菌糸によって強化されたモンスターたちは素早く強力で、下手に強いだけのエリアボスよりも楽しむことができた。


 なにより、群がるモンスター達を羅刹《らせつ》の杖で吹き飛ばすのは爽快だった。無双系のゲームをプレイしている気分で戦うことができ、ちぎっては投げちぎっては投げとテンション上がりまくっていたら、いつの間にか倒していた。


 そして、羅刹の杖にも大満足である。特に、千鈞棒《せんきんぼう》の能力である込めた魔力に応じた重さに変化する能力は、シンプルな破壊力が非常に強くて使っていてとても面白かった。雷撃を生むとか毒を付与するとか、そういった能力もいいのだが、鈴鹿の好みは千鈞棒である。


 ならば始めから千鈞棒を使えばよいとも思うのだが、千鈞棒は等級が秘宝《ユニーク》であり、これから先に進むには見劣りする武器となってしまう。一方羅刹の杖は遺物《レリック》であり、かつ強奪スキルによって強化されている。4層以降であっても当面は使い続けることができるだろう格を持った武器だ。


 それに何より、羅刹の杖は能力をコピーできる。魔法が付与されるような能力にはあまり魅力を感じないが、千鈞棒のような面白い能力を持った武器もあるのだ。そんな武器の能力を好きに試せるというのは非常に魅力的である。


 打撃というのも鈴鹿の性分に合っており、当分は羅刹の杖を使っていこうと思う。もちろん毒手による殴り合いも良いのだが、淵の番との訓練を経て一つの到達点へとたどり着いた気もする。武器も近接戦闘という意味では共通しているので、これもまた強くなるための一手だと思い武器を極めていくとしよう。


 そんな羅刹の杖を鈴鹿はくるくる振り回していた。友愛の菌糸との戦闘から一夜明け、鈴鹿は今日もダンジョンを一人で散策している。


 昨日はヨキと灰ヶ峰が鈴鹿の戦闘を観戦したが、今日はまた別行動をとっていた。昨日、灰ヶ峰は鈴鹿と別れた後、ここ最近挑み続けているエリアボスに挑戦しに行った。魔法を特訓しているらしく何度も殺されていた灰ヶ峰だが、昨日は魔法が納得できるレベルに達したのかエリアボスを倒してきた。そのため、今日の灰ヶ峰はまだ戦ったことがない刃写理山水《じんしゃりさんすい》へと挑むことになったのだ。


 ヨキはというと、今頃は淵の番と戦っている。昨日は友愛の菌糸を倒した後、鈴鹿に連れられ淵の番と戦うことになったヨキ。ヨキは淵の番を相手に、ただ倒す事だけに意識するのではなく淵の番との戦闘で自分の技量を磨くように戦っていた。結果、何度も何度も死にながらも、ヨキは淵の番にくらいついて戦っていた。


 ヨキはすでに斧術《ふじゅつ》のスキルレベルが10もあり、戦神すら発現しているため倒そうと思えば淵の番だろうと倒すことはできるだろう。しかし、鈴鹿の戦闘を観たことで自分に足りないものは技量だと思ったのか、淵の番相手に鈴鹿や灰ヶ峰のような特訓をしていた。


 ヨキは斧術のスキルがレベル10のため、それに合わせ相応の技量を獲得している。しかし、ヨキの戦い方は無数の斬撃を生み出すことで隙を無くす大味な戦い方だ。そのため、生み出す斬撃で止めを刺せないレベルのモンスターが相手では、斬撃を掻い潜られ接近されてしまう。そうなると、大振りの目立つヨキの攻撃は隙だらけのものと成り下がってしまうのだ。


 その弱点を克服するために。いや、鈴鹿のように圧倒的な技量をもってモンスターを倒せるように、ヨキは自身の最大の武器である無数の斬撃を封印して淵の番と戦っていた。慣れぬ戦い方であり、戦斧という小回りが利かない武器をもってあの淵の番と戦う。すんなり勝てる方がおかしいというものだ。


「けど、ヨキなら大丈夫でしょ。今日にでも淵の番を倒すはず」


 技量を磨こうとしたことで昨日は全く上手くいかずしょんぼりとしていたが、その後鈴鹿のアドバイスを聞いて元気になっていたので大丈夫だろう。そう鈴鹿は確信していた。


 だからこそ、鈴鹿はヨキと共に淵の番のもとを訪れた後、ヨキ一人を残してこうしてダンジョンを散策しているのだ。わざわざ一緒に淵の番のもとまで行った理由は、鈴鹿と一緒に淵の番とエンカウントすると、淵の番がとてつもなく強化されるからだ。その状態でも、ヨキなら今日倒すだろう。


「さて、俺も配信始めるか」


 ヨキが頑張っている。灰ヶ峰は魔法を磨き進んでいる。仲間が頑張っているのだ。鈴鹿も先に進む必要がある。


「昨日振りですね。今日も狂鬼チャンネル始めていきます」


【エリアボス3連戦目!!】


【おはようございます狂鬼さん!!】


【いつも配信ありがとうございます!】


 朝からテンションの高いコメントが寄せられてくる。刃写理山水、友愛なる菌糸に引き続き、今日もエリアボスと戦う予定だ。3層5区の最後のエリアボスであり、エリアボス連戦ということもあってか視聴者も盛り上がっているようだ。


【今日はヨキちゃんたちいないの?】


【ほんとだ。いつになったら三人で戦う姿が見られるんだ……】


【今も二人はエリアボスと戦ってるんですか?】


「うんそうだね。ヨキは淵の番と戦ってて、灰ヶ峰は刃写理と戦ってるよ」


 三人で戦う日は来るのだろうか。三人での戦闘は何時になるかわからないが、ヨキと灰ヶ峰のエリアボス戦は4層から配信していこうかと思っている。もちろん、二人に相談してみてだが。


 4層からは別々で行動するのではなく、3人で集まってエリアボスを巡っていこうと考えていた。3層まではそれぞれ戦うべきエリアボスがバラバラだったため別れていたが、4層は3人とも初めて踏み入れるエリアのため、エリアボスも一緒に回っていきたい。


【ちょっとまって狂鬼さん。二人は一緒にエリアボスに挑んでるんじゃないの?】


「え、違うよ。3人とも別々のエリアボスに挑んでるに決まってるじゃん」


 鈴鹿の発言にコメントがドン引きしている。以前そんなことを告げていたと思うのだが、どうやら二人は一緒に行動していると勘違いを招いてしまっていたらしい。日本語は難しい。


【エリアボスって一人で挑むのが普通なの?】


【こうやって探索者が誤解されていくんだな……】


【ヨキちゃんも灰ヶ峰も強かったけど、5区のエリアボスに一人で挑むって狂鬼さんクラスのアタオカということなのか……?】


【それ本当なの? 話盛ってない?】


「本当だよ。まぁ信じるかどうかは任せるけどね。で、今日戦うのが、昨日灰ヶ峰が一人で倒したエリアボスだよ」


 そう言って、鈴鹿がカメラを向けた先には洞窟があった。ここは3層5区の最奥。反りたった崖がそびえたつ行き止まりに、亀裂のように空いている洞窟。その中はうっすらと光っており、まるでボスがいますよと言わんばかりだ。


 灰ヶ峰を蘇生させるために、ここには何度も訪れていた。そのためエリアボスの見た目は知っているが、灰ヶ峰が戦っている様子は観ていないためエリアボスがどんな戦い方をするのかはまだ知らない。


 慣れた様子で奥へと入っていく鈴鹿だが、コメントは徐々に静かになってゆく。壁から生えるように伸びている水晶が、そこかしこで青白く発光する荘厳な景色に見惚れてではない。たしかに美しい光景であり、周囲の様子を感嘆するコメントも見られる。


 だが、そうじゃない。ここはダンジョン。あからさまに荘厳な場所など、それに相応しいモンスターがいるという何よりの証拠。そして、それは予測などではなく、鈴鹿の前に災厄として現れた。


流転大聖龍《るてんだいせいりゅう》:レベル192


 カロロロロと喉を鳴らし巨大な龍が鈴鹿を睥睨《へいげい》する。まるで蛇のように胴体がとても長く、何本もの手足が身体を支えていた。煌めくプラチナの鱗、背骨を守る様に長く硬質な毛が生え、長い髭が重力に逆らうように宙を彷徨っている。鈴鹿を見下ろす顔は無機質であり、生物らしさを感じられない不気味なもの。神聖でいて不吉。そんな大きな龍が鎮座していた。


 大聖龍がいる空間は体育館くらいの大きさの広間だが、大聖龍自体が大きいために手狭に感じてしまう。持ち上げられた頭の高さは10メートルはある。まるで3階建ての一軒家くらいのサイズ感だ。それだけの質量をもつ大聖龍が暴れるだけで、人間など羽虫の如く潰されてしまいそうである。


「さて、やりますか」


 捷疾羅刹《しょうしつらせつ》の業《ごう》を握り締め、鈴鹿が大聖龍へと近づく。羅刹の杖には、昨日に引き続き千鈞棒《せんきんぼう》の能力がコピーされたままだ。


「ギャォォオオオオオオンンン!!!」


 鈴鹿を明確な敵と捉えたのか、大聖龍が鼓膜を破りかねない声量で鈴鹿を威嚇する。次の瞬間、鈴鹿の頭上を影が覆った。振り上げられた尾っぽが、叩きつけるように鈴鹿へと迫っている。


 重さは破壊力に直結する。巨大な尾っぽの振り下ろしは、恐ろしい力が込められていることだろう。だが、あいにくと鈴鹿も重さには自信があった。羅刹の杖が輝くほどに魔力を込め、鈴鹿ですら重いと感じるほどに重量が増した羅刹の杖。そんな凄まじい重さになった羅刹の杖を回転させて勢いを増し、振り下ろされた尾っぽへと叩きつけた。


「ギャアァアァァアアア!!!」


 大聖龍が悲鳴をあげ、尾っぽが鈴鹿によって跳ね返された。回転させた超重量の羅刹の杖のエネルギーを余すことなく大聖龍へと叩きつけた結果、大聖龍側が押し負ける形となる。鱗が砕け散り、青白く発光する水晶の光をキラキラと反射しながら舞う様子は、とても幻想的であった。


 許さんとばかりに、再度尻尾が横薙ぎに振るわれる。鈴鹿は避けることもせず、当然のように羅刹の杖で迎え撃った。再度凄まじい衝撃が空気を揺らし、洞窟内で反響する。大聖龍の一撃は羅刹の杖に押し負けることは無かったが、鈴鹿が尾っぽを上へ逸らす様に打ち上げたため、尾っぽの一撃で鈴鹿を吹き飛ばすことは叶わなかった。


 巨体に似合わない俊敏な動きで鈴鹿へと迫る大聖龍。側面から生える何本もの手から水の刃が出現し、鈴鹿を細切れにせんと迫りくる。だが、羅刹の杖が触れた途端、水の刃はあっけなく散らされてしまう。残ったのは水の刃が解かれ剥き出しとなった腕。それを羅刹の杖で殴りつければ、それだけで腕はひしゃげ無視できないダメージを大聖龍へ与えていく。


 近接戦はまずいと思ったのか、大聖龍は壁を這うように縦横無尽に駆け回りながら水の弾丸を鈴鹿へ撃ちだした。しかし、魔力を散らしたことで軽くなった羅刹の杖を高速で回転させた鈴鹿は、動き回る大聖龍へと水の弾丸を正確に撃ち返してゆく。水魔法に耐性があるのか大きなダメージとはなっていないが、大聖龍へ水の弾丸が意味のない攻撃だとわからせるには十分だったようだ。


 水の弾丸を撃ち止めた大聖龍だが、鈴鹿は最後に放たれた水の弾丸を羅刹の杖で弾くことはせず、右の手のひらを差し出し受け止めた。毒手も発動していない手で受け止めたため、手のひらが貫かれるか、または弾かれてボロボロになるのを予想した視聴者たち。しかし、視聴者の予想は外れ、水の弾丸だったものは鈴鹿の手の周りをくるくるとゆっくり回転していた。


「ああ、なるほどね。水魔法のスキルレベルは低いけど、魔力操作のスキルが高ければこれくらいはできるんだ」


 鈴鹿がやったことは単純なこと。大聖龍が撃ちだした水の弾丸の制御を乗っ取り、自分の支配下に置いたのだ。完全に水の弾丸は鈴鹿に制御されており、戯《たわむ》れるように伸ばした指先を中心に回転させている。


 相手が発動した魔法の所有権を奪うなど本来ならばありえないことだが、魔力操作のレベルが10の鈴鹿ができると確信すればそれは実現される。それはある意味鈴鹿が目指している一つのゴール。魔力を使うことでスキルの再現をするように、相手の魔力を操作することで自分の魔法として奪いとる離れ業《わざ》。意思持たぬ魔法如きを奪い取るなど、鈴鹿にとっては『できるかも』という思い付きだけで奪い取れてしまう。


 鈴鹿に奪われた魔法を見て、大聖龍が激怒する。自身が放った魔法の制御を奪われる。それは自分自身が鈴鹿に大きく劣ることを意味しているからだ。だが、それもそうだろう。大聖龍は3層5区のエリアボスである。レベルは192。2回目の存在進化を経ていない探索者が戦うべき相手なのだ。存在進化先が神であり、神を冠するスキルを所有し、スキルの次の段階に手をかけている鈴鹿にとって、相手になるはずがなかった。


「このエリアボスは魔法剣士って感じだな。近接もまぁまぁ魔法もそこそこ。だからかな。全部が中途半端な気がする。特化した方がまだ強いんじゃないか?」


 鈴鹿が水の弾を操作する。圧縮して圧縮して圧縮して、限界まで込めた圧力を解放するイメージで水の弾丸を撃ち出した。高密度に圧縮された水の弾丸は、大聖龍の放ったものよりも何倍も威力が高められている。お返しとばかりに大聖龍へと放たれた水の弾丸は、まるでレーザーのように残光をきらめかせ、激怒しながら吼える大聖龍の身を簡単に穿《うが》った。


「ギャァアアォォォオオンン!!」


 甲高い悲鳴と共に張り付いていた壁から落下する大聖龍。


「水魔法のスキルは低い。けど、魔力をちゃんと操作できれば高威力の魔法を再現することもできるのか。未だに魔法の再現はできないけど、魔力を支配下に置ければもっとできることは増えるのかな」


 スキルは魔力で再現できる。それならば、魔法だって再現できるはず。水魔法を再現するのはもちろん、火魔法を発現していなくても火魔法が使えるはずだ。そうすれば火魔法のスキルが発現し、スキルレベルが今の実力を教えてくれる。魔力を上手く扱うことができれば、そんな思いついたことを実現できるような滅茶苦茶なことだってできるはずだ。


 そして、魔法にしてもスキルにしても、魔力を使うのは相手にも言えること。相手が行使するスキルも、魔法も、魔力がもとになっているのだ。ならば、その魔力を支配下に置くことができれば、相手は何もできずただステータスだけが高い探索者へとなり下がるのではないだろうか。


 その答えが、この羅刹の杖にあるような気がする。魔法を反射させる。それは指向性をただ変えているだけなのかもしれないが、それができるだけで相手の魔法を乗っ取ったとも言えるのではないだろうか。


 答えはまだわからない。鈴鹿はまだまだ魔力について知らないことだらけ。今できているのは、ただ魔力操作のスキルレベルが高いからこその賜物《たまもの》だ。魔力操作のスキルすら封じ、それでも再現できるのならば、鈴鹿はまた成長することができるだろう。


「残念ながら、3層5区のエリアボスじゃ今の俺の適正じゃないみたいだしな。魔力操作の練習に付き合ってもらうとするか」


 大聖龍が威嚇しながら、自身の戦いやすいフィールドへと洞窟を変えてゆく。大量の水を出現させ、地面一体をくるぶしほどまで水で浸した。


「お? いつの間にそんな闇落ちしちゃったんだよ。お色直しか?」


 鈴鹿の言う通り、プラチナに輝いていた鱗は濁り汚れてゆく。大聖龍という名にふさわしかった姿は、気づけば堕ちたる邪龍へと移ろい変わっていた。


 ここからは第二ステージだ。その開始を告げるように咆哮をあげるや、水面から幾本もの水の槍が出現し鈴鹿を刺殺《さしころ》さんと伸ばされる。八本、鈴鹿の支配下に置けなかった水の槍が鈴鹿を貫いた。


 口から血を流しながらも、自己再生が治癒を進めてゆく。今は聖神の信条を封印しているため、即座に回復とはいかない。しかし、自己再生をアシストするように体内に流れる魔力を使えば、みるみる傷が塞がっていった。


「はっはっはっ。お前の宝珠からも水魔法だったらさすがにキレちまうからな。いいじゃねぇか! 水魔法の特訓にも付き合えやミミズ野郎ッ!!!」


 振り回される尾っぽを羅刹の杖で弾けば、衝撃で水飛沫が舞う。舞った水飛沫が大聖龍に操られ、水の弾丸となって襲い掛かった。しかし、水の弾丸は魔力操作によって鈴鹿に支配権を奪われる。それでも奪えるのは精々1割程度。支配できなかった魔法は鈴鹿の身を貫くが、鈴鹿もまた奪った1割の水魔法を行使して大聖龍へ攻撃する。


 鈴鹿の周りの水が真っ赤に濁った頃には、大聖龍が行使する水魔法の6割強を鈴鹿が支配できるようになっていた。そんな鈴鹿に対し大聖龍は魔法では不利だと判断したのか、鈴鹿を喰らわんと大口を開けて突っ込んでくる。そんな大聖龍に対し鈴鹿は羅刹の杖で殴りつけたい衝動を何とか抑えて避けると、目の前をたなびく長い髭を鷲掴み大聖龍を静止させようとした。


 存在進化を解放した鈴鹿だが、体術を始め武神に身体操作のスキルを封印している上に鬼神を纏わぬ鈴鹿では、巨大な大聖龍を止めることは叶わない。髭に張り付く鈴鹿をそのまま壁にこすりつけてすり下ろしてやると大聖龍が動くが、鈴鹿は身体強化を高めることでダメージを最小限に抑えた。


 いいように痛めつけられる中、鈴鹿は魔力を練り続ける。


 大聖龍が鈴鹿を振り落とそうと暴れた結果、大量の水しぶきが宙を舞っている。頃合いだな。そう呟いた鈴鹿が周囲一帯の水を支配し、水の弾丸が大聖龍へと襲い掛かった。大量の水の弾丸が鱗を剥がし肉を抉り内部を破壊する。


 結果、大聖龍は断末魔の咆哮を上げながら、その姿を黒い煙へと変えた。煙が晴れた大聖龍の間には、一つの宝箱と鈴鹿の手の中に残った龍の髭だけが残っていた。



Tips:流転大聖龍《るてんだいせいりゅう》の攻略方法

 穴蔵の主であり、3層5区で最も強いエリアボスである。水魔法による手数の多さもさることながら、巨体を振り回す攻撃はシンプルに強く遠近どちらにも優れている。


 攻略方法は特になく、ただ正面から打ち破るしか道はない。大聖龍の最も厄介な点は、生息する狭い洞窟である。狭い洞窟内は広く展開することも難しく、大聖龍が暴れるだけで回避困難な一撃が何度も襲うことになる。さらに、ダメージを与えることで堕ちたる龍になった大聖龍は、洞窟を水で満たすことで全方位からの水魔法を行使するようになるため注意が必要。


 大聖龍が暴れて発生した水飛沫一つ一つが、次の瞬間には水の礫《つぶて》となって探索者へと襲いかかるのだ。一つの攻撃が次の攻撃に繋がり、絶えず流れ続ける水の如き攻撃に削られることとなる。


 大聖龍の強力な物理攻撃を防ぎ、降り注ぐ魔法をはね返し、硬質な鱗を打ち砕くことで倒すことのできるエリアボス。それが流転大聖龍である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここんところ強奪が仕事しまくっててニッコリ。 次は4層か〜一体どんな所でどんなモンスターやボスが出て来るんだろう。楽しみ。
次は国盗り合戦で他国の超越者とでも戦うのかね?
四層に入ってから試練かな?2回目の存在進化に相応しいような、狂天童子以上の試練ってなんだろう?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。