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第90話 サミアルの街


「サミアルの街が見えてきたぜ」


「おおっ。レジメルの街と同じくらい大きいね」


 昼休憩をとってからまた飛行魔法で飛ぶこと数時間。俺たちの目の前には大きな門が見えてきた。日が暮れる前に無事到着したようだ。


「一度街の手前に降りる」


「面倒くせえからそのまま入っちまおうぜ」


「ちゃんと手続きをしないと駄目。それに目立ちすぎる」


「ちぇっ、面倒くせえな」


「………………」


 うん、さすがにいきなり街の門を通り越して街に入ったら目立ちすぎるし、下手をしたら侵入者として攻撃されてもおかしくない。


 ヴィオラなら難なく防げるかもしれないが、今回は俺やハリーもいるので自重してほしいものだ……。




 門番のチェックを無事に受けてサミアルの街の中へと入る。ヴィオラは面倒だと言っていたが、門番のチェックをする際は空いていた貴族や有権者用の門から入ったのでそれほど時間はかからなかった。


 これもSランク冒険者の特権とやらに含まれるのだろう。……まあ、ヴィオラだとわかりしだい、例の冒険者ギルドからの依頼を伝えられたが。どうやらこの辺りの街すべてに通達がされているらしい。まるで指名手配犯だな……。


「おお~レジメルの街とも違った雰囲気だな!」


「キュウ!」


 サミアルの街の中も建物の様式などはレジメルの街と似通っていたが、街の雰囲気は結構違う。こちらの街はより雑多な街並みといった雰囲気だろうか。


 みんなが俺の世界の街を回るのが楽しいように、俺も異世界の街を回るのはかなり楽しい。レトロな雰囲気の建物が立ち並び、なによりエルフだけでなく様々な種族の人が街を歩いている。


「さて、さっさと宿を見つけて飯にしようぜ」


「早く水浴びもしたい」


 まずは宿を確保する。改めて考えると、旅行をする前に宿を予約できるのはとてもありがたいことだ。


 2人と一緒に街の中を歩いていく。




「いってえなあ。おい、今ので骨が折れちまったよ!」


「あ~あ、こいつは慰謝料をもらわねえとな」


「………………」


 宿を探して道を歩いてすぐ、一瞬でチンピラの男3人に絡まれた。向こうの男のひとりがわざとヴィオラに肩をぶつけて大袈裟に倒れてきたのだが、あまりにもテンプレな当たり屋すぎるだろ……。異世界であろうとも、こういった輩はどこにでもいるもんなんだな。


 まあ確かに俺の肩にはハリーが乗っていて注目を集めていたし、なによりヴィオラは傍から見たらすごい美人だ。できるだけ目立たないよう、2人とも俺の世界で購入した服は着ていないが、ヴィオラの服装は露出が多くて目立っているから絡まれやすいのだろう。外套でも羽織ってもらえればよかったか。


 それにしても、あまりにも早々に絡まれすぎだが……。


「ああん? てめえらが勝手にぶつかってきたんだろ。むしろそっちが慰謝料をよこせや!」


 ……うん、こっちも十分にチンピラだったわ。ヴィオラの性格上、素直に謝ったり、お金を出したりすることはないと思っていたよ。


「威勢のいい姉ちゃんだ。気に入ったぜ、金はいいからちょっと俺たちに付き合えよ」


「なあに、少し酒に付き合ってもらえればそれでいいさ」


「ちったあ腕に覚えがあんのかもしれねえが、そっちの男と娘も一緒に痛い目を見てえのか?」


 どうやらリリスはヴィオラの娘に見られているみたいだ。確かに肌の色は違えど2人ともエルフだし、背丈で見るとそう見えても仕方がないのか。


 そして俺はヴィオラの夫か。この3人と違って防具を身に着けていないからなめられているのだろう。一応服の下には防刃チョッキを着て、クマ撃退スプレーと急いで用意した護身用グッズは武器と思われてはいないようだ。


「ちっ、面倒くせえ。こっちは疲れてんだっての」


「ふげっ!?」


「ふぼらばっ!」


「ぐあばっ!」


「………………」


 ヴィオラが手をかざしただけで、チンピラ3人は吹き飛ばされて壁に激突して動かなくなる。


 そりゃまあSランク冒険者に喧嘩を売ったらこうなるのは俺でもわかっていたが、それでもあっけなさすぎた。


「さて、早く宿を探しに行こうぜ」


「師匠、ちゃんと衛兵に報告する」


「ちっ、やっぱり面倒くせえぜ……」


 すでに注目を集めているし、リリスの言う通りちゃんとこの街の衛兵さんに報告はしておいた方がいいだろう。あとでなにか問題になっても嫌だからな。


 人相の悪い3人に囲まれたというのに、自分でも思ったより落ち着いている。最初にヴィオラと向かい合った時の重圧はあの3人の比ではなかったからなあ。


 俺もいろいろと準備をしてきたし、とりあえず2人と一緒にいれば安全そうだ。むしろヴィオラの行動に巻き込まれないように注意することが大事らしい。リリスもあの3人に警戒するというよりも、ヴィオラから俺とハリーをかばうように前に出てくれていた。リリスがいてくれて本当に安心だ。


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