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第78話 この世界の服


「大変お待たせしました。こちらは本物の金でしたので、買い取り価格は1グラム15713円となります。10グラムなので157130円での査定額となりますが、いかがいたしましょう?」


「ありがとうございます、一度検討してみます」


「承知しました。またのお越しをお待ちしております」


 質屋の女性店員さんから査定額の書いてある用紙を受け取る。


 綺麗な図柄のあった金貨だけれど、古い未知の金貨だと目立ってしまうと思い、リリスに金貨を2枚ほど溶かしてもらって小さな長方形の金の板にしてもらった。歴史上見たことがない金貨とか騒がれてしまっては困るから念のためである。そして向こうの世界で使われている金貨はこちらの世界の金と同じ物のようでほっとした。


 最近は不景気の影響で金の価格が上がっていると聞いていたけれど、予想通りこれくらいの量なら騒がれることはなさそうである。悪いことはしていないのだが目立ちたくはないので、もしも金貨を換金するとしたら、少しずつ別の買取店へ持っていった方がよさそうだ。


 ……さっき2人からもらった金貨は50枚以上あったから、2枚で15万としてもこれだけで400万円近くあるのか。世界間で貿易をしたら一瞬で大金を稼げそうだな。もちろんお金には困っていないから、そんな危ない橋は渡らないが。




「ただいま~」


「キュキュウ~」


 買い物などをすませて家へ戻ってきた。


「おう、待っていたぜ!」


「おかえり!」


 車のエンジン音で気付いたのか、2人が家の外に出て出迎えてくれる。


 ……俺の家がちゃんとあり、2人がいてくれることにホッとしてしまった。リリスはともかく、ヴィオラを置いて家を出るのは結構不安だったからな。


「これで準備はできたんだろ。早くケンタの世界の街へ行こうぜ!」


「了解だよ。2人の服はこっちだと目立ちすぎるから、買ってきたこっちの世界の服に着替えてね」


 まずはこちらの世界の服に着替えてもらう。リリスは紺色の長いローブを着ていて、ヴィオラは露出の高いショートパンツとビキニのような服を着ている。いくら何でも目立ち過ぎだ。


「ああ、別の世界の服か。どんな服か楽しみだな」


「ケンタの世界の服、少し興味がある」


 俺も初めて向こうの世界の街へ行った時はどんな服があるのか興味深々だった。文明的には俺の世界の方が進んでいるかもしれないけれど、現代日本と異なる文化の服を見るのは楽しかったな。


 2人からしたら少し未来の外国の服というイメージに近いのかもしれない。




「デザインは悪くねえが、ちょっと胸の辺りがきちいな」


「……サイズについては大体の目安でしかわからなかったから、あとで服屋に行って自分で選んでね」


 別の部屋で着替え終わった2人が出てきた。


 ヴィオラの服は大きめのパーカーにしたはずなのだが、それでも胸の部分がパツパツになってしまっている。いや、さすがに胸のサイズなんて男の俺にはわからんよ……。


 下は外出できるくらいのスウェットで、どちらも男女兼用の服なのでそれほど派手ではないはずなのだが、モデルのような体形のヴィオラが着るとそれだけでも十分に目立ってしまう。


「ケンタの世界の服はとっても可愛らしい」


「リリスによく似合っていると思うよ」


「キュ」


「ありがとう」


 リリスの方も同じパーカーとスウェットなのだが、とてもよく似合っている。


 でもこれはキッズサイズなんだよなあ……。似合ってはいるが、なんとなく素直に褒めにくい。


「この耳当てみたいなのは付けなくちゃ駄目なのかよ? 暑くて仕方がないぜ」


「こっちの世界には2人みたいなエルフという耳の長い種族はいないから、これだけは我慢してね」


 2人にはエルフ特有の長い耳を隠すため、ニット帽に加えてイヤーウォーマーというモフモフした耳当てを二重に着けてもらっている。


 最悪の場合はコスプレということで押し通せるとは思うが、念には念を入れておかなければ。これで多少目立ってはしまうが、少なくとも外国人として見られるレベルだろう。




「すっげ~! いったいどういう仕組みで動いているんだ?」


「車はガソリンという燃える液体を燃焼させ、それによりピストンを上下させて動力としているらしい」


 2人を後部座席に乗せて車を動かす。初めて車に乗った2人は目をキラキラさせながら、車の内部に興味をもったり、外の景色を見て楽しんでいる。


 リリスはタブレットでこちらの世界の物をいろいろと学んでいたおかげで車の構造にも詳しい。車の動く仕組みなんて調べないとわからないし、俺よりも詳しいかもしれない。


「おもしれえな。ケンタ、あとでこの車ってやつを分解したら駄目か?」


「元に戻せなくなるから絶対に止めてくれ! 詳しい構造だったら、タブレットやパソコンで調べられるからあとで見せるよ」


 冗談ではなく本気で言ってそうだ。確かに物の構造を調べるには分解してそれぞれの部品の役割を見るのが一番かもしれないけれど、絶対に元に戻せなくなる。ここは大人しく動画で我慢してもらおう。


「それよりも2人にはこっちの世界での過ごし方についてちゃんと学んでもらうよ」


 昨日の夜も少し説明したが、車の中でも改めて説明しておかないといけない。


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