第6話 買ってきたもの
「ただいま~」
「キュウ」
車で街まで降りていろいろと購入してから帰宅すると、あのハリネズミはうちの玄関前で出迎えてくれた。
ちゃんと俺の言った通り、家で大人しく待っていてくれたようだ。
「キュウ……」
「ごめん、こっちの世界だと、君みたいな子が街中を歩いていると問題があるんだよ。ちゃんとそれについての対策案も考えてきたから、今度は一緒に行こうな、ハリー」
「キュキュウ!」
俺の言葉に嬉しそうな表情を浮かべるハリー。
さすがに街中を普通にハリネズミが歩いていたら、ちょっと面倒なことになりそうだ。それに俺も思いっきり目立ってしまいそうだからな。
ハリーとはこの子の名前だ。おいしいご飯をあげたおかげか、昨日以上に俺へ懐いてくれたので、名前を付けてあげた。本人に聞いたところ男の子だったらしいから、いくつか候補を出してあげたらこの名前が気に入ったらしい。
ハリ夫とか、ハリ助とかちょっと安易すぎたかな。俺にあまりセンスはないのである。
「ちゃんと待っていてくれたみたいだし、いろいろと買ってきたぞ。それじゃあ昼食にしよう」
「キュウキュウ♪」
「こっちの方がいいのか」
「キュウ!」
ペットショップに行ってみたらハリネズミ用のエサが売っていたので、それをこの子にあげてみたのだが、むしろそれよりも俺が昼食に購入してきたハンバーガーの方が気に入ったらしい。
俺と同じ朝ご飯を食べてもお腹を壊していないようだし、普通に俺と同じ物を食べられると思った方がいいのかもな。
「キュウ~♪」
「うまいか。気に入ってくれたのならよかったよ」
もしかするとハリーも食べるかなと思って、普通のハンバーガーではなくちょっとお高めのハンバーガーを選んできた甲斐があったというものだ。
いろいろと異世界の情報を教えてくれたご褒美だ。本当にお金に余裕がある生活って最高だな。
そして今回は少し高価な物も購入してきたぞ。
「よし、異常はないな……」
昼ご飯を食べてからハリーと一緒に鏡を通って異世界へと移動する。
やはりこのハリーも鏡を行き来できるようだ。この子も小屋は少しボロくなっていたからどこかから入ったのだろうけれど、よく納屋の扉をあけられたものだよ。
昨日あんなことがあったので、周囲を警戒しながら外に出た。
「キュウ?」
ハリーは俺が組み立てているこいつに興味があるようだ。
「ああ、これか。こいつはドローンだ!」
そう、現代科学の粋を集めて作られた遠隔操作、または自動制御によって飛行する無人航空機である。
危険な生物のいる中で出歩くのは怖い。でもこの世界のことをもっと詳しく調べたいということもあって、こいつの出番だ。
俺も調べてみて驚いたのだが、最近のドローンはだいぶ安いのにカメラもついていてかなり高性能らしい。このドローンは家電量販店で購入した5万円くらいのものだが、安いものだと1万円くらいで購入できる。
業務用のものはさらに高性能なのだが、この辺りの店では売っていなかった。もしもこいつが使えそうなら、ネットでもっと高性能なドローンを購入してもいいかもしれない。
「キュキュ!?」
「すごいだろ。ほら、こっちのモニターでこいつの視界も共有できるんだぞ」
空を舞うドローンにハリーが驚く。さすがにこちらの世界にドローンは存在しないようだ。
こいつさえあれば、小屋にいながらこの付近を見て回ることも可能である。
「おお、これは綺麗だな!」
「キュウ!」
専用のモニターに映し出された映像をハリーと一緒に見ていると、そこには美しい湖が映っていた。最近のドローンは映像がとっても綺麗なんだな。
家電量販店に置いてあるドローンの中では結構いいタイプなだけあって、操作性もかなり簡単で使いやすい。さすがに異世界にはwifiは通じず衛星なんかがなくてGPS機能は使用できないので、無線の電波が届く範囲は数キロメートルくらいとなり、自動帰還機能や飛行データ収集機能などは使用できない。
とはいえそれを除けば異世界でもドローンは動かせるようだ。バッテリーは30分くらい持ち、予備のバッテリーも2本ほど購入しておいたので他の2本を家で充電をしつつ、長時間稼働させることが可能である。
「こうしてみると、自然が溢れていて本当に綺麗な場所だ。とりあえず、まずは練習を兼ねてこの小屋の周囲を確認してみよう」
ドローンに搭載されたカメラの映像を見ながらドローンを操作して練習する。いくら操作が簡単とはいえ、多少は練習をしないとうまく飛ばせなそうだ。
「キュキュウ!」
「あんまり丈夫じゃないから壊しちゃ駄目だぞ」
ドローンを小屋の周りで飛ばしていると、ハリーが飛んでいるドローンを追いかけまわる。
なんだかとっても微笑ましい。こうしているだけでも楽しいものだな。