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第50話 朝の市場


「そういえば冒険者ギルドで被害報告って言ってなかった?」


「師匠は加減というものを知らないから、しょっちゅういろんな物を壊す。その請求は冒険者ギルドに回されている」


「へ、へえ~そうなんだ……」


「キュウ?」


 なんだろう、破壊神かなにかかな……?


「やっていることはめちゃくちゃかもしれないけれど、一応悪人や人を襲う魔物を倒すため。その際に街や森の一部を更地にしたりしてしまうのはやりすぎだけど、ちゃんと修理費なんかは払っている」


 そういうことか。なかなかワイルドな人らしいが、悪い人じゃないみたいだ。


「エルフという種族は少し珍しい種族で、悪人に私たちの里が狙われたことがあった。私はその時師匠に助けてもらった縁で弟子入りした」


「そっか。良い人なんだね」


「………………うん」


「………………」


 リリスが頷くまでに少しの間があったのは不安である……。


 話を聞く限り悪人相手でなければ大丈夫そうだけれど、本当にどんな人なんだろうな?


「でもいろんな場所を旅しているみたいだし、連絡を取る方法はあるの?」


「師匠から本当の緊急時に連絡する用の魔道具を預かっている。ずっと使うか迷っていたけれど、研究も詰まったところだし使ってみる」


 緊急連絡用の魔道具があるらしいが、気軽に使うことができないところをみると貴重な魔道具なのかもしれない。


「それでも師匠に届くのかは五分五分。連絡用の魔道具が届かないような場所へしょっちゅういるから」


「な、なるほど」


 冒険者ギルドマスターに渡していた魔道具は街から湖にある小屋まで届くらしいが、遠い場所や過酷な場所にいたら厳しいのかもな。


 そのあとは宿でリリスの師匠の話を聞いた。結構とんでもないエピソードばかりだったが、悪い人ではない……はずだ。無事に合流してリリスの研究が進むといいんだけれどなあ。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「キュウ~」


「おはよう、ハリー」


 見知らぬ天井だなと思ったけれど、昨日は街の宿に泊まったんだっけ。


「……おはよう、ケンタ、ハリー」


「おはよう、リリス」


「キュキュウ!」


 リリスは今起きたみたいで、欠伸をしながら目を擦っている。その可愛らしい仕草に少しだけドキッとしてしまう。


 ……いや、俺がロリコンというわけではなく、寝起きで隣に女の子がいたら誰でも少しくらいは動揺してしまうはずだ。というか、リリスの場合は年齢が二十歳を超えているらしいし、ロリコンにはならないのか?


 う~む、寝起きで頭が全然働いていないからよくわからないことを考えてしまうな。


「おっと、今日は朝の市場を回るんだった。早く朝食を食べて出発しないと」


 昨日はこの街のお店や屋台を回ったけれど、まだ見ていない店も多いし、なにより午前中でだけしか開かれない市場があるらしい。この世界では朝早くから行動し、夜寝るのも早いからな。俺たちもそれにならって朝から動くとしよう。


 宿の朝食を食べてから出発をする。宿の朝食はパンと燻製肉の少ない量だった。


 燻製肉は結構おいしかったのだが、やはりこの硬いパンは昨日みたいにシチューがないと厳しいな。こっちの世界の白くて柔らかいパンを食べられるだけでだいぶ恵まれているようだ。




「おお~これはすごい!」


「キュキュ」


 朝の市場が開催されている広場へとやってきた。ここは昨日回ってきた屋台街や商店が並ぶ通りとは異なり、俺の世界のフリーマーケットのように決められた区画の範囲内に商品を並べて販売している。


「本当にいろんなものを売っているね。それに値段もバラバラだ」


「大きな商店も店を出しているけれど、大抵は個人の店や小さな店が多い」


「なるほど」


 昨日の通りは多少なりとも似通った種類の店が並んでいたけれど、この市場は食材、素材、服、雑貨、金物など、本当に不規則に並んでいる。魔物の食材を販売している店のすぐ隣に古着を売っている店が並んでいるのは少し違和感があるな。


 そして値段も似たような商品なのにまちまちである。昨日いろんなお店を回ってきたから、多少はこの街の物価がわかってきた。こちらの世界の文字はわからないのだが、俺も銅貨、銀貨、金貨、そして数字は多少覚えることができたので、店に並んでいる商品の大体の値段はわかる。


 稀に値札の置いていないお店もあるが、その場合は店の人に聞くそうだ。文字を書けない人もいるのだろう。俺の世界のように学校などの教育環境が整っていない可能性が高いな。


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