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第44話 レジメルの街


「レジメルの街が見えてきた」


「おおっ、あれが異世界の街か!」


「キュキュ」


 朝ご飯を食べ、昨日と同じようにリリスの飛行魔法で移動をすること数時間。ついに異世界の街が見えてきた。


 マウンテンバイクやリリスの飛行魔法があってもこれだけ時間がかかるのだから、普通に歩いていたら何日かかっていたのかわからない。


「さて、問題なく街へ入れるといいんだけれど……」


 一度街から離れたところでリリスに降りてもらい、ハリーをキャリーケースから出して街へ入る準備をする。防刃ベストの他にもいろんな護身道具を身に着けた。


 レジメルの街は高い壁で覆われている。街へ入るためには街の入り口で検査を受けなければならない。大きな荷物なんかはないから大丈夫なはずだが、油断は禁物だ。


「ハリーも街の中では大人しくしておくんだぞ。自分の身が危なくなった時以外は攻撃しないようにな」


「キュ!」


 リリスに聞いたところ、魔物を使い魔として使役したり召喚魔法があったりするらしく、魔物も街へ入ることは可能らしいけれど、なにか騒ぎを起こしたらその所有者が責任を負うことになる。


 ハリーにも気を付けてもらわないとな。




「よし、次の者」


 街へ入るための検査の列に並んで待ち、いよいよ俺たちの番がきた。


 俺たちの前後に並んでいた人たちは本当に様々な服装をしていた。ベリスタ村にいた人たちとは全然違うし、大きな街だからいろんな場所から人が集まってくるのだろう。


 そして服装だけでなく、ケモミミの生えた獣人や背が低く長いひげを生やしたドワーフと思われるいろんな種族がいた。正直に言うと、ベリスタ村へ行った時は異世界というより昔の村へやってきた感覚がしていたけれど、このファンタジーな光景を目にすると、別の世界へやってきたと強く感じられる。


「身分証明書はあるか?」


「はい」


 一番前にいるリリスが小さなカードを衛兵の人へ差し出す。


「まだ幼いのに冒険者なのだな。……なっ、Aランク冒険者!?」


「なっ、なに!」


「………………」


 リリスが渡したカードを見て衛兵の人が驚き、その隣にいるもうひとりの衛兵の人も驚いている。


 事前にリリスから聞いていたとはいえ、にわかには信じられなかったけれど、どうやらリリスは本当に凄腕の冒険者だったらしい。


 冒険者――あの鏡の翻訳の魔法でどう翻訳されているのか分からないが、この世界でいうところのなんでも屋みたいな職業だ。依頼を受けて魔物を狩ったり、護衛をしたり、物を作ったりとその仕事は多岐にわたる。


 リリスの場合は本格的に冒険者の仕事をしているというというわけではなく、魔法の研究で必要な素材やお金を手に入れるために便利だから資格を取得したと言っていたけれど、それで最高峰のランクであるAランクまで上がったというのはやはり相当すごいことのようだ。


 しかもリリスの場合、エルフとはいえ、外見は少女の姿をしているから衛兵の人たちが驚くのも当然だ。


 ちなみにエルフという種族自体も珍しいらしく、列に並んでいる人たちも俺たちの方をみんなちらちら見ていた。まあ、それについては魔物のハリーがいて、少し他の人とは異なる服装をしている俺がいるからかもしれないけれど。


「た、大変失礼しました!」


「気にしていない。連れの分の通行税も払う」


「は、はい! ありがとうございます」


 このレジメルの街へ入るためには通行税が必要となる。一人銀貨一枚で、ハリーの分も含めて銀貨3枚を受け取る衛兵。


「お、恐れ入りますが、お連れ様の方も身分証がないということですので、こちらにて検査をお願いいたします」


「はい」


「キュウ」


 一般人である俺に対してもすごい気の遣い方だ。Aランク冒険者というものはそれだけ一目置かれる存在なのだろう。




「おお~これはすごい!」


「キュキュ!」


 衛兵の簡単な検査を受けて無事に街の中へ入ることができた。


 レジメルの街の中はこれこそまるでファンタジーの世界という光景が広がっていた。こちらの世界では見慣れない加工された石畳がびっしりと敷き詰められ、レンガ造りの2~3階建ての建物が立ち並ぶ。


 広い大通りにはたくさんの屋台が並び、多くの人や馬車が行き交っている。道を歩く人々はいろんな種族がおり、様々な服装を着ていた。ベリスタ村を訪れた時も驚いたが、この異世界の街はそれ以上の驚きと感動が広がっている。


 ここまで来るのは大変だったけれど、その苦労が一瞬で吹き飛ぶほどの光景だ。自然溢れる湖や森の景色もすばらしかったが、それとは異なった美しさがある。


「これは想像以上の景色だ。リリス、本当にありがとう」


「キュウ~♪」


「ケンタとハリーに喜んでもらえてよかった」


 異世界の街がこれほどのものだとは思わなかった。


 これまで生きてきて一度も見たことのない別世界の光景を見て、リリスとその師匠が別の世界へ行ってみたいという気持ちが少しだけ分かった気がする。


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