第39話 飛行魔法
「よし、完成だ! これが我が日本の誇るラーメンだぞ!」
「待ってた!」
「キュウ!」
街へ食材を購入しに行き、ラーメンの食材を購入してきた。最近ではお店のラーメンを持ち帰れる店も増えているけれど、せっかくなので、自分たちで作る生ラーメンを選んだ。
俺もよく店で食べたり、カップラーメンを食べたりすることはよくあったけれど、家で麺を茹でて作るラーメンは久しぶりだったな。
ちなみに当然だが、うちの家には宅配ピザやウーバーなんちゃらなんて届かないからな。料理の配達が可能なだけで恵まれた環境なのである。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます!」
「キュキュ」
みんなで手を合わせて、目の前にあるラーメンをいただく。
俺は箸でリリスは使い慣れているフォーク、ハリーは食べやすいように少量ずつ小さな器にラーメンを移してあげた。
「っ! 昨日のカップラーメンの味と全然違う! こっちのラーメンはスープの味がとても濃厚で麺に弾力がある!」
「キュキュウ~♪」
昨日リリスは醤油味のカップラーメンを食べていたので、今回は豚骨醤油味のラーメンを選んでみた。確かに豚骨醤油味の方が味が濃厚だよな。それにカップラーメンよりも麺は生ラーメンの方がおいしい。
「うん、具材もいい感じだな。ダナマベアのチャーシューも悪くないぞ」
今日は昼まで時間があったので、ラーメンの具材であるチャーシューもちゃんと作ってみた。
ネットのレシピを見て初めてチャーシューを作ってみたのだが、思ったよりもうまくいったようだ。最近のネットで検索できるレシピは料理の素人でもできるくらいわかりやすく説明してくれるから本当に便利だ。
卵もいい半熟具合だな。メンマや海苔は市販のものだが、こういった具材を再現するのはカップラーメンでは難しいだろう。
「唐揚げもおいしかったけれど、このラーメンもすごくおいしい。本当にケンタの世界の料理はどれもすごい!」
「キュキュキュウ!」
「二人とも気に入ってくれたみたいでよかったよ。俺もラーメンは好きだから、たまには作ってみるかな」
他にも豚骨や味噌など様々な味のラーメンがある。ご当地ラーメンなんかもとんでもない種類があるからなあ。
そして市販のラーメンもおいしいのだが、有名店のラーメンなんかはこれのさらに一段上をいく味だ。まあ、いろんなラーメンを少しずつ味わってもらうとしよう。
「うおっ、すごいな! これが空を飛ぶという感覚なのか!」
「キュウキュウ!」
「基本的には私が操作しているから変な感じがするのかもしれない」
ふわふわと宙を浮かぶ感覚。重力を感じずに足も踏ん張れないというおかしな感じがする。俺の意思ではなくリリスが操作しているからだろう。
午後は外でリリスとハリーと一緒に過ごしている。
今度この世界の街へ連れていってもらうということで、リリスに飛行魔法を使ってもらっているわけだ。
「ハリーは大丈夫か?」
「キュ!」
ハリーの方はというと、いつもは俺の右肩にいるのだが、今回は俺の世界で移動するペット用のキャリーケースの中に入っており、それを俺が抱き抱えている。
俺とハリーを一緒に飛行魔法を使って運ぶよりも、ハリーを抱えた俺を飛行魔法で飛ばせてくれた方が魔力とやらの消費が少ないらしい。キャリーケースを落とさないように肩からベルトをかけている。
「もう少し高く上がる」
「……思ったよりも怖いな」
最初は地面から2~3メートルほど上に留まっていたのだが、さらに上昇して5~6メートルまで上がる。確かに2~3メートルだと下にいる魔物からの襲撃を受けてしまうから、もう少し上空を飛んでいるほうが危険は少ない。
だが、5~6メートルほど上がると思ったよりも怖い。ここから落ちたら重症まではいかなくとも、骨折くらいはしてしまいそうである。
「それじゃあ進む」
「おおっ! これは気持ちがいいな!」
「キュキュ!」
リリスも俺の横で一緒に飛行している。
ゆっくりと前に進み、少しずつ速度が上がっていき、ママチャリで進むくらいの速度になった。すると風が頬に当たってきて、とても心地が良い。そして前に進むことによって、先ほどまで不安だった宙に漂っている感覚もなくなり、空を飛んでいるという実感がわくようになった。
ハリーも空を飛ぶという感覚をとても楽しんでいる。
「少しずつスピードを上げていくから、厳しくなったら言って」
「ああ、了解だよ。もう少しなら大丈夫そうだ」
そのあとも湖の周りを飛行魔法で飛び回った。
リリスは車並みのスピードも出せるみたいだったが、そこまでいくと正面からの風がものすごい。フロントガラスにはちゃんと意味のあることがよくわかった。
一応風魔法も同時に使って正面からの風を軽減することはできるらしいけれど、その場合は魔力の消費が激しいらしい。リリスと相談した結果、原付レベルの早さで進むことになった。
これで異世界の街へ行く準備が整ったな。さて、異世界の街はどんなものなのか楽しみだ。