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第33話 グロウラビットの唐揚げ


 ジュ~。


「へ~高温の油に浸して熱するのか。普通の鉄板で焼いた料理とは違うみたいだな」


「これは唐揚げという俺の故郷の料理だ。油が跳ねるから、あまり近付かない方がいいぞ」


 今日の晩ご飯はグロウラビットの唐揚げだ。


 リュックに入れてきた調味料なんかで何を作れるか考えたところ、唐揚げという結論に至った。


「それにしても、すぐに火を点けられるこの魔道具は本当に便利だな」


「コンロというんだ。旅をしていると、すごく重宝するぞ」


 現在はアウトドア用の低めのテーブルの上にカセットコンロを置き、その上で肉を揚げている。リリスから聞いた話によると、この世界には魔道具があるみたいだから、カセットコンロもその魔道具ということにしておいた。魔法にそれほど精通していなければ、魔道具も俺の世界の道具も似たような物だろう。


「さて、こんなものだろう。熱いから気を付けて食べてくれよ」


 できあがったグロウラビットの唐揚げを油から取り出し、肉にタレを漬けている間に用意した野菜の千切りと一緒に皿へ載せる。


 器や調味料の容器なんかはこの世界でもありそうな陶器や木筒なんかを用意してある。大丈夫だとは思うが、俺が別の世界から来たことはバレないようにしておかないとな。


「おおっ、こいつはうめえ! 外側はサクッとした食感で、中は柔らかくていけるぜ!」


「ああ、中からたっぷりの肉汁があふれ出してくるな! それにこの味付けが最高にうまいぞ!」


「キュキュウ~♪」


 どうやらみんな気に入ってくれたようだな。


「うん、うまい。特にももの部位がジューシーでいいな」


 グロウラビットの肉は淡白な味わいだが、唐揚げにしてもなかなかいけるようだ。特に脂の多いモモの部位がおいしい。


 ウサギ肉は初めて食べたけれど、唐揚げにするとこんな味がするんだな。この肉の感じならソテーにしたり、シチューに入れたりしてもうまいかもしれない。


 唐揚げの作り方は俺でもできるくらい簡単で、醤油やにんにくをベースにしたタレで一口大に切った肉をしばらく漬け込み、片栗粉と小麦粉を混ぜた衣を付けて油で揚げるだけだ。


 味付けに使った醤油や揚げ物を食べたことのない2人にはさぞ新鮮な味だっただろう。


「キュウ、キュキュウ!」


「おっ、ハリーも気に入ったみたいだな。そういえば、前に食べた唐揚げも気に入っていたもんな」


「キュウ♪」


 以前にデパートの地下で買った総菜の中にも唐揚げはあったが、とてもおいしそうに食べていたからな。この唐揚げも気に入ってくれたようだ。


「この唐揚げって料理にこの日本酒って酒は本当に合うぜ!」


「ああ、これならいくらでも食べて飲めてしまうな」


「……うん、気に入ってくれてよかったよ」


 もちろん唐揚げには日本酒も良いのだが、個人的にはキンキンに冷えたビールが一番合うんだよなあ……。


 カセットコンロは魔道具として見られることがわかったし、今度はポータブル冷蔵庫とかを買ってみるのもいいかもしれない。確か売っているのを見た気がするぞ。冷たい飲み物が飲めるだけで、一気に酒の種類も広がるからな。


「酒の方は酒精が高いからほどほどにしておけよ。まあ、それほど量があるわけじゃないけどな」


 旅をしているのにあまりたくさんのお酒を持っていると不自然だから、日本酒はそこまでの量を持ってきていなかったのは幸いしたようだな。このままのペースで行くと、俺も飲み過ぎてしまうところだった。


 数少ないブラック企業での飲み会の時は上司と一緒ということで地獄だったが、こうやって気心の知れた2人とハリーと一緒に夜の湖で焚き火を前にして飲む酒は本当にうまい。


 なるほど、キャンプやスローライフが好きという人の気持ちがよく分かったよ。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ふあ~あ」


「キュ!」


「おはよう、ハリー。そうか、昨日はテントで寝たんだっけ」


 目が覚めると、そこは見慣れた家の天井ではなく、テントの中だった。


 昨日はザイクとビーターが来てくれたこともあって、テントの中で寝たんだっけ。結界の外だけれど、ハリーが一緒にいてくれて、2人は隣のテントで寝ていることもあって、ぐっすりと眠れたようだ。


 もちろん枕元にはクマ撃退スプレーや護身用の道具が置いてある。とりあえずゴブリンなんかは現れず無事に朝を迎えられてほっとした。




「ケンタ、ハリー、それじゃあな」


「またいつでも村に来てくれよ」


「ああ、またお邪魔させてもらうよ」


「キュ」


 俺とハリーがテントの外に出ると、2人はすでにテントを畳んで撤収の準備をしているところだった。


 撤収を手伝い、村へ戻る2人を見送った。


「また村にお邪魔させてもらおうな」


「キュウ!」


 前にお邪魔させてもらった時はとても楽しかったし、昨日の夜も楽しかった。またハリーと一緒にお邪魔させてもらうとしよう。


「さて、片付けはこんなものでいいか。それじゃあ小屋へ戻ろう」


「キュ」


 テントの前を綺麗にする。特に食べ残しなんかがあると小動物が集まってくるらしいから、念入りに綺麗にしておいた。


 リリスは研究に集中し過ぎて、また徹夜とかしていないよな?


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