第31話 魔道具の検証
大丈夫だとは思うが、念のためにハリーと一緒に家の外に出ている。
「ええ~と、リリスが言うには魔道具はいろんな種類があって、これは魔道具自体に魔石という電池みたいなものが組み込まれている魔道具だな」
魔道具のエネルギーについては3種類あるらしい。ひとつ目が今俺が持っている30センチメートルくらいの箱形の魔道具で、こいつの中には魔石という物質が入っている。魔石には魔法のエネルギーが入っていて、それを電池のように使い捨てで切り替えて使うみたいだ。
ふたつ目は例の鏡のように周囲から魔力を取り込んで発動させる魔道具である。これは周囲に魔力さえあれば半永久的に動くらしい。ただし、その技術は非常に難しく、リリスやその師匠みたいな腕を持った魔法使いにしか作れないらしい。
予想はしていたが、別の世界へと渡れる鏡を作れるんだから、2人ともかなり高名な魔法使いなのだろう。
そして最後は持ち主の魔力を使って発動させる魔道具だ。ただ、残念ながらこれについては向こうの世界で試してみたけれど、魔力とやらを持っていない俺には使うことができなかった。
魔力は生まれつき一部の者が持っている力で、基本的には誰でも使えるわけではなく、訓練したところで使えるようになるものではないらしい。俺も魔法が使いたかったなあ……。
「ええ~と、ここのスイッチを押すと……おおっ、本当に火が点いた!」
「キュ!」
箱型の魔導具を地面に置いて、リリスに教わった通りスイッチを押すと、何もない場所に火が現れた。どうやら魔石の力を使った魔道具はこちらの世界でも使えるらしい。
これはコンロで火を起こす時に使う魔道具らしい。
「こっちの世界でも魔法の道具を使えるって、よく考えたらとんでもないことだよなあ……。改めて他の人に伝えなくてよかったよ」
「キュウ?」
ハリーがつぶらな瞳でこちらを見てくる。魔法なんてファンタジーな存在が見つかったら、何が何でもあの鏡を回収してくるだろうな。本当に口封じに殺されてしまう可能性もありそうだ。
ハリーみたいにみんなが純真であればいいのに……。
「こっちの魔道具は帰ってリリスに見てもらわないとわからないか。当然持ち主の魔力を使って発動させる魔道具は駄目と。よし、頼まれたことは確認したし、またあっちの世界へ行こう」
「キュ!」
周囲の魔力を取り込む魔道具について、この球体の30センチメートルくらいの魔道具は周囲の魔力を貯めることができる魔道具らしい。ただ、俺には魔力が貯まっているのかさっぱりわからないので、戻ってリリスに見てもらう。
この杖状の魔道具は持ち主の魔力を使って火を出す魔道具らしいのだが、あちらの世界で俺が発動させることはできなかったので、予想通りこっちでも無理だと思っていた。
周囲の魔力を取り込む魔道具の結果次第ではいろいろと分かりそうである。
「……魔力が取り込まれていない。つまり、ケンタの世界には魔力というもの自体が存在しない可能性は高い」
「ふむふむ」
「キュウ?」
小屋でリリスに魔道具のことを報告すると、どうやら魔力は取り込まれていなかったようだ。ということは俺の世界にはそもそも魔力が存在しないらしい。
「私たちの世界でも場所によって魔力の多い少ないはあるから場所によっては存在する可能性もゼロではない」
「なるほど……。一応こっちの世界にもパワースポットみたいな場所はあるから、時間のある時にその場所までこの魔道具を持って行ってみるかな」
「できればお願いする」
「ああ、了解だ」
「キュウ?」
ハリーにはよくわからないみたいだな。俺も魔力についてはよくわからない。
「魔道具を使えるってことはこっちの世界でもいろいろとできそうだな。リリスの収納魔法みたいな魔道具があれば最高だったんだけれどね」
「師匠がいればもしかしたらできるかもしれないけれど、私ひとりだと難しい」
「ああ、ごめん。今すぐほしいわけじゃないから大丈夫だよ」
俺の世界で魔道具が使えるとなって最初に思い浮かんだのはリリスの収納魔法のような魔道具がないかだった。アイテムボックスのようなあの収納魔法は大きな物でも収納することができる。
つまり、あの鏡を通せないような大きな物を収納したうえで、こちらの世界に持ち運べるということだ。なんだかんだで、あの鏡を通れるくらいの物って結構制限があるんだよな。
こちらの世界に車とか持ち込んでみたかったんだけれど、少なくとも今は無理なようだ。
というかリリスの師匠はいつもフラフラしているらしいけれど、今はどこにいるんだろう?
「そういえば向こうのテントに誰か来ていた。たぶんケンタが言っていた村の人たち」
リリスにはベリスタ村のことやザイクたちのことを伝えてある。結界の先に設営しておいたテントの場所にザイクたちが来てくれたようだ。
「ああ、ザイクたちが来ていたのか。先に教えてくれればいいのに」
「……ごめん、魔道具の結果が気になって忘れていた」
「………………」
どうやらリリスは研究に熱中しすぎてしまう研究大好きっ子みたいだな。