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第30話 低反発


「それじゃあまた明日。約束した通り、夜はちゃんと休むんだよ」


「……わかった。ちゃんと寝る」


「キュウ」


 今日も日が暮れるまでリリスとお互いの世界のことを話したり、俺が作った晩ご飯をみんなで食べて過ごした。


 昨日みたいに徹夜をしないようにリリスへ伝え、ハリーと一緒に鏡を通って元の世界へと戻ってきた。


「いきなり別の世界へ繋がったら、興奮する気持ちも分かるけれどな。リリスはとっても研究熱心っぽいし」


「キュキュウ」


 俺も初めてこの世界へ来た時の夜はだいぶドキドキして、なにをしようか考えてあまり眠れなかったからな。


 これを師匠と一緒に作った張本人なら、それもなおさらか。とはいえ、放っておいたら一睡もせず、食事すらとらず研究に集中しそうだからこれくらいは言っておかないといけない。


 リリス本人にもいったが、過労で倒れられると俺には何もできないから困ってしまう。


「リリスに近くの街まで連れていってもらえるように頼んでみたいけれど、どうしようかな? ハリーは街に行ってみたいか?」


「キュ!」


 ハリーに尋ねると、首を縦に振って頷く。どうやらハリーも街へ行ってみたいようだ。


 マウンテンバイクだと時間がかかりそうな距離だが、魔法による移動手段があるらしいので、何日もかかったりはしないようだ。


「俺も異世界の街に興味があるから、今度お願いしてみるかな。まあ、しばらくはのんびりしながら情報を集めてからにしよう」


「キュウ」


 リリスのおかげでこの世界の基本的な常識なんかはわかったが、まだ街へ行くのは尚早だな。そしてお互いまだ出会ったばかりだし、もう少しお互いのことを知ってからにするとしよう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 「さて、それじゃあ行こうか。リリスはちゃんと寝ていたかな?」


「キュウキュウ」


 翌日、再び鏡を通って異世界へとやってきた。


 昨日のこともあって、ゆっくりと鏡を通りつつ、朝食を持ってきた。しかしいつもの本がたくさんある部屋にリリスはいなかった。


「まだ寝ているのかなあ? とりあえず隣の部屋まで行ってみるか」


 ハリーと一緒にゆっくりと隣の部屋の前へ移動してみると、ドアの奥からは小さな寝息が聞こえてきた。


「どうやらちゃんと休んでいるようだな。起こしちゃ悪いから、先に外でご飯を食べよう」


「キュ!」


 ぐっすりと休んでいるようだし、先にご飯としよう。昨日プレゼントしたものは気に入ってくれたのかもしれない。




「……おはよう」


「おはよう、リリス。ぐっすり眠れたみたいだね」


「キュ!」


 おはようといいつつも、今はもうお昼である。


 どうやらぐっすりと眠れたらしい。まあ、ここまで急いで来たらしいし、一昨日も徹夜しているんだからそれも当然か。


 今日はマウンテンバイクに乗って、結界の周囲内をハリーと一緒に走っていた。俺もこっちに来てからは多少運動しているけれど、それまではあんまり運動してこなかったからな。おいしいものも毎日食べているし、多少は運動しないといけない。


「あの寝具はすごく柔らかかった。それに枕もすごく心地よくて、朝起きるつもりがずっと寝てしまった……」


「こっちの世界では睡眠も研究されているからね。それにきっと昨日はそれだけ疲れていたんだよ」


「キュ!」


 リリスには俺の世界で購入してきた低反発のマットレスと枕、そして羽毛布団をプレゼントした。


 この小屋にも一応ベッドはあるのだが、なにせ長年使っていなかったベッドだ。リリスが浄化の魔法という掃除機メーカーもびっくりの物や部屋を綺麗にするという魔法を使ったのだが、それでもそのベッドやシーツで寝るのは少し微妙だったので、昨日の午前中はリリスが収納魔法の中に入れていた寝袋で寝ていた。


 睡眠はとても大事ということで、こちらの世界の寝具を渡した。さすがに大きなベッドだと鏡の中に入らないので、これらをプレゼントさせてもらったわけだ。


「たぶん今日もぐっすり眠れそうだけれど、もっといろいろと研究したい……」


「まあ気持ちはわかるけれど、時間はあるんだし、休める時は休んだ方がいいよ。昨日も言ったけれど、リリスが倒れてしまうと困るからね」


「……わかった。ありがとうケンタ」


「お互い様だし、気にしなくていいよ」


 面と向かってお礼を言われると少しむずかゆいな。それに俺もこの鏡を使わせてもらっているわけだし。




「さて、いろいろと試してみるか」


「キュキュウ~」


 俺とハリーで簡単な昼食をとりつつ、リリスも朝食……というよりは昼食を一緒に食べた。今日のご飯もとても喜んでくれたようだ。


 そして今は鏡を通って元の世界へと戻ってきている。


 というのも、こちらの世界でひとつの実験をするためだ。


「さて、リリスが作ってくれた魔道具とやらはこちらの世界で使うことができるのかな?」


「キュウ?」


 そう、この鏡とやらはリリスとその師匠が作り上げた魔道具だ。当然リリスはそれ以外の魔導具を持っていた。これからその魔道具の実験をおこなう。


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