次のプロローグ
前世での彼女は子ができなかった。悲惨な目に遭った結果だ。
だが、前世の彼女が召されるとき、体にはもう一つの命が宿っていたというのだ。
アリア以外が言うのならばただの妄想だと流す。だが、相手はアリアだ。
そして、その魂の欠片がついてきて、産まれたのがユナだという。
それだけではない。
今のアリアは懐妊しているという。
正確には懐妊とも言えない段階だ。日数を計算すれば、受精はしても着床もしていない状態だった。万が一にもいらないと言えば、そのまま流れても気づかないだろう。
一月ほど経ってから確認すると、おそらく妊娠しているとのことだった。
それまでの間、思考の一部が頭から半分抜け出すような感覚で生きていた。
前世で、子がいたのに気づけなかったことや、そんな負担をかけたせいで寿命を縮めたのではないかという後悔。
アリアが私との子を産むという。いや、私との……子?
今生では、私以外と閨を共にしていないが、アリアならば一人でも子ができそうだとすら思ってしまう。あの時の子だろうというのもわかっているが、現実味がない。
安定期に入ってからも、急にまだ子供はいいやと言い出すのではないかと不安でしかない。いや、今の体が丈夫とはいえ、出産のリスクを考え、アリアにもしものことがあればと思うと常に不安でしかない。
「まだご出産は先のことだというのに」
最近ではターリスだけでなくマルクスにまであきれられている。
「あのアリアだ……あっさりと終わるとは思えない」
産科医は念のため三人に定期的に診てもらっている。
今のところ問題はないが、アリアがこちらの予定通りに動くとは思えない。
絶対に何か問題が起こると思ったが、その後アリアは三人の子をなした。
アリアの家族と同じ男児二人に末姫だった。
アリアの突飛な行動で色々と頭を悩ましたが、平均寿命以上を二人で過ごした。
孫まで抱くことができた。
最後の時はどうだったのか……よく覚えていない。だが、アリアはほほ笑んでいた。
年の割には若々しいが、多少は更けているその顔がとてもうれしい。
それだけ長くアリアとともに過ごせたのだ。
目が覚めると彼女を探していた。
今生の彼女はどこにいて、どんな姿でどんな名前をしているのか。わからない。
だが、僕はまた彼女を探してただただ幸せを願うのだ。
できるならば、この手で幸せにしたいと………。