モブと夏休み3
ー車内ー
「あの、どこへ?」
「実はね、兄から連絡が来たんだ!」
「連絡?」
「東京駅の前で待ってるって!やっと、会える、はず……」
「そんな簡単に会えるのかのぉ」
「それなんです、兄の性格的に、普通に会ってくれるはずがないんです」
「まあ大丈夫だろ、なんかあったら颯がなんとかするって」
「僕が?」
「それは、とても心強いです!」
「そんな信頼してんのぉ?」
ー東京駅ー
「おぉ!ここが東京駅かぁ、本当にあるんだな」
「ありますよ」
「いやーさ、田舎出の俺からしたらこんなの夢の世界にいるみたいだよ」
「そんないいかなー?」
「あれ、菊は?」
「高円寺菊さんは車で待機です」
「なぜ?」
「女の子なので」
「なるほど」
「そのノリだとこいつも待機だろ」
「オラは男じゃー!」
「あぁもう、うるさいなぁ」
「うるさくない!って、え?」
「あいつ、お前の」
「兄さん!」
「おっと近づくな、撃つぞ」
「「「?!」」」
じゅ、銃?!嘘だろ、なんで!
「兄さん、なんで!」
「日野颯、こいつに話がある」
「……」
「立川進、あいつは私のことを抹消しようとした」
「な、なにを言って」
「お前は覚えているだろ、私がいなくなったときの反応」
「……?!」
「嘘だ」
「ん?どうしたんだ君?」
「いや、いやだぁぁぁ!!」
「ちょっ、君!」
「思い出したか、ここだけの話、私は彼にとって必要な物を持っている」
「兄さん!」
「うるさい!ほら見ろ、これだ」
「これは…ガラケー?」
「この中に、パスワードが入っている」
「まぁ、言いたいことは分かった。なんとなく……でもなんで、学校からいなくなった?」
「クビになったからだ」
「クビ?どうして?」
「テストの答えを教えた、という容疑でだ」
「……は?」
「なぁ、あいつはなに言ってるんだ」
「オラも分からん」
「立川進が言ったんだ、今回のテストで満点をとらないと大変なことが起きる。だからそのガラケーに入ってる答案を見せてくれとな」
「……」
あいつ、馬鹿なのか?
「だか教師として教えるわけにはいかない。そう言ったら、じゃあタイムリープでもなんでもいいからやり直させてくれって言ったんだ。だから特別にタイムリープを使ってやった。」
「え?小金井先生の能力って…」
「タイムリープ、過去にしか戻れないがな、弟から聞かなかったのか?」
「そういえば、言ってたかも……ちょっと待って、あいつ、「タイムリープさせたのはお前だな!」って言ってたぞ?」
「言ってなかったか?タイムリープすると自分以外の記憶は消えるんだぞ?」
「……じゃあ!」
「あいつは、何かしらの理由でタイムリープさせられたことに気づいて私のところへ来た。そして、バラされたくなかったら、答えを教えろ。これがこの事件の真相だ」
「立川、嘘だろ……」
「なぁ、立川って主役だと思うか?」
「いや、まぁ」
「私からしたら、あいつは傲慢な悪役にしか見えない」
「……」
「これが真相だ、わかったか?」
「……?」
「武蔵さん、要約してください」
「立川進は兄さんのガラケーを欲しがっていた。兄さんは答えを教えない代わりにタイムリープでチャンスを与えた。しかし、立川進くんは兄さんが悪意をもってタイムリープしたのだと勘違いして兄さんを脅した。そこで助けたのが高円寺菊さんじゃなくて日野颯くんだったことで世界線がかわった。結果兄さんはクビ、立川進は満点を取れず世界はヤバいということだ」
「つまり?」
「日野颯くんが来なかったら、こんな事にはならなかった」
「そう……か」
「兄さん、これ見て!」
「……?!立川進か?」
「少し強引だけど、会話ぐらい出来るでしょ」
「こいつと話せと?なぜ?」
「それが……」
「信じ難いが、そもそもこの能力が信じがたいしな、信じよう」
「兄さん!」
「とりあえず、一緒に来て!」
「いいだろう」
「あのー、そろそろ」
「あぁ、悪い」
「それじゃ、行きましょう!」
ー秘密基地ー
「え?!タイムリープ出来ない?」
「1回使うと、しばらくはタイムリープ出来ない。8月5日に使って7月4日に戻った。また使えるのは8月5日からだ……」
「8月5日」
「今日は7月30日だから、あと6日だな」
「1週間もないじゃないか!」
「あぁ、それに今、厄介な奴がいるんだよ」
「厄介な奴?」
「昨日の火災事件、覚えてる?」
「うん、その前にもあったね」
「あれも私たちと同じよ」
「能力者ってこと?」
「うん、颯にはまだ言ってなかったけど、そいつもともと私たちのメンバーだったの」
「まじ、か」
「あのときは進が助けてくれたけど、今進はいないからね」
「立川ね……」
「分かるとは思うけど、そいつの能力は火を操るの、それに、颯も知ってる子よ」
「それって、誰?」
「中野雫よ」
「中野、さん……」