モブと主人公
ー翌日ー
「日野くん、よろしくね」
「うん、よろしくー」
なんてことだ、主人公立川進に話しかけられているだと?これは夢か幻か?
「早速で悪いんだけどさー」
「う、うん」
「ノート見せてくれない?」
「うん、う?」
「いやさ、三鷹くんも中野さんも神田もみーんな忘れちゃったみたいでさ、お願い!」
「……ごめん、僕もないや」
「んー、そっか、おけありがと」
「まって!」
「ん?」
「豊田さんなら、持ってるかも……」
「本当?ちょっと聞いてみる、ありがと!」
はいはいそれで…聞きましたー、貸しましたー、主人公頭下げるー、豊田さん照れるっと。僕は豊田さんへの中継役でした。はい死ねー。
ー放課後ー
「よ、よう日野」
「荻窪、なんだよ急に」
「いや、はは、嫌われちゃったぁ」
「どういうこと?」
「この前、立川にブチギレて店に迷惑かけてさ、もう二度と関わるなって、言われちゃったー」
そういえば、あのとき荻窪の名前上がらなかったな。てかそもそも立川、荻窪嫌いだったな。
「な?久しぶりに一緒にかえ」
「断る」
「なんでぇー?」
「い、いこぉー、日野氏」
「うん、まあそういうことだから、じゃあね」
「ちょ待てって、日野!……ちっ、陰キャが」
まああの後、豊田さんとは普通に仲良くなって一緒に帰る仲になった。この子、思ったより可愛いよな?そろそろ垢抜けてほしいなー。
「日野氏、我になにか?」
「いや、なんでも」
「そうだ、今日こそ家に来てください!」
「そ、そうだね、行こ!」
ー豊田家ー
「それで日野氏、来週は暇ですか?」
「うん、暇だよー」
モブキャラが忙しいわけないだろ
「それじゃあ、秋葉原に行きませんか?」
「秋葉か、そういえば行ったことないな」
「本場はいいですぞー、是非一緒に?」
「それ、いいね!行く!」
「では来週の6月8日、ここに集合で」
「了解ー」
やべー楽しみ!
ー6月7日ー
「速報です、本日の午前中、秋葉原で大規模な爆発が発生しました。この事故で……」
おいおい、冗談きついぜおい。
「現場から中継です」
「こちら、火災の原因と思われる店の前です。ここから火があふ……って君、なにしてるの!そっち危ないよ!!」
あいつ、立川?!
「君、止まりなさい!」
「嫌だ!この中に知り合いがいるんだ!俺が助ける!!」
「ちょ君、君!」
あのバカ店ん中入りやがったぞ!なにして……
「えっ、君、なんで火傷してないんだ……?ていうか、その子も無傷じゃないか?えぇ?」
「これは、そういう、体質?です!」
立川、能力者だったんだな。おそらく怪我を治す系のやつだろう。ったく、どこまでもかっこいい奴め。
"prrrrr"
「もしもし」
「日野氏見ましたか?テレビ」
「見た見た、立川だろ?」
「あれは、怪我を治すヒーラー系の能力者ですぞ!」
「そうだね、僕も思った」
「あと、秋葉原行く件はなしで」
「うん、おっけぃ」
「それじゃあ、さいならー」
……この火事も元はといえば立川がなにか起こしたせいなのでは?……死ね!
ー翌日ー
「なぁ、隣りのクラスの転校生見た?」
「見たよ、なにあの美女」
「なんか、立川の幼馴染らしいよ」
「えっ、まじ?」
「おーい!進いる?」
「お前、菊か?」
「ひっさしぶりー!」
「久しぶり!ここに来てたんだ」
「今日転校してきたばっかり!」
「ちょっ、立川、なにこの子」
「幼馴染の高円寺菊。中学以来だね」
「なに?もう別の女の子に乗りかえたの?まったく、これだからイケメンは」
「……別にいいじゃない、仲良くするくらい」
「悪いなんて言ってないけど?あ、この後手続きあるから戻るね、じゃね!」
「た、立川、今日暇?」
「えっ、いやー」
「暇?」
「はい暇です」
「家来て」
「え?いや」
「来て」
「はい」
……なんだこいつら、死ね!なに幼馴染に嫉妬してんだよばかたれ。んでもってお家イベントってまじかよ。あとさ、さっきの高円寺さん、僕も幼馴染なんよ。小学校まで同じだったし。なのに中学しか同じじゃない立川に幼馴染ポジ奪われる僕。泣いていい?
ー翌日ー
立川、なんかやつれてないか?どうした?
「あっ立川、随分とやつれてるじゃない。昨日のあの件はあなたのせいなのよ」
「いや、ごめ」
「進は悪くない!」
「菊!」
「なに?あんたには関係ないでしょ!」
「関係大あり、だって私」
幼馴染だから!僕も、幼馴染だから!こんなの見せつけないでほしい!
「もういい、またね、進」
「うん、また」
はぁ、モブ目線から見るとこんなつまんないものなのか、もういいや、次の授業の準備……
"トン"
えっ、
「久しぶり、颯」
……今日は、ちょっと頑張れそうだな。




