モブと夏休み7
「まじ、かよ」
「この事を知っているのはここのメンバーと朝廷の上層部だけだ」
「てか、これ持ってたら僕たちのことバレるんじゃ?」
「それでバレたんだよ、んでこの状況」
「……」
「中野雫はな、朝廷で言う中納言という位にいる」
「ちゅうな、え?」
「現朝廷の位で覚えてほしいのは、中納言、大納言、左大臣、右大臣、そして太政大臣だ。他の位は全部下っ端だからはしょるぞ」
「さすが歴史の先生」
「まあな。とにかく、中納言である中野雫をとっ捕まえて、立川進の居場所を突き止めないとな」
「あては、あるんですか?」
「あるはある。でもなぁ……」
「……俺は行かないぞ?」
「オラ、水飲んでくるー」
「……いくら兄さんでも無理です」
「お、おれも頭痛が酷くてな…よし日野颯!場所教えるから行ってこい!」
「え、みんなは?」
てか反応的にやばいとこでしょ、絶対。
「大丈夫、中野雫の居場所を聞くだけだから」
「でも、分かるもんですか?」
「あいつあぁ見えて情報通なんだ。朝廷の」
「どういう見た目かまだわかんないですけどね」
「まぁあとは、あいつの事は女として見るな、これ絶対な」
「えっ、どういう」
「絶対な」
「は、はい」
「あと、これボイスレコーダーね。これで録音してきて」
「……やっぱ、みんな」
「行ってこーい!」
「ちょっ!」
ー神田駅ー
なんか、ここって大人な街だな。いずらい……ていうかもう疲れたんだけど。朝から中野さんとやり合ってたと……語弊あるな。戦ってたと思ったら偽物だし?朝廷とか中納言とかわけわかんないし?しまいにはよく分からない場所に1人放り出されてるし!……って言ってる間に着いた。ここ、バーじゃん。入りずら……
「すぅー、はぁー」
よし、行くぞ!
"ガランガラン"
「ごめんくd」
「あっらー!!」
「?!」
「東ちゃんから話は聞いたわ、ささ、こっちおーいで!」
「あだ、はい」
あだってなんだあだって!!それより、この人すご、めちゃ元気じゃん。しかも、かわいい。
「あの、どうも」
「初めましてー、僕は御茶ノ水ニコ。ニコって呼んでー」
「日野颯です。あのニコさんて」
「ニコ!さん付け禁止!」
「あ、はい」
先生、面倒事押し付けてきたな……
「それでニコ、聞きたいことが」
「あるの!」
「?!」
「僕の方が聞きたいことあるの、いい?」
「い、いいですよ」
「じゃさ、僕のことみて、興奮した?」
「は?!」
「どうなの?」
「……」
「無言は肯定とみなすけどー?」
"コクリ"
「はーいアウト」
「???」
「結局あんたもそっち側なのね、もういい。帰って」
「いや、でも」
「帰って!」
「……」
素直に帰るか?でも、ここで引いたら、もう後がないかもしれない……
「無理です」
「いや無理とかないから」
「なんで、急に拒絶するんですか、なにか理由があるんですよね?」
「……聞いても驚かないでよ」
「はい……」
「……僕、その、男なの」
「そうなんですか」
「?!」
「もしかしてそれを気にしてたんですか?すいません、別に気にしないですよ」
うちにも同じような人いるし。
「……気にしないって言ってくれたの、今までで東ちゃんだけだったよ。僕さ、この容姿のせいで大変な人生を送ってきたの。男からは気持ち悪がられ、女からはおもちゃにされた。だから、そういう風に見てくる人間たちが、嫌いなんだ。だから情報屋になった。あまり人と関わらないし、これが1番売れる仕事なんだよね……」
「……」
「僕、お金が貯まったら海外に行って整形するんだ」
「整形?!」
「さっきも言ったでしょ、容姿のせいで大変な人生を送ってきたって、だから、この顔が大嫌いなのよ。こんな顔……」
「でも、その顔もいいですよ、少なくとも僕は……」
「?」
「僕は、好きな……ほうです……」
「……その言葉、何回も聞いた。そういう奴は、だいたい僕の体目当て……でも」
「でも?」
「君、度胸無さそうだし、そんな心配しなくていっか!」
「あぁ……」
なんか、悲しいなぁ。
「よし、君を僕のお客さんとして認めます。それで、どんな情報が聞きたい?」
「あっ、中野雫の居場所を教えてください!」
「ん、じゃあ16万」
「じ、じゅうろくぅ?!」
「いや安いほうだよ、ほら、学割ってやつ」
「嘘でしょ……」
「まあ無いだろうなとは思ったけど…よし、じゃあ代わりに、奥の部屋いって」
「奥?」
「いいからいいから」
「はぁ」
"ガチャ"
ー6時間後ー
「じゃあ、気をつけて帰ってねー」
「……は、はい」
……まさか、6時間も雑談に付き合わされるとは……でも、ちゃんと情報は教えてくれたな。
「彼女たちはずばり、学校です」
「が、学校?」
「信じるかどうかは君次第だよ、颯ちゃん」
……一応報告しとかないとな。てか先生知ってたな?許さない……
「あれ、もしかして、日野氏?」
「と、豊田さん?!どうして?」
「えっ、いやちょっと買い物してたらこんな時間で……日野氏こそ、どうしてここに?しかも手ぶらで?」
「あっいやー、なんか、散歩?」
「でもここ、地元からまあまあ離れてるよ?散歩にしては、ちょっと距離長いような……」
「ああいやー、あっそうだ用事思い出した!またね、豊田さん」
「えー、一緒に帰ろうよ……」
「菊!」
「お帰り、だいぶお疲れみたいだね」
「もう本当疲れた、まぁ情報は聞けたし、録音も」
「おぉ、やるじゃん。お風呂沸かしたから、先入っちゃって」
「ありがとー」
「……嘘……でしょ……」




