第14話 突貫作業(その1)
「槿と桜」は第14話までを前編とし完結です。残念ながら pt+ブックマークが伸びませんが、これまで読んで下さった方に感謝します。いずれまた後編を投稿します。それでは14話、よろしくお願い致します。ありがとうございました。船木
翌朝オスロのオルセンから電話が入り、不足する1万2千本は、船主側で手配すると言ってくれた。当然その代金は新日本側の負担になるが、契約不履行より傷は浅い。
それにオルセンは、藤原がソウルまでアテンドしてくれたことに感謝した。彼はそれを見込んでの事だったのかも知れないが、やはり再三の納期変更は心配で仕方なかったのだろう。
藤原はその事を上田に伝えると、その足で日本へ戻ることにした。専務取締役として、長期に会社を空ける訳にはいかない。まずはベルトの件の火消しをした上で、更なる円高に向けた神戸支社の立て直しが急務だった。
12月6日土曜日、船積みまで後4日となり、上田以下全員で突貫作業を続けている。だが連日の早朝から深夜までの作業に、作業員の疲れはピークとなり、それに寒さも加わり、作業効率が目に見えて落ちていた。
金曜の夜には、良品の数が1万5千を越えて残り3千本となった。歩留まりを考えれば後5千本は要る。4日で5千なら行けると踏んだ矢先、不良品の数が増えているのが分かった。
そこで上田は、朴と応援部隊を集めて協議した。実務に詳しい三村が、梱包や通関に時間が掛かると言う。朴部長が事前通関の手続きをするとしても、やはり日数が足らない。
「こうなったら2日で5千、今日と明日で、なんとかしよか――」
と、上田は無理を承知で言い切った。
もはや一日の猶予もない。
誰も異議なし。皆で「やりましょう」と言って、持ち場へ帰った。
上田は、打てる手は全て打つことにした。
まず食事、上田は年長のアズマに伝えた。
「金は出すから、自炊のメニューを増やせ」
そう言われたアズマは、ドングリ眼で頷くと外へ出て行き、しばらくすると戻ってきた。
どこから持ってきたのか、彼女は素焼きの鍋で牛のテールスープを作り、そこへご飯やソーメンを入れて暖かい昼食を作った。
それはソルロンタンで最初山岡は敬遠した。
だが若い小山が、アガシに誘われて喰うと、
「これ、旨いすね――」
と、喜ぶのを見て、日本人も食べはじめた。
好みでキムチを混ぜてスプーンで頬張ると、凍える中でも体が温まる。
全員が車座になってソルロンタンを食ると、午後からの作業は捗った。
だが良品のベルトの中に不良品が混じる。
それを見かねた小山が、思わず口走った。
「不良品はナッパ、良品はケンチャナヨー」
そのハングルで、作業員の意識が変わった。
「小山氏―、ケンチャナヨ?」
そう若いアガシがウエビングを掲げて聞く。
「ネー、アガシー―、ケンチャナヨ」
その様子を見ていた上田は、
(同じ釜の飯を食うとは、こういうことか)
と、その若さが眩しかった。
(つづく)




