# 一話「 ハローグッバイ。」
「ネットコミュニティー。」
広くて狭いインターネット世界の中、
同じ趣味で繋がっている場所。
オレはそこの人たちが好きで、
信じて信用していた。
でも自分に返って来たのは…。
オレはなんの為にあんなに頑張ったんだろう。
なんでそこで自分の時間を捨てんたんだろう。
オレの事、信じてくれる人なんて
一人もいない。
無言でオレを睨みつけてる空間。
特にアイツ。
死ねばいいのに。
マジで....死ねばいいのに。
"……外に出よう。"
外の空気を吸えば少しはマシになる。
歩いて歩いて自分なりに頭を冷やす。
散歩中のわんちゃんの姿を目で追いながら、
晩ごはんは何にしよう。コンビニはもう嫌だな。
どんどん単純な思考に戻ってくる。
ネットの世界なんかスマホの画面から
消せば終わりなんだ。
" 知るかっ "
" アプリ削除完了っ "
ー「 " 気をつけてー!!!" 」
.....誰がを死ぬほど嫌っていたら、
罰が当たるんだね。
ー「 " 青年ー!! " 」
◇ ◇ ◇
ー「 " 青年、無事か? "」
ー「 " スマホ歩きしたら駄目だろう。
君、お名前は? " 」
" あ…璃津です "
無意識で下の名前で答えてしまった。
道端で急に転ぶとは何ってこった。
ー「 " 無事みたいだな。どこか異常があったら病院な。
これ重要だぞ。" 」
なんか見えてる....
ー「 " ただ俺が見えてるだけー☆ "」
おじさんが一人……
浮かんでるような…
足が無い…??
ー「 " はははっはっ " 」
おばけ……?幽霊??
ー「 " そうとも言える。おじさんまだここに未練が
残ってなぁ〜 " 」
これからどうなる?
……オレはどうすればいい?
ー「 " なんか君、落ち着いてるねぇ。
足が無いおじさんだぞ。怖くないのか?" 」
全然、落ち着いて無いし。
……なんかおじさん、おじさん過ぎて
怖くは無いと思う。
ー「 " オイオイ、おじさん生前は結構ーー
ハンサムだったぞ?" 」
ー「 " まぁ…この足無いおじさんが怖くない事で…" 」
たぶん……そうだと思う。
ー「 " じゃ、この怖く〜ないお化けおじさんの事、
助けてくれる? " 」
◇ ◇ ◇
行って来ます。
ー「 " どこに行くのか?バイト? " 」
おじさんは幽霊だから隠せないと思う。
オレ、数年前に両親が二人とも
亡くなってて……両親が残してくれた
この家と貯金で生きてんの。
金はどんどん減っていくのに…。
オレという存在。これから何をしようか、
何をして生きれば良いのか分かりません。
心配だけど、分からない。
考えすぎると不安になるから……
正気を保つために散歩にでも行くの。
ー「 " うむ。" 」
ー「 " じゃ、バイトはどう? " 」
おじさん、うざっ……
ー「 " それ以外にもなんかあるみたいだな。" 」
……実は転ぶ前におじさんの声が聞こえたんだ。
幻聴が聞こえて、次は幻覚まで見えて
マジでヤバいと思った。
オレは、これからどうなるんだろ。とね。
おじさんと最初から口を開けて声を出して
話した事、無いからね……!!
ー「 " あっ... " 」
幻覚と幻聴って精神分裂病だよね。
おじさん本当に幽霊なの…?
オレをどうするつもり……??
ー「 " 信じてくれないと思うが、
おじさんの願いを叶えくれたら空を飛んで行く。" 」
ー「 " お前さんを苦しめたりなんてしないから、
おじさんはいいー…いい幽霊だからねぇ!!" 」
....いい幽霊ってあり?
おじさん、オレはただのバカなんだよ。
オレ、一人だから、
ネットの人間達を信じて頼ってた。
同じ趣味で出会って……
みんなと楽しく話して……
毎日楽しかったよ。
でも....
突然、変な奴が現れてイジメされたんだ。
皆にも言ったよ…?
でもオレが悪い悪党になってしまった。
アイツってホント隠れてオレだけがわかるように
イジメして来るんだよ?
何度も辞めろって言った。
でも続いて続いて…止まらなかった。
オレの事を真似して、
ストーカー行為みたいなのもあった。
ー「 " うん。" 」
でも負けたくなくて、コミュを続けた。
イジメとストーキングの証拠となるものを集めて、
そのデータを管理者に提出したの。
そしたらね。
コミュの中でそれも我慢出来ないんですか。
貴方が辞めて下さいって言われて…。
オレが変人になったんだよ。
コミュの空気感から離れたオレって…。
理解なんて最初からして貰えなかった。
オレ、どこから…何を間違えたんだろ。
ー「 " うん。" 」
オレはただ、みんなと楽しく過ごしたかった。
イジメ行為的なモノがあるなら解決して平和に。
でも誤解は重なっていって……
何度も勇気を出した。ても無視された。
透明人間扱いされて辛かった。
ー「 " 大変だったね。" 」
もう、言葉で解決出来ないのなら
みんな死ねばいいって思った。
その結果が……
おじさんなのか?
それでおじさんが見えてるのか?
ー「 " そうかもな。" 」
......。
なんかスッキリした。
話聞いてくれてありがとう。おじさん。
ー「 " なんでもいいよ。過去に自信を持って。" 」
ー「 " 昨日の事を浮かべて、悪くなかった…と
思えたならそれでいい。君がやってきた事、
一つ一つが全てムダな事じゃないんだ。" 」
ゴミ人間でも……?
ー「 " 人間関係とはなぁ、ギブアンドテイクで
お前がどんなにいい人であっても相手がゴミ人間なら、
いい人になれない。" 」
ー「 " それはしょうーが無いから。世の中って…まぁ、
そんなもんだよ。" 」
おじさんは良い事ばっかり言うんだけど
なんで成仏出来なかったの。
人でも殺したの。
ー「 " 失礼な。言ったろ…未練があるんだよ。
大きな未練がなぁ……。" 」
それ、本当にオレが出来るの?
ー「 " 俺たちが会ったのは偶然じゃないと思うぞ。
なんとかなるだろう。" 」
ご飯食べようっと……。
ー「 " うむ!3度の飯は大事!!冷たいものと甘いモノは
食べすぎず!そして睡眠時間"…… 」
はいーはいー。
◇ ◇ ◇
ー「 " おはよう。璃津。" 」
おじさん、オレ…眠れなくてね。
ずっと考えたんだ。
その人の事、可哀想に思う事にするね。
オレ、なんも無いけど……その人よりは
なんかありそうな予感がする。
ー「 " それな、宝石も磨いてこそ光る。" 」
ー「 " 痛い。辛い経験があったからこそ、
光るんだよ。" 」
ー「 " 子供の頃、食べられなかった野菜が美味しく
なるように、いつか掃除と皿洗いを楽しめる大人に
なるんだ。" 」
うざっ……
はぁ…うちのお父さんが生きていたら
同じ事を言ってたのかな。
ー「 " 父さんの顔、覚えてる? " 」
悲しいけど…見れないし触れないから
どんどん記憶から薄れて行くんだ。
オレ、臆病だから写真を見る勇気も出なくて。
でも…ちゃんと覚えてる。名前も。
ー「 " ……そっか。" 」
ねえ、今更だけど
おじさんのお名前も教えてくれる?
ー「 " 死んだ人間の名前なんか別にいいだろう。
それより、朝ごはんだーー!!" 」
うざいーー
ちゃんと食べるよ...。
◇ ◇ ◇
お化けおじさんと2ヶ月を過ごした。
おじさんが煩すぎてアルバイトも始めた。
ー「 " ミスなんて誰でもやってる。
怖がらなくても良い。学びながら成長するのが
大事なんだ。" 」
おじさんのその言葉のお陰で
なんだか余裕が出来た。
ゲームのクエストみたいに
ひとつ、ひとつ。
クリアして成長するのが大事なんだ。
意地悪な人も勿論いる。
でもネットの世界よりはマシな気がする。
現実では努力すれば認めてくれるし。
お金という報酬も貰える。
オレはもう…。
透明人間じゃないんだ。
生きているんだ。
◇ ◇ ◇
なんだか軽い気分になった。
全部おじさんのお陰だ。
汗かいて食べるご飯を美味しく感じる。
夢も出来た。いつか小さなお店を開いたい。
オレは何が出きるんだろ。
そう思えば.....
学生の頃、オレは文と絵を書くのが好きで、
周りの人より、少し才能があった。
国語の先生に褒められて、
作文コンクールを勧めて下さったり。
自分の絵を見に来る子たちもいた。
描いた絵を消しゴムで消したりすると
勿体ないとまで言われたのだ。
今更だけど…ありがたい。
その気持ち、大切に取って置きたい。
でも、その時も最低の奴がいて、
学校が大嫌いになって学校を辞めて漫画家になると
言い張って両親に苦労をかけた。
あれ...?
お父さんの.....
顔.....
◇ ◇ ◇
お父さんー
ー「 " お帰り〜 " 」
ごめんなさい。お父さんの顔忘れちまって……
オレって本当に最低でバカな奴だよ。
ー「 " 母さんは大人の事情によって一緒に
来れなかった。ごめんな。" 」
なんで老けたのーー幽霊なのにー
ー「 " こらっ。失礼な。天国でも人は人なんだぞ。
俺はこの顔でお前に会えて嬉しいよ。" 」
ー「 " 寂しくさせてしまったな。お前がいつも心配で
心配で神さまに祈ったら叶えてくれたよ。" 」
ー「 " 一人でよく頑張ったね。よしよし。" 」
おじさんーーー...
ー「 " 璃津、お前の人生はお前だけの人生なんだ。
私たちの大切な息子だ。なんでもやれば出来るさ。」
ー「 これからもっと辛い事があっても、
もっと酷い奴が現れても、人から傷つけられて…
人を傷つけてしまって…
辛いと思えるお前は良い子なんだよ。"」
ー「 " 自分を信じて生きて欲しい。
...負けるなよ。"」
" うん。"
ー「 " 父さんの名前、呼んでくれるかい。" 」
" …っ。 "
ー「 " ありがとう。それが聞きたかった。"」
ー「 " 愛してるよ。" 」
ー「 " いつまでも...いつまでも..." 」
ー「 " .....この気持ちだけは永遠だ。"」
お父さんと過ごして楽しかった!!
一生忘れない!!!
……またね!!
……また、ね。
◇ ◇ ◇
古いアルバムを開いた。
赤ちゃんのオレも若い両親の姿も
なんどもなんども、見返して頭の中に刻んだ。
両親がこの世から居なくなった事を、
自分が一人になってしまった事も、
事実を認めたくなくて、
確認したくなくて。
墓参りに一度も行っていない。
寂しくさせたのはオレも同じだ。
親不孝な奴の前によく来てくれたね。
お父さん。
そして若い頃は本当にハンサムだったね。
お母さんも美人で、この遺伝子はどこに行ったのやら。
神様がオレのところに父さんを
送ってくれたのは、あり得ない話で、
誰も信じてくれないだろう。
でも、前みたいに誰かに信じて
貰えなくてもいい。
神様とお父さんに応援されて、
愛されて、祝福されたんだ。
オレには寝て起きれば明日がある。
自分の人生の中でルートを作るのも、
ルートを回収するのも自分自身だ。
ハッピーエンディングを迎える為に
花を咲かせよ。