〈 序章 〉
部屋に月明かりが差し込む。
その月明かりのせいか目の前にいる少女、ティナ・アグレシア王女の綺麗な金色髪が更に一層綺麗に感じる
ベットが軋む音が静かな薄暗い部屋へと響く
『 あの〜…な、何してるんですか…? 』
呆れ気味に自分に跨る目の前のティナへと問いかける
『 何をって……見ての通り既成事実を作ろうとしているのですが…? 』
そんな事をきょとんとした、無邪気な顔であっさりと答えられてしまう。
いや、なにやばい事をそんな顔で言ってるんですかこの王女。てか普通に考えて王女が言っていいセリフじゃないよね?それ?なにこの女王ホントに頭おかしいんじゃないの?あれかな、顔だけが良くてあとは残念な人なのかな、いやきっとそうに違いないな、うん。
目の前の出来事から出来る限り逸らそうと心中でそんな事を考える
『 何か失礼な事を考えましたね…? 』
むくっ、と頬を子供のように膨らませる。
その仕草に思わずドキッ、としてしまった。
はっ、とその事実に少し遅れて気付くも遅かった。
ティナは邪笑を浮かべて僕を見ていた。ティナの表情を見ては自分の顔が引き攣るのが分かる。
やってしまった…僕とした事が思わず……と後悔を滲ませるが後悔してる暇が無いとすぐさま思考を切り替える。まずはこの状況をどうするべきか考える。
僕がドキッ、としてしまったことにより恐らく目の前の残念王女ことティナ様のスイッチはオンオフが効かなくなった事だろう。
自慢では無いが僕は力が弱い。そこらの女性にでも余裕で負ける自信がある程だ。そんな僕がオンオフ機能を失ったティナに力で勝てる訳がない。いや、失って無かったとしても勝てないのでどっちにしろ無理なんだけどね!
思ってて悲しくなってきた…うん…もしこれを無事に乗り切ることが出来たらもう少し身体を鍛えよう。うん。無事に…帰れたら………やばい、無事に帰れる気が全くしない神様仏様父様母様助けて!?
心中で助けの必死の声を叫んでいるとドーンッ、と地に響き渡るような大きな音が鳴り響いた。
『 な、何事なの!? 』
急な出来事に慌てふためくティナ。
いやぁ〜…あの急な爆音に慌てふためくのは分からないでもないですが、その…跨ってる体勢の状態で動かれるのは些か…と言うより結構ダメなんですが…何かとは言わないけど擦れあってるのですが…
いや、いかせんいかせん。今はそんな事考えてる場合じゃないな…さて…今の爆音は恐らく…
思い当たる節を考えているとバタバタと廊下の方から慌ただしい足音が聞こえてくる。間もなくして部屋の扉が開かれた。
『 ティナ王女殿下ご無事ですか!? 』
随分と急いで来たのだろう。その一言を発してからずっとはぁはぁと息を切らしている
彼女はこの屋敷に住まうメイドの1人で主にティナの世話をしているバレットさんだ。いわゆるティナの専属メイドである。
『 えぇ…無事よ。何が起きてるのバレット? 』
え?何この体勢のまま話進めるのですかティナ様ー?おーい?折角表情はザ・王女って漂わせて真剣に状況把握しようとしてるのにその体勢のせいで全然台無しになってるよ?てか、バレットさんはバレットさんでツッコもうよ?あれかな?もうつっこむのも飽きちゃった感じかな?
僕とティナは親公認での結婚を認められてる。僕は認めてないが。だからやることなすこと無茶苦茶のティナを今は親含めメイド達もスルーしてる。最初の方は咎めたりツッこんでたりしていたが時期にスルーするようになったのだ。なんだろう、結婚相手だから別いいや、とでも思ってるのだろうかこの国の国王と王妃は。
唯一最近までもツッこんでくれてたりしてくれたバレットさんも今はもうこの始末だ。裏切り者!バレットさんだけは諦めずずっとツッこんでくれるかと思ってたのに!
心中で、ぶーぶー、と頬を膨らましジタバタと駄々を捏ねる
『 数日後に予想されていたはずの大規模スタンピードが起きました。被害は中央広場まで及んでいます。ただいま冒険者並びに騎士団で討伐隊を組み殲滅に当たらせて居るみたいですが……なんと言っても大規模に加え予想外のこと故街は混乱に陥っておりもう数え切れない程の死者が出ております 』
そう言ってバレットさんは地に目を伏せた。別この国の冒険者や騎士団が弱くて死者が出ているわけではない。はっきり言うと強い部類に入る。だが、それは本来冒険者ならモンスター相手として、騎士団ならば悪人や他国の敵騎士として強いだけある。
この国は代々弱いものは切り捨てろ精神だったという。だが、それは、現国王の一つ前父親に当たる存在イルダ・アグレシア前国王が弱き者は護れ。それこそ強き者の定めと言い放ちその方針へと国を変えていった。
その方針へ定められてまだ何十年としか経っておらずまだまだ日が浅い。護って戦うということが冒険者や騎士団にとっては未だ難しいことなのに加えて今はさらに混乱というオンパレード護りきれないのも無理がない。
そうなるとバレットが此処へ来た理由が薄々と分かってくる。勿論先程述べた通りティナを心配もしていたのだろうが本当の目的は───────
『 ですので……どうかお願いします軍師様! 』
バレットさんが口を開いてそう言った。
僕の答えはもう、決まっている。
『 はい、おまかせください 』
小さく頷き答えた。
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緊急事態のこともあってかティナはすんなり退いてくれた。凄い嫌々ではあったものの…
去り際ティナは控えめに笑って送り出してくれた。それだけでどれほど僕を心配してるかが伝わってくる。僕は力も無ければ魔法もろくに使えない。ならばどうして僕に助けを求められたか?そんなの簡単である。僕は『軍師』あらゆる者が恐れる策略家であるからだ。
さて、今日も今日とてお仕事を始めますか───
ということで、皆様方おはよう、あるいはこんにちは、はたまたこんばんわ。
今回はこんなクソみたいな小説を読んで頂きありがとう御座います。
まだまだ至らぬ点など御座いますと思いますが暖かな目で見守ってくれると嬉しいです。
では、次回からは時は遡り転生前の話、そして転生後の話を書いていこうと思います。
ほら、あれですよ、アニメや漫画でよくある先になんか進んだ面白いところを見せて(書いて)でいきなり昔に戻る……(伝われ!!)
ということでスタンピード編はもうちょと先になると思いますが、なぜ少年は軍師と呼ばれるようになったのか…そしてなぜ王女であるティナと結婚する羽目になったのかその経緯をのんびり楽しみ読みながらお待ちください。
ではでは、次回の話でまた、お会いしましょう。
少年を転生させた神様からでした。