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かくして、戦いは即座に蹴りがついた。
「うっ…」
女の子は涙目で、何やら必死になっていた。
「嘘よ!こんな事ある訳ない!私が、人間に負けるなんて!
こんな事、あるはずないわ!」
「あら、彼は人間ではありませんよ?」
「え?」
「ああそうさ…俺は人間じゃない。
魔皇さ…魔皇」
「魔皇…?
なんでそんな奴がここに来るのよ…」
「彼は、私が選んだ人間なのです。
あなた達のような、秩序を乱す者を倒すためにね。
彼には相当の力を与えたので、並みの異人ではとても打ち勝てないレベルですよ?」
「はあ…?
じゃ、私は初めから勝てない戦いをしてたって事?
あ、あははは…」
「さあ、あなたのお姉さんの居場所を教えなさい。
あなたはあくまで実行犯でしょう?」
「わかったわよ…」
そして、今回の事件の真の元凶であるという夜桜の姉の部屋へ来たのだが。
「…誰?」
それは、妹にも似た綺麗な紫の髪をした女だった。
「単刀直入に言おう…お前を倒しに来た」
すると、女は怖いくらい鋭い目で俺を見てきた。
「…あなたが?」
「ああ」
「へえ…つまんないわね」
そして、
「夜桜に殺されてた方が、余程ましだったでしょうに!」
女は刀を抜き、赤黒い斬撃を放ってきた…
と思ったのだが、俺は無傷だった。
「え?」
「え?」
俺も女も驚いた。
「どうして…」
「どうして平気な顔してられるの?
人間なら即死するはずなのに…」
「俺はもう人間じゃないんだよ…魔皇にされたんだ」
「魔皇…?」
女はぽとりと刀を落とした。
「…もう悪い事はしない。だから…許して?
私達、もう地上にあがろうなんてしないから…」
「俺はそこまで単純じゃない。事情があるなら聞く」