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翌日も学院は休みであった。
ちょっと水兵長に連絡を取ってから、苺さんの元へ向かった。
戦況の確認と、伝えたい事があったからだ。
「おはよう、苺さん」
「あら、おはよう…って、その姿は!」
彼女は俺の姿を見て驚いたようだった。
「昨晩、一人休暇を嗜んでいたんだがな…
その時に、目覚めたんだよ」
「あ…あぁ…」
俺の右手の中指には、銀色の指輪。
左手には、青い杖。
そして首に下げるは、白い目玉の形をした装飾品。
これは、魔皇の正装である。
そして同時に、魔皇として当然の、「本来の姿」になった時の格好でもある。
「苺さん、あなたはずっと、俺にこうなって欲しかったのではないか?」
そう尋ねると、彼女は唖然としながらも頷いた。
「はい…
私は、確かにあなたにこうなって欲しかった。
言葉にしなかっただけで、ずっとこの姿を理想としていた…」
俺は彼女を静かに抱きしめた。
今まで抱きしめたことなどなかった彼女の体は、とても暖かく…
そして、柔らかいものであった。
戦況の確認に移る。
先日のコンヌ峠での戦いは敗北。敵の戦力はかなり減らす事ができたようだが。
敵は、一週間後にはより我が国本土に近いケデー大橋を攻めるつもりのようだ。
ケデー大橋にはこっちの最後の出城がある。
もしここを落とされれば、戦況は絶望的だ。
苺さんは全ての術士を集め、まだ私達は負けていない、最後まで戦おうと皆を激励し、戦闘に出てくれる者を募った。
希望者が出揃い、集会が終わった後、苺さんに自分の考えを話した。
それは、俺自身が戦地に赴くことだ。
たとえ反対されようと行くつもりだったが、苺さんは反対してこなかった。
かわりに、俺の手を握りしめて言ってきた。
「必ず、無事に帰ってきて。
私、これが最後だなんて思ってないから。
私の「思い」を、「現実」にして」




