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育成中の者達、ってのは、要は新人の術士や魔法使いだった。
苺さんは教えてくれなかったが、どうも昨日殉職した者の中に彼らの教官がいたようだ。
それで、俺が臨時の教官として指名された、って事らしい。
神殿の一角にある学院エリア。
その教室で、俺は初めての魔法の教師をやる事になった。
みんな若くて、元気のある子たちだった。
そして誰も彼も個性的だった。
物覚えが悪いやつとか悪ふざけが好きなやつもいたけど、少なくとも悪い子はいなかった。
おかげで、俺もストレスなく教えられた。
俺と彼らとは、年以外に決定的な違いがある。
俺は元々人間だ、魔法の教育なんか受けた事ない。
ましてや、魔法やら術やらの知識も大してない。
…と言いたいところだが、いざ教えるとなるとなぜか理解できて、本当の経験者みたいに教えられるものだ。
これも魔皇である故なのだろうか。
だが細かい事はいい。
俺の使える全てを、未来あるこの子たちに捧げよう。
今は休日の夜。自室でのんびりしている。
今夜は空気が丁度いい感じにひんやりしていて、窓から見上げる月がえらく綺麗だ。
こうして一人で休息を嗜むと、この時間が愛おしく…
そして、争いの日々が虚しく感じられる。
まだ異国との戦いは続いている。
戦いが終わったなら、また前のような日々に戻りたい。
にわかにそう思った。
だがそれは無理かもしれない。
戦いはいつ終わるかわかったもんじゃない。
それに…
苺さんと出会ってから長い年月が経ち、体にはガタが来つつあった。
この世界での人間の平均寿命は60年前後。
対して、俺はもう50を過ぎている。
異人は数年に一度年を取るらしいが、人間が異人になってもそこん所は変わらないらしい。
俺の教え子達も、苺さんも、みんな、この先俺より遥かに長生きするだろう。
「俺」は、一体なぜ生きているんだろう?
苺さんのためか?
教え子のためか?
猛烈にあたまが痛たい。
そうか。
「私」は…「私」は…




