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とある魔皇になった人間の話  作者: スルート
魔皇の手記
20/24

28ページ目

育成中の者達、ってのは、要は新人の術士や魔法使いだった。

苺さんは教えてくれなかったが、どうも昨日殉職した者の中に彼らの教官がいたようだ。

それで、俺が臨時の教官として指名された、って事らしい。


神殿の一角にある学院エリア。

その教室で、俺は初めての魔法の教師をやる事になった。



みんな若くて、元気のある子たちだった。

そして誰も彼も個性的だった。

物覚えが悪いやつとか悪ふざけが好きなやつもいたけど、少なくとも悪い子はいなかった。

おかげで、俺もストレスなく教えられた。



俺と彼らとは、年以外に決定的な違いがある。

俺は元々人間だ、魔法の教育なんか受けた事ない。

ましてや、魔法やら術やらの知識も大してない。

…と言いたいところだが、いざ教えるとなるとなぜか理解できて、本当の経験者みたいに教えられるものだ。

これも魔皇である故なのだろうか。

だが細かい事はいい。

俺の使える全てを、未来あるこの子たちに捧げよう。







今は休日の夜。自室でのんびりしている。

今夜は空気が丁度いい感じにひんやりしていて、窓から見上げる月がえらく綺麗だ。

こうして一人で休息を(たしな)むと、この時間が愛おしく…

そして、争いの日々が虚しく感じられる。


まだ異国との戦いは続いている。

戦いが終わったなら、また前のような日々に戻りたい。

にわかにそう思った。



だがそれは無理かもしれない。

戦いはいつ終わるかわかったもんじゃない。

それに…

苺さんと出会ってから長い年月が経ち、体にはガタが来つつあった。

この世界での人間の平均寿命は60年前後。

対して、俺はもう50を過ぎている。

異人は数年に一度年を取るらしいが、人間が異人になってもそこん所は変わらないらしい。

俺の教え子達も、苺さんも、みんな、この先俺より遥かに長生きするだろう。




「俺」は、一体なぜ生きているんだろう?

苺さんのためか?

教え子のためか?



猛烈にあたまが痛たい。




そうか。

「私」は…「私」は…




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