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1章ー7

エルミナは可愛い。僕のはじめての許嫁。


エルミナは優しい。僕の事で泣いたり、笑ったりしてくれる。


エルミナとは会ったばかり。けれど僕もエルミナもお互いがお互いに恋をしている。


エルミナを幸せにしたい。僕もエルミナと幸せになりたい。


泣いて欲しくない。悲しんでほしくない。助けになりたい。


だからその言葉はカッコつける事なんかなく、ごく自然に僕の口から生まれた。


「大丈夫。僕がなんとかするからね」




「スキル『請願』!!女神様、お願いです。僕の願いを叶えて下さい。」



僕が願う物はこの場を解決出来るようなスキルだ。請願は自分でスキルを選んで願う必要がある。


とにかく今、必要な事はすぐにこの炎を消す事。それに適うスキルが欲しい。


炎を消すのに一番なのは…やっぱり水だよね。土でも良さそうなんだけど家の中を土まみれにするのはちょっと嫌だ。

それから忘れちゃいけない事がもう一つ!得られるのは一般スキル限定だという条件…それを考えるとすぐにスキルは決まった。


『スキル【請願】を発動します。ユーリは新たに水魔法のスキルを得ました』


そう。この世界には魔法が存在する。

しかし、この世界の魔法というのはあくまで一般スキルの1つという位置づけである。

各種魔法スキルに目覚めた者だけが魔法を使用する事が出来るのだ。


ここにいるイレギュラー1人を除いて。


ついでに水魔法の使い方を正しく知る為に…「鑑定」!




スキル:【水魔法】 レベル1


効果:初級の水魔法を使用する事が出来る。


使用者の手の平から水を出す事が可能。有効範囲は半径20m圏内。


すでに周囲に存在している少量の水を自在にあやつる事が可能。


使用制限:なし(レベルに見合わない使用は出来ない)



※水魔法スキルのレベル上昇に伴い速度、量、有効範囲は上昇する。


概要:敵を攻撃するも良し、敵を絡めとるも良し、飲んで良しの便利な魔法。

水魔法で生成する水は体に害はない為、喉が渇いたら取り合えず水魔法。おいしいよ。





請願スキルを鑑定した時も思ったんだ…。この鑑定…概要部分がおかしいよね。なんで鑑定がボケるの?もう突っ込まないよ?



…よし、じゃあ炎を消してしまうか。


「スキル水魔法、発動!」


口にしなくても使える気がするんだけど、つい口にしちゃった。

うーん、水魔法!っていうのも味気ない気がするし…。こう、必殺技みたいな名前を付けてみようかな…いやいや、待て、それはダメだ。後で絶対に後悔する。間違いなく黒歴史になる。

前世の暗黒時代の苦い経験を繰り返す所だったよ。



出来上がった水は手の平より少し大きいくらい。ちょっと小さいけれど使用に制限はない。今はまだスキルレベルが低くて1つずつしか出せない。でも1つずつであれば何度でも連続で出せる。

要は使い方だよね。散弾は出来ないけど、連射は可能って事か。


辺りにまばらに広がっていた炎もあまり大きくならなかった事もあって瞬く間に消し止める事が出来た。

うん。初めて使うにしては上出来なんじゃないかな。。


簡単に炎が消えた事もあって次弾用として水魔法で作っていた水があまってしまった。

…少し飲んでみたら大変においしかった。ミネラル的なやつだねきっと。


僕が炎を消す姿を黙って見ていたエルミナ。炎は消えたものの未だに表情は少し暗い。


「ユーリ様…。本当に申し訳ありませんでした。スキルの事で悩んでいたのでユーリ様に掛けて頂いた言葉が嬉しすぎて…スキルの限界を考えずに暴走してしまいました。大きな事故にならずにすんだのはユーリ様のおかげです。ありがとうございます」


そう言って、もう1度頭を下げるエルミナ。


「僕たちはさっき正式に許嫁になったよね?僕は今後、この関係を解消するつもりはないし、僕はもうエルミナを家族だと思っている。これくらいの失敗なんてお互いにこれからたくさんするはずだと思うんだ。そんな時はお互いに助け合って、気軽に謝って許しあえる…そんな関係になりたいと僕は思っているんだ。それって幸せだと思わないかな?」


下げた頭をパッと上げたエルミナの顔は先ほどのような暗い表情ではなくなっていた。


「思います。私もそういう関係になれたらいいなと思います。」


笑顔になったエルミナはやっぱり可愛い。


一騒動が終わって改めて考える。

こんな可愛いエルミナと許嫁になれた僕は凄く幸せ者なんじゃないかな。

控えめにいって感無量だね。


落ち着きを取り戻したエルミナは料理を再開した。そしてその日、僕は今まで生きてきた中でも最高と呼べるほどおいしい料理を味わった。

レベル1でこれだと熟練したエルミナの料理はどれ程の物になるんだろうか…。

今から将来の食卓が楽しみでしょうがない。


それから少し歓談を挟みすぐに日が落ちた。もうすぐエルミナは帰宅しなければならない時間だ。


「せっかくこうしてお話出来るようになったというのに子爵家へ帰らなければならないのは寂しいです。お互い貴族の身です。所領も離れていますので、そうそう会う事も叶いませんね。あの…お手紙をお出ししてもよろしいでしょうか?」


エルミナは遠慮がちに聞いてくる。


「いいよ楽しみに待ってる。僕からも手紙を書くからね。もし機会があれば近いうちにまた会えるといいね。いや、機会を作れるように考えてみるよ」


でも…なんだかこれで暫くお別れっていうのも嫌だな…。


そうだ!!良いことを思いついた!エルミナと許嫁になった記念に何かを贈ろう!


う~ん。何を贈ろうか…。贈り物か…そういえば昔…菜々美が小学生高学年だった頃に言っていた事があったなぁ…。


………………………………・

~回想~


「ねぇお兄ちゃん、今小学校でね?すっごいムーブが起きてるの!そのビッグウェーブなんだけど…大切な人に物を贈りましょうって。」


いや、ムーブとかビッグウェーブとか最近覚えた言葉を使いたいだけじゃないのか?そんな流されやすい菜々美は可愛いな。思わずお兄ちゃんが大きなムーブでビッグウェーブを起こしそうだよ。

…自分でも思っていてなんなんだが意味不明だな。


「それでね。お兄ちゃんにこれ上げる。大事にしてよね」


そういって菜々美は飴を1つ俺にくれた。よし、菜々美コレクションに追加だな。

菜々美コレクションとは…まぁいわゆる…ブラックボックス的なアレなので説明はしない。


「それで俺も菜々美に飴を上げればいいのか?」


確かポケットに飴があったはず。ゴソゴソ。


「そんなの欲しいわけないじゃない」


菜々美に渡そうとポケットから飴を出した次の瞬間、飴は静かにポケットに舞い戻った。おかえり。


「菜々美はお兄ちゃんからアクセサリーが欲しい。出来れば指輪!あんまり知らない関係で指輪っていうのは怖いけど、好きな…いや、気になっている…これも違う。えっと親しくしている人からは身に着けられるアクセサリーが欲しいなって。離れても身近に感じられるかもしれないでしょ?だから指輪!おもちゃのでもいいから指輪がいいの!」


その後、当時中学生だった俺は小遣いを全て使いそこそこの金額で指輪を買ったのだった。

後悔はない。



…………………………………


贈り物は決まった。


週に3回使用可能な請願スキルの3回目。今が使いどころだよね。


請願!女神様。エルミナに贈るアクセサリーが欲しいです。今日が初対面なので指輪じゃなくて…綺麗なロングヘアーに似合いそうな髪飾りかな。


『スキル【請願】を発動します。ユーリは新たにアイテム月の髪飾りを得ました』


よし、成功。呪いとかあったらダメだし一応…鑑定。


アイテム名:月の髪飾り


効果:全状態異常無効、危険察知、女神の加護


あるダンジョンに眠っているレアアイテム。装備者をあらゆる害悪から守る。


概要:この世界に現存する中でエルミナに一番似合う髪飾り。誰の所有物でもないダンジョンの奥底に眠っていた隠しアイテム。



えっと…凄いアクセサリーが来ちゃったみたいです。

スキルは一般スキル限定だったはずだからアイテム系も露店とかで買えるような物かとばかり思っていたんだけど…。


改めてこのスキルはちゃんと考えて使わないとダメだと感じる。

便利なアイテムばかり請願していると肝心な時に僕の力が足りなくなってしまう気がするんだ。


請願は極力アイテム系ではなくスキルを伸ばす為に使おう。それから、この病気で弱った体もスキルやアイテムに負けないように鍛えなおす!今後の計画はまた今度しっかり考えよう。今は…。


「エルミナ、僕から君にプレゼントがあるんだ。出会えた記念、許嫁となった記念として、この月の髪飾りを君に贈りたい。僕だと思って大切に身に付けておいて欲しい。」


エルミナは月の髪飾りを受け取ると大切そうに胸に抱えた後、そのプラチナブロンドの長髪に装着し満面の笑みを浮かべた。妖精がいる。まさしく月の妖精。


「ユーリ様、こんな素敵な物をありがとうございます。肌身離さず大切に使わせて頂きます。1つだけ聞いてもいいでしょうか?こちらは先ほどまで持っていらっしゃいませんでしたよね?もしかして…」


エルミナも気づいたみたいだ。


「うん。僕の請願で受け取ったアクセサリーだよ。エルミナにとっても似合うって事と髪飾りの効果については僕が保障するよ。いろんな危険からエルミナを守ってくれると思う。詳しく説明しようかい?」


エルミナは静かに首を振る。


「なんだか聞いてしまうのが怖い気がするので、このままで大丈夫です。では、ユーリ様そろそろ時間となりましたので名残惜しい事ですが失礼しますね。次に会える日を心待ちにしておりますね」


他の家族とも挨拶を終えるとエルミナは子爵家へと帰っていった。



今日は色んな事があったなぁ。


俺は菜々美を助けて、死んで。神にあって、転生した。

転生した僕は死んでたけど蘇って、スキルをゲットして。

突然許嫁が出来て、僕は少しだけ幸せになった。


目標にも近づけたのだと思う。




…そうだ、目標。ハーレムを作って幸せになるって大きな目標を立てたのだった。


大変だ!エルミナに何にも説明してない。

でもどうやって伝えるんだ?


「僕、エルミナの事が好きだけど、ハーレム目指してるから、これからもお嫁さん増えるよ。」


とんだクズだな。よし、保留。今考えてもしょうがない。

実際にハーレムが作れるのかは分からない。


未来の事は未来の僕にまかせる事にするよ。

今日は疲れたし今日はもう何も考えず休もう。



さぁ明日からはスキルの訓練や勉強で忙しくなるぞ!!



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― 新着の感想 ―
[良い点] こんなに良い許嫁もらったのならハーレムなんて諦めて一途に愛してあげればいいのにって思いましたw [一言] ブクマ・☆5つけさせて頂きました。 ここまでの誤字報告もさせて頂きました。
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