1章ー23
いつもご愛読頂きありがとうございます(*'ω'*)
もう少しだけ先の話になりますが、1章と閑話まで投稿が終わったら2章開始まで少しだけ充填期間を置こうと思います。より良い作品になるように色々とインプットしてきますね(*'ω'*)
「そろそろサツキ姫の隷属魔法を解こうと思うんだ!」
僕の部屋でカティとサツキ姫とを交互に見やりながら伝える。
「ええ、いいと思うわ」「……。」
「あれからもう一週間。請願も今日から使えるようになっていると思う」
そう、あの冒険者ギルドでのイザコザから早くも1週間の時が過ぎていた。
ギルドを去る際、ダリル侯爵は最後に大きな爆弾を投下していった。
僕とコゼット様の婚約だ。
ただこの婚約には僕が強く反対した。
一時は認めざるを得ない状態まで追い込まれたものの「コゼット様が絶体に了承しないだろうから」と僕は必死に侯爵を説得した。
その結果、この話は一時保留とし、侯爵家に持ち帰る事となった。
あれから今日に至るまで連絡は来ていない。
コゼット様はとても美しい方だ。
ピンク色のミディアムヘアーも似合っていた。
性格も僕は嫌われているけれど会談の様子から悪い人ではなさそうだった。
喋り方が特徴的な所も個性的で可愛かった。
本音を言うと僕のタイプの女性ではある。
だけど、僕は結婚する相手には僕同様に幸せになってもらいたい。
貴族のしがらみでの結婚や親に強制される結婚は違うと思っている。
第一、僕はコゼット様には嫌われている。
だから、なんとしてもこの縁談は断るしかなかったんだ…。
「ちょっと、ユーリ君?また考え事?請願試すんじゃないの?」
「そうだね。請願で隷属魔法を今から取得しようと思う。これでサツキ姫は元に戻るかもしれない。今は分からないかもしれないけど、精神が解放されても気をしっかり持つんだよ?」
そう言って僕はサツキ姫の様子を伺う。
「……。」
今まで通り何も話す事様子は見られない。
もうこれ以上、サツキ姫を人形のような状態にしておくのは嫌だ。
精神を解放したらどうなるのかも分からない。でも、このままにはしておけない!
「女神様。僕は『請願』します。彼女を苦しめている戒めを解きたい!だから隷属魔法のスキルを僕に下さい!!」
どこからか声が聞こえる…
『スキル【請願】を発動します。ユーリは新たに隷属魔法スキルを得ました』
よし、隷属魔法を得られた。
なんとなく使い方は分かるんだけど、失敗は出来ない。一応鑑定で調べておく事にした。
【隷属魔法】レベル1
効果:相手を隷属させる事が出来る、また隷属状態を解除する事が出来る。
有効範囲:人間、亜人、獣人族に有効。隷属に応じた者のみ。
同時に隷属可能な人数:1人
概要:他者の奴隷に対しての使用は不可能。所持者死亡の場合はその限りではない。
隷属した物の精神や記憶を縛る事が出来る。尋問するのにバッチリなスキル。
ん?有効範囲の所に隷属に応じた者ってあるんだけど…サツキ姫…何があったんだ?
「ユーリ君、どうしたの?静かになっちゃって」
カティが心配してくれている。こういう所は見た目と違って年上だなって感じるな。
これがギャップ萌えってやつか。
「なんだか失礼な事考えてない?」
「いや何も…。カティに惚れ直しただけだよ。」女の勘、怖い。
さて、隷属魔法を使ってみるか。
もし何かあったらすぐに魔法を掛けなおす必要があるかもしれない。
「じゃあいくよ?隷属魔法発動!サツキ姫の隷属を解き精神を解放する!」
その瞬間。僕が一番恐れていた事が起こった。
「あああああああああああああああ!!!きゃあああああ!!助けて!!お父様!お母さま!!」
これはダメだ。
「隷属魔法発動!サツキを隷属状態にする!」
叫ぶのを止め、再び空虚な瞳に戻ったサツキ姫。
これじゃさっきまでと同じになるだけだな…。
よし、じゃあ…。
「それじゃ隷属状態のまま精神への干渉を下げるよ!まずは記憶を一部封印する。」
辛い記憶を受け入れるにはまだ早いと思う。
サツキ姫には記憶の理解は出来るけれど、記憶を実体験として意識出来ない様に調整した。
その上で意識レベルを元の状態に戻した。
僕たちが会った事のない奴隷に至る前のサツキ姫に…。
「サツキ姫?僕の事は分かるかな?一応、隷属魔法は聞いているはずだから不本意ながら僕が主人って認識になっていると思うんだけど…」
僕はおそるおそる問いかける。正直、僕にも初めての事なので不安でいっぱいだ。
なんだか胸がドキドキするよ。これってもしかして恋…?…案外僕って余裕あるね。
シリアスな雰囲気に中々うまく対応出来ないみたいだよ。
「はい、しっかりわかります。私のご主人様のユーリ様です。今までの事もジッと見ていましたから。私、先ほどまでは心を縛られていましたので、あまり考えたり行動する事が出来ませんでした。それでも見る事だけは出来ておりました。そして今は見た物の事を改めて考えたり感じたり出来ています。」
そうか…。心が縛られていても認識自体ははっきりしていたという事か。
そして、精神支配の解除された今、認識していた記憶を思い出し考える事も出来る…と。
僕、変な事してなかったよね?サツキ姫の前だと大丈夫だと思って気にしてなかったかもしれない。
「改めましてご挨拶させて下さい。私は元ユズリハ国第三王女サツキ・ユズリハと申します。国が滅んだ事は理解しております。先ほど私が取り乱した事も、そして今もなお私をお助け頂いている事も。本当に何度お礼を申し上げたらいいのか分かりません」
「サツキ姫は気にしないでいいんだよ。僕が助けたくて助けたんだ。盗賊に襲われている子供をそのままには出来なっただけだよ。」
この子、まだ9歳だよね?王族だったからという事もあるだろうけど凄く大人びてるというか頭良い子だと思う。
だからこそ、理解力があるからこそ辛かっただろうな…。
あの叫び声は異常だった。察するにサツキ姫の家族は…。
「いえ、これからは恩を返させて頂けるようにお仕えしようと思っております。それから私の名前はサツキとお呼び下さい。ユズリハの名や姫という称号を名乗る事はご、主人様に何らかの危険が及ぶ可能性もございます。」
確かに情報が洩れたらサツキも僕も危険な目にあう可能性は高いなぁ。でも…それで家名を捨てるのは辛くないのかな?サツキにはこれ以上の無理はしてほしくないんだけどなぁ。
「ご主人様、それは大丈夫でございますよ。私の国が滅んだ事はしっかり理解しております。私の家族の事も…。それに私はご主人様にサツキと呼び捨てで呼ばれとうございます」
そう言って、サツキは初めて微笑んでくれた。
うわ、可愛い。今までも可愛いかったけれど、今までは作られた人形のような可愛さだった。
しかし僕に微笑んでくれたサツキはとても可憐で生き生きとしていた。
黒髪な事も起因してかちょっと幼い頃の妹にも似ている気がする。
ちょっと待って。今、僕サツキに質問してなかったよね??
……。サツキ、今さっきスキル使ったでしょ?僕は心の中で念じてみる。
「…ご主人様、申し訳ありません。覗き見るつもりはなかったのですが、中々人を信じる事に自信を持てなくなってしまって…。スキル『読心』を使っておりました。」
まぁサツキの境遇ならしょうがないか。
今はあまり変なこと考えてなかったからセーフだよ。
「その…出会ってからずっとなので…すいません。」
NOーー!?え、出会った時から?それって盗賊に捕まった時から?スキル使えてたの?あ~そういやジッて僕を見てる時があったな…。
「はい。話す事などは出来ませんでしたが、ずっとスキルを使って観察していました。あくまでスキル使用は無意識で、でしたが」
サツキはとても反省しているような表情でこちらを見てくる。
「ははは…いいよ、いいよ。それはまぁしょうがないしね。これからは使用する時は事前に言うようにしてくれると嬉しいかな。」
あぁ終わったよ。たった9歳の子に心を丸裸にされた…恥ずかしい。
何を知られた?変態的な考えも、スキルの事も、転生した事も、そして例のあれさえも知られているかもしれない。
「ご主人様、重ね重ね申し訳ありません。私はおそらく全て存じております。しかし、誰にも打ち明けるつもりはありません。この事は2人だけの秘密にいたしましょう。これで2人は運命共同体ですね!」
おっとまた変な事になってる気がしてきたよ?
なんだか、不穏な気配がする。
「これから宜しくお願いしますねご主人様!」
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