1章ー18
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翌朝になって僕とカティは父さんに連れられて森を挟んだ向かい側にあるダリル侯爵家の領都シュミットに向かう事になった。
僕は現在とっても眠い。
なぜかって?それは言えない。カティと二人だけの秘密だ。
取り敢えず一つだけ言えるとしたらカティは立派なレディだということ。それだけだ。
馬車に揺られる事3時間。
隣の領に入った頃、僕たちの馬車の前方から何やら騒々しい音が聞こえてきた。
そこでは一台の荷馬車が5人の盗賊らしき人間に襲われていた。
すでに荷馬車の持ち主だと思われる立派な服を着た肥えた男は息絶えた状態で荷馬車のそばに倒れている。
そして盗賊たちの一部はすでにその荷馬車に乗り込んでしまっていた。
「くそ!遅かったか…」
僕たちはそれでも加勢しようと近づく。
すると襲われている荷馬車から盗賊の肩に担がれるようにして一人の女の子が連れ出されてきた。
襤褸衣を纏い、首輪をしている。
おそらくあの子は奴隷なのだろう。
と、言う事はこの死んでいる肥えた男は奴隷商か。…つまり犯罪者だな。
この国では、奴隷は所持も販売も禁止されている。
これを破れば貴族であっても死罪は免れない程の重罪だ。
襲われて死んだ事は確かに可哀そうではあるものの因果応報だ。
それにどちらにせよいつかは奴隷の事がバレて死んでいた事だろう。
などと頭の中ではあれこれ考えているが、手を休めているわけではない。僕はすでに1人、父さんは3人の相手を無力化していた。
この盗賊、あまり強い方ではないらしく僕の剣術だけでもあっさりと倒す事が出来ている。
後は、少女奴隷を人質にしている1人だけだ。
「ねぇカティ、あの女の子を助けたいんだ。だからちょっと手伝って欲しいんだけど…。あの女の子に向かって魔法を放ってみてくれないかな?」
僕はカティに火魔法で女の子を狙うように指示をした。
僕の指示にカティは少しだけ動揺したけれど、すぐに何やら納得したような表情を浮かべる。
そして最後に目を吊り上げた。
「それってどういう意味か説明してくれるんだよね?」
「ごめんカティ。お願いだから怒らないで。カティの火の玉は盗賊を驚かせるための陽動に使うつもりなんだ。正直に言えば盗賊の方に放ってくれればそれだけでいい。それで一番当ててほしくない女の子を狙って欲しい。その間に僕が距離を詰めて斬る」
「ユーリ君のいじわる!これからちゃんと練習してノーコンなんて言わせないんようになるんだから!」
僕とカティが言い争っていると相手にされていない事に腹を立てたのか盗賊が叫びだした。
「おいお前ら!子供同士で何をいちゃついてやがる!こっちには人質がいるんだ!早く馬を渡して道を開けろ!この人質を殺すぞ!」
人質殺したら逃げられないじゃん。こいつバカなのかな?
んで、殺さなくても逃げ出せないだろうし…やっぱり盗賊なんてやってる人間はバカなんだろうな。
それにしても…。
「……。」
人質にされた女の子はされるがままだな。全然抵抗するそぶりがない。
感情のこもっていないような瞳でただ成り行きを見ているよう。
少女の空虚な瞳は、その愛らしい容姿と真っすぐに長く伸ばされた絹のよう黒髪。それと相まってまさしく人形のようだった。
なんだか少女の態度に違和感を感じる。全部片付いたら鑑定してみるか。
「そろそろヤルかな。カティ、ノーコンショットを頼む!」
「もう!後で知らないんだからね!!ファイアボール!!」
カティの放った火の玉は当然の事ながら少女に当たる事はなく盗賊の足元に落ちた。
「うぉ、やばかったぜ。あのガキ魔法を使いやがるのか!次も当たらねぇように気をつけねぇと」
そう言った次の瞬間には盗賊は首から血しぶきをあげていた。
「お前に次なんかないよ。盗賊は等しく死罪なんだから。」
ゴブリンを殺した時にも思った事だけど、こちらの世界に来てから生き物を殺傷する事に対する倫理観が変わった気がする。自分や周囲に害を成すものに対しては非常な決断を下す事が出来ると断言できる。
奴隷の少女を抱きかかえ父さんの元に戻る。
「ユーリ、よくやったな。」
「僕だけの力じゃないよ。父さん、それにカティも手伝ってくれたから。カティもありがとうな!」
「ユーリ、覚えてなさいよ!」
カティは未だに怒りが覚めない様子。
ちょっと調子に乗り過ぎたか。
昨晩はいいようにされたから意趣返しのつもりだったんだけど…。
「ねぇ父さん。あの子の様子ちょっとおかしいと思うんだけど、ああいう症状に心当たりとかあるかな?」
助けた奴隷の女の子は未だに反応をみせない。
「心にダメージを負ったのか、それとも精神を縛るスキルでも使われたか…」
ピクリとも動かない表情で一点を見つめたままな少女。このままだと可哀そうだ。
「ちょっと僕が調べてみるよ」
僕は鑑定を使用した。
名前:サツキ・ユズリハ
年齢:9歳
体力 : G
筋力 : G
耐久 : G
敏捷 : F
幸運 : F
スキル
[レア]読心:相手の心を読める能力。信頼しあえる相手とはパスを通じて離れていても心の中で会話をする事が出来る。
[概要]故国ユズリハ国の元第三王女。国が滅びた際に逃げ出す事が出来たが、逃げる道中で奴隷商に捕まってしまった。
現在、スキル隷属魔法により精神を封印されている。
見なかった事にしたい。また厄介事の予感しかしない。
第一、今その厄介事を片付けに向かっている最中じゃないですか!?
なんで厄介事が増えてるんだよ!ポケットを叩くと増える系ですか?
鑑定の結果を伝える。
「ユーリ。その鑑定結果だが、しばらく他人には知らせるな。もしその子が故国ユズリハの姫だとしたら、この先その子は情報源として利用されるだけの人生を歩むことになるかもしれん。」
「情報源?魔族のって事?」
「そうだ。誰も魔族の事を詳しく知らんからな。重要な情報源になりえる彼女は利用される事になる。断言するが良い人生は送れないだろう。」
確かにこんな小さな子が利用されるのは可哀そうだと思う。
「この国の貴族として父さんはそれで大丈夫なの?」
父さんは真剣な目をして答える。
「この国には腐った貴族も存在する。どこかで情報が洩れて幼い子供たちが苦しめられる。そんな姿を俺は目にしたくはない。国に歯向かうつもりはないが、この話を聞かなかった事にするくらいは出来る」
今まで父さんは僕にとって理想の父親だったけど、今日からは更に目指すべき貴族像ともなった。それくらい今日の父さんはカッコよかった。
「わかった。この子の事は内緒にして、うちで匿う事にしようよ!僕、来週になったら請願で隷属魔法を願うよ。彼女の心もそれで解放してみせる!」
ずっとこのままじゃ可哀そうだもんね。請願スキルが使える僕と出会ったのも運命だと思うんだ。
「そうだな。そうしてあげた方がいいだろう。正気に戻ってからの事だがお前が面倒を見てやれよ。うちから独立する時にでも一緒に連れて家を出た方がいいとも思う。どこで他の貴族共が感づくか分からんからな。では、改めて冒険者ギルドへ向かうぞ!」
そこから更に1時間かけて、僕たちはようやく冒険者ギルドのあるダリル侯爵家の領都シュミットにたどり着いた。
「よし!冒険者ギルドに殴り込みに行こう!」「そうね、あたしはファイアボールを力の限り打ちまくってやるわ」
僕とカティはやる気に満ちている!
こういうのは最初が肝心だからね。ガツンとかましてやりますよガツンとね。
「お前達、何を不穏な事を言っているんだ。まずはこの領の主であるダリル侯爵と面通しをしに行くぞ!先触れの手紙を昨日の夜にのうちに出しておいたからな。俺とダリル侯爵は旧知の仲だ。心配せずについて来い」
はじめての上位貴族との対面だ。俺もカティも粗相がないように気を付けないとな…。
こういう言葉を紡ぐと絶対に回収される物がある。それがフラグだ。
僕は気が付いていなかったんだ。自分がフラグを建造してしまった事を…。
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