1章ー15
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僕の体はピクリとも動かなかった。
まず妹の事を考えた。それからこちらの家族の事、エルミナの事、今日の出来事、赤髪の少女の事。
「これが走馬灯ってやつかな。案外、色々考える時間があるもんだね。」
ゴブリンの醜悪な顔が、汚くて鋭い牙が僕にせまってくる。
そして…僕の横っ面に盛大に火の玉がぶつかった。しかも連続で3発も!
「うわっ、熱っ、痛っ!!」
僕は火の玉がぶつかった衝撃で少しだけ吹っ飛んでしまう。
ただ吹っ飛んだおかげでゴブリンとの距離を広げる事が出来ていた。
「あの、ごめんなさい!ゴブリンを狙ったのに間違えて当てちゃった…」
火の玉を放ったのは隠れていたはずの赤髪の少女だった。
とても気まずそうに謝ってきた。これだから可愛い子はずるいんだよ。
謝ったら許されると思ってる?
火の玉を顔にぶつけられたんだよ?普通は許されないよ?
…まぁ許すんだけど。
もし火の玉放ったのが汚いおっさんだったら問答無用で袈裟斬りもんだよ。
「あたしも助けられてばかりじゃ嫌だったの。それに危ないのかなって思って…火の玉をぶつけちゃって大丈夫?」
顔に受けたダメージは会話する間に回復していた。
「大丈夫だよ。それから火の玉はもう勘弁だけど結果的には助かったよ。ありがとう」
そう言って目線をゴブリンに移す。
ゴブリンは先ほどの僕への攻撃を最後に息絶えていた。
「僕はユーリと言うんだ。ユーリと気軽に呼んでほしい。それから安心して、ゴブリンはもう死んでるよ。ダメかと思ったけどなんとかなってよかった。」
安心して力が抜けたせいか僕はストンと座り込んでしまう。
情けないけど暫く立ち上がれそうにない。
そんな僕の傍まで寄ってきた赤髪の少女は突然僕をぎゅっと抱きしめる。
「こんなになってまで…本当に助かったわ。あたしはカティ。カティ・ローズよ。あたしの事はカティと呼んでちょうだい。あなたには何度お礼を言っても言い足りない…でも、本当にありがとう。」
これはやばい!カティは胸部装甲の化け物だ。現在、僕の顔はフカフカのフヨフヨに包まれている。
うぅ僕は立てないんだけど、ボクハ、タッテシマイソウ。
…まだ10歳の体でよかったよ。こんな所で僕の絶倫スキルが火を噴く所だった。
「あっごめんなさい!つい、はしたない事をしてしまったわ。」
残念なことにカティはそう言って抱きしめていた腕を解いて僕から離れてしまった。
もったいない。僕はもっと抱きしめていて欲しかった。
服の上からじゃ分からなかったけど、体格の割にとても立派な物をお持ちだった、とてもフヨフヨしていた。
僕はフヨフヨした物への未練を断ち切る為にも、ここまでの経緯についてカティから話を聞く事にした。
「カティはどうして森に来たの?カティって僕と同じ10歳くらいだよね?」
するとカティは不満気な表情を一瞬浮かべた後、諦めたような表情で語る。
「あたしは15歳よ。もう成人もしてるわ。森に入ったのは冒険者になったからよ。あたしは昨日冒険者登録をした所だったの。」
驚きだ。絶対に同じくらいだと思っていた。むしろ年下とも。
おそらく身長は140cmくらいだろう。顔つきも幼く見える。ただ胸部装甲に関してだけは納得だった。
「僕は10歳だよ。今日は森で魔物の討伐訓練をしていたんだ。それで、昨日登録したんばかりの冒険者がなんで森に?大きなお世話だったら悪いけどカティにはまだ早かったと思うんだ。」
怒ったり悲しんだり表情を目まぐるしく変えながらカティは僕の問いに答えた。
「結果的に言えば、あの途中で逃げた冒険者のパーティに騙されたのよ。」
「騙されたってどういうこと?」
「あたしが登録をした後、冒険者協会からあのパーティに入るように紹介されたのよ。一人で戦えるようになるまで手伝ってもらえる制度があるって…。それで今日初めて会う事になったんだけど、会うなり何も教えてもらえずに荷物持ち扱いでいきなり森まで連れてこられたの。」
「うわっそれはひどいね。」
「それに森に来てからも碌に指導をしてもらえなくて…教えてって言ったら怒られるし。」
悔しそうに唇をかみしめるカティ。
「暫くしたら周囲をゴブリンに囲まれていて私は突き飛ばされたの。」
あれは見ていて腹立たしかった。あの冒険者はダメだ。ギルティーだね。
「でも、あなたが来てくれた。あたしね、もうだめだ。死ぬんだって思ったんだ。柄にもなく願ったんだ『助けて下さい女神様、私に出来る事ならなんでもします』って。そしたらヒーローが現れたの。それが君。」
ビシッ!!と僕を指さすカティ。
「え?僕がヒーロー?ま、まぁ死に物狂いでカティを助けたんだしヒーローって言われるのも悪くないかな。お礼は体でいいよ」
疲れで少し気分がハイな僕は軽くブラックジョークをかましてみる。
15歳ならこれくらいのブラックジョーク華麗に返してくれるさ。
カティは明るい子みたいだからね。こういう感じで付き合ってい…
「分かったわ。末永くよろしくね。将来結婚する日が楽しみね!」
…けたらぁぁぁぁっつ!?
「え?」
「ん?違うの?」
「……ハハ、違うわけないじゃないか。カティをお嫁さんにするよ」
何だか今のカティの「ん?」がむっちゃ怖かった。無理、断ったり出来ない。
寒気がしたもん。一瞬、やられるって本気で思ったくらいだった。
「お嫁さんかぁ~楽しみだなぁ。ねぇあたしの方が年上だから、これからはユーリ君って呼ぶね。」
そう言って朗らかに笑うカティは可愛くて綺麗だった。
まぁぶっちゃけていうと僕も結構惹かれている(特に胸部装甲はヤヴァイ)。
ただ…問題はまたもやハーレムの事は伝えられそうにない事だ。
今は無理だ。今言ったらきっと殺られる。
大丈夫、まだエルミナとの再会まで2年近くあるんだ。それまでにちゃんと話せば大丈夫さ。
森もすっかり暗くなってしまった。これ以上、ここに居続けるのは危険だ。
「そろそろ森を出ようかカティ。僕も歩ける程度には体力も戻ったよ。カティの家族も心配するだろうけど今日はうちの屋敷に連れていくよ」
こんな事があった後、しかも暗くなってしまった事もあって一人には出来ない。
それに逃げた横柄な冒険者も気になる。カティや他の仲間をほって逃げるような奴だ、何かしでかす気がする。
「もう成人してるんだから大丈夫だよ!お泊りかぁユーリも手が早いねぇ。しかも屋敷なんて見栄張っちゃって子供っぽい所もあるんだね?」
あぁそうか僕はユーリとしてしか自己紹介していなかった。カティ驚くだろうな…。
「あの…僕はね…」「おーーーーい。ユーリどこにいるんだーー?」
あ…父さんだ。
そういえば日が暮れる前に森の入り口に迎えに来てくれるって言ってたじゃないか。これはかなり怒られるな。
「誰か呼んでるみたいよ?」
「あれは父さんだよ。日が暮れるまでに戻る約束だったんだ。おーーい父さん!こっちだよ!」
少しすると父さんがやって来た。
「ユーリ、まだこんな所にいたのか。日が暮れるまでと約束をしていたはずだぞ。お前大丈夫なのか!?血まみれじゃないか!」
「ごめん父さん。ほとんど返り血だから大丈夫だよ。たくさんのゴブリンが出ちゃって帰るに帰れなかったんだ…」
僕はそう言って先に広がる凄惨な現場ゴブリンっだった物達に視線を向けた。
「ゴブリン程度に手こずるとは…ん?これは、何匹いたんだ?これでよく無事だったな。」
父さんとした逃げるっていう約束も破っちゃったから気まずいんだよなぁ。
「確か21匹でした。冒険者達が襲われている現場に居合わせてしまって、父さんとの約束は破りました。ごめんなさい」
こういう時は素直に謝るのが一番だと思う。
「あのな、ユーリ、俺は…」
「ちょっと待って下さい!ユーリ君は何も悪くないんです。ユーリ君はあたし達を助けようとしてくれたんです。約束とかよく分からないけどユーリ君を許してあげて下さい。」
僕を守ろうとカティが父さんの声を遮るようにして声をあげてくれた。
「そんなに心配しなくてもいいよお嬢さん。人を助けるために俺との約束を破ってでも行動したという事をむしろ褒めてやりたいくらいだよ。ただ親としては心配しているのは変わらないんだけどな」
カティのおかげかな?叱られる事はないみたいだ。
「それで助けられたのは君だけなのかな?」
父さんは周りに広がるゴブリンの死体、それに何体か混じっている冒険者の死体を見ている。
「はい。生き残ったのはあたしだけ…いえ、もう一人途中で逃げた冒険者がいるわ」
逃げた冒険者について、後で父さんに相談しよう。
「父さん、詳しい話は後にして、そろそろ森から出ようよ」
「ああ、そうだったな。体を動かすのは辛いかもしれないが、森を出るまでは頑張ってくれよ?」
それからは父さんに率いられる形で森を出た。途中でゴブリンが何体かあらわれたけど父さんが真っ二つにしていた。
僕ももっと鍛えないと。何が出てきても苦戦しないように、大切な人をしっかり守り切れるように強くなってみせる。
森から出た父さんは警戒を解いてカティに語り掛けた。
「そういやお嬢さんの事は聞いてなかったね。教えてくれるかな?」
そうだ自己紹介まだだったね。でもね僕なんだか嫌な予感がするんだよ。
「あたしはカティ・ローズよ。こんな見た目だけど年齢は15歳だからもう成人しているわ。それからさっきユーリとは結婚の約束をしたので婚約者とでもいうのかしら。よろしくお願いしますお義父様。」
……ほらね?
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