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1章ー13

ブクマ&評価下さったみなさんありがとうございます!

毎日更新頑張ります!

父さんは嫌な予感がビンビンするようなフラグを盛大に建立した後、気にする様子もなく屋敷に帰っていった。


大丈夫。ここは異世界だ。フラグ回収なんてあるわけがない。


「……。」


森は静かなままだった。やっぱり気にしすぎだったようだ。


魔物が出る森で一人になるという事に自分でも気が付かない間に気が立っていたのかもしれない。



「おいおいおい。本当に一人だよ。考えてたらどんどん怖くなってきたよ…。これは気をつけて進まないと。合言葉は『いのちだいじに』だ。」


おふざけ抜きにして真面目に森を探索しなければならない。



「まったく父さんもよく10歳の子供を森に置き去りに出来るもんだ。」


自分自身も一人での探索を希望していたくらいだったのに責任転嫁な事を言っているとは理解している。


ただ言わせてもらうと普通は10歳の息子を森に放置しないよね?こんなの前世なら虐待だよ?事案発生だよ?タウンメール回ってきちゃうよ?


「あぁそういや僕ってあまり普通じゃないな。普通の10歳はそもそも魔物狩りに森には来ないだろうしな」


まぁそれだけ信用してもらっているって事だと思う事にする。




僕は森の中をズンズンと探索していく。 


スライム、スライム、ゴブリン、スライム、ゴブリン。


単調な戦いがずっと続いているせいで、正直ちょっと飽きてきたかもしれない。


「結構倒したはずなんだけど、時間にはまだまだ余裕があるな。」



ゴブリンの討伐証明に必要な部位は右耳なので、僕はこれまでに倒したゴブリンからは右耳だけを切り取っていた。


このゴブリンという魔物は、魔物の中で唯一素材となるものが存在しない。


肉は臭くて食べられないし爪も大して硬くもないし、薬の材料にもならない。


強いていうならたまに持っている武器くらいかな?


それも基本的には手入れもされていない拾い物である為、大体の物がボロボロだ。


誰が好き好んで錆びだらけの剣や穂先のなくなった槍を欲しがるというんだ。


むしろ穂先のない槍なんて、もはやただの棒になっているではないか。



…と、言う事でゴブリンは本来狙って狩る程の価値はない。




ただ今の僕にはそのゴブリンと戦う意味がある。それは経験だ。

いくら一人で素振りをしても、父さん相手に剣術を学んでも戦闘経験がなければ意味などなさない。


討伐証明の耳くらいしか荷物にならないゴブリンだが数を狩るとさすがに重量が問題になってくる。

このままでは戦いに支障が出そうだ。そろそろ対処が必要だよね。



改めて確認すると僕のリュックの中は現在ゴブリンの右耳とスライムのコア、スライムゼりーでいっぱいになっている。



僕は森で訓練をすると聞いた時から異常が起きた時に対処出来るように今週分の請願を使わずに取ってある。


「ここが使い所だよね!」


あまり使い渋っていてもしょうがない。使えるものはどんどん使っていかないとね。


今はとにかく早くこの荷物をどうにかしたい。




僕とエルミナが会った日、帰り際にエルミナの為を想って請願した月の髪飾り。


あの時に僕は「エルミナに似合う髪飾りが欲しい」と願っただけだった。


具体的に月の髪飾りが欲しいと願ったわけではない。

そもそも月の髪飾りなんて物知らなかったしね。




そこで僕は今日までに一つ仮説を立ててみた。

仮説といっても検証もちゃんとしているので僕的には角度の高い仮説だと自負している。




スキルを得るにはそのスキルの存在を認識して、そのスキル自体を指定して求めなければならない。


「何か強いスキルが欲しい」とか「とにかく斬るスキルが欲しい」という請願の仕方ではスキルは得られない。

これまでスキルを請願してきた経験を踏まえて考えるとおそらく間違いないと思う。



次に装備、アクセサリー、アイテムの場合。


こちらは僕が欲しい物を想像すると僕の理想に一番近い物を得られると考えている。


武器やアイテムなどを単体で指名するのは難しい。と言うかほとんど無理だ。



この世界には名前の同じアイテムがたくさんある。


じゃあ請願した場合にその中の「どれ」を指定したのかが分からないのだ。


よって僕の予想が間違っていなければ、僕の願いをスキルが補完して最適な物を選んでくれるようにスキルが設計されているのだと思う。


だって女神様が僕の為だけにくれたスキルだからね。それくらいチートでむしろ普通だよ。

ご都合主義ウェルカムだよ。




「あれこれ頭の中で考えるより、とりあえず試してみたら分かる事だよね。」


とにかく荷物が邪魔なんだから、それを解消する道具が欲しい。


それもとびっきりの効果がいい物がいいな。


「じゃあスキル『請願』!僕が願うのは荷物の負担を減らす最上級の道具だ!」



『スキル【請願】を発動します。ユーリは新たにアイテム、アイテムボックスを得ました』



「おぉ!来ないかな?ってちょっと思ってたけど願い通りアイテムボックスだよ!やった。」



思わずガッツポーズ。これは期待できる!!さっそく鑑定鑑定♪




アイテム名:アイテムボックス(袋)


効果:生き物以外の物であれば何でも収納する事が出来る。

アイテムボックス内では時間の経過はしない。


容量:無制限


登録者:ユーリ・フォン・コーリング


概要:使用者登録あり。使用者以外には使用する事が出来ない。女神サリアが制作したものの異世界への転生時に渡し忘れていた。女神サリアは現在、ユーリの手元に無事に渡ってほっとしている。





ちょぉぉっっと待って!概要がふざけてるんだよね?サリア様の忘れ物なの?


え?本来貰えるはずだった?じゃあ、請願の使い損じゃないか…。


これじゃあ、ありがたいはずなのに何だか納得出来ないなぁ。



ただこれでほぼ確定かな?僕の推察通り、僕の願いをスキル自体が補完してくれるみたいだね。




「思うところは少々あるけど、もう使ってしまった物はしょうがないからね。とにかく武器以外の荷物は全てアイテムボックスに入れておこう」


ふぅ大分すっきりした!普通の冒険者だと荷物の持ち運びが大変だろうな。


やっぱりアイテムボックスは今後の冒険者活動にとって凄いアドバンテージになりそうだな。




身軽になった僕は、その後もゴブリンとスライムを狩りながら訓練を続けた。



いつの頃からだろうか?ゴブリンの腕を両断出来るようになっている。


首の骨は固く、いまだに首を刎ねる事は出来ていないが確実に進歩している。


「おそらく何かのスキルがレベルアップしたんだろうな。屋敷に帰ったら確認してみようっと」




もう何匹目かも分からない程のゴブリンを狩った頃になって僕はその事にふと気づいた。


「あれ?そういえば魔物を鑑定した時に魔物もスキルを持っていたけど、あのスキルってスキル辞典には載ってない物だよね?僕が請願したら魔物のスキルでも得られるのかな?」


気になったら調べないと気が済まないのが母さんから受け継いだ僕の性分だ。


「無理だった時は、それが無理だという事を知れるってことだし損はない。試しにやってみよう!!」




……後から考えると僕はこの時少しだけおかしかったんだと思う。


初めての森での魔物討伐に興奮していたんだと思う。


いつもはもう少し思慮深いはずなんだ。


でも、この時はあまりちゃんと考えていなかった。


だから、あんな事になってしまった。




結果的に言えば試みは成功した。


僕は『請願』を使って魔物が持っているスキルでさえ得られるという事が分かったんだ。


いや、得てしまったんだ。そのスキル…



『絶倫』を。




一つ言い訳をさせて頂くとしたら別に絶倫を狙ってたわけじゃない。


ただ、あの時の僕はおかしかったんだ。正気じゃなかった。



「スライムのスキルである『吸収』は、もしパッシブスキルだったらむちゃくちゃ怖いよね…?周りの人を無差別に吸収したりして…。ゴブリンのスキル『絶倫』なら大丈夫だ!!(なんで?)たとえ絶倫スキルを得たとしても僕はしっかりと使いこなしてみせる!(どうやって?)」


今の僕ならちゃんと判断できる。でも、あの時はそれが出来なかったんだ。



ちなみに絶倫スキルは残念ながらパッシブだった…。






そろそろ反省タイムは終了!ここは敵地!森の中だ。集中していこう!!


「よしとにかく物事はプラスに考えよう。魔物のスキルは請願出来る。これからは気軽に変なスキルは取らない。絶倫スキルはきっとハーレムの役に立つ。むしろ僕には必要なスキルだったんだ。」


そう思う事にしよう!そう自分を叱咤している時だった。




「キャアーーーー」

「うわーーーー」

「たすけっ…」




僕が森に入ってきたのとは逆の方向、森の奥側から幾人かの叫び声が聞こえた。


「はぁフラグか…父さんめ、恨むぞ!」



そう言うと同時に僕は森の奥に駆け出したのだった。


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