1章ー9
エルミナ視点2になります。エルミナ視点は今回までです(^^♪
私は…と言いますかこの国、世界の人族は全員唯一神サリア様を信徒です。
私もよく教会のお祈りにいくくらいにはサリア様を敬愛してきました。
…しかし私は、最近になって女神様は残酷な神様だと思うようになりました。
私は子爵家の末の子として生まれました。
しかし子爵家からは期待のされない娘と育ってきました。
特に女神様から授かったスキルには負い目を強く感じて生きてきたのです。
そんな私でしたが彼との出会い(一方的ではありますが)を経て私は変わる事が出来ました。
私は生まれてからの10年間の中でこの時程、女神様に感謝した事は今までありませんでした。
俗な事かもしれませんが、礼拝へ通う回数も増えたかと思います。
しかし、そんな私を失意のどん底に落とすような出来事が起こりました。
私に変わるきっかけをくれた彼、ユーリ様が重い病を患ってしまわれたのです。
最初の頃は病なんてすぐに治るだろうと、直接会える日が少し遅くなってしまうのが嫌だな等と自分勝手に思っていました。
そして一月程経ったある日の事です。
私は辛い現実を目の当たりにする事になったのです。
その日、コーリング伯爵家から一通の手紙が届きました。
…そこにはこう記してありました。
“貴家の次女エスリナ譲と我がコーリング伯爵家3男ユーリとの許嫁関係を解消して頂きたい。ユーリの重い病は現状治る見込みが薄い、領内一の医師に診せたのだが「今まで見た事もない病で手の施しようがない。これではまるで呪いのようだ」と匙を投げられてしまった。ユーリとの事は忘れて新しい許嫁を探して欲しい”
私は信じません。信じたくはありませんでした。
私は必死に何かのいたずらだと思いたかったのです。
しかし、その手紙にはしっかりと伯爵家の印がしてあります。
ですから…信じないわけにはいきません。
コーリング伯爵様はお優しいのでしょう。きっと私の事を考えてこのような提案をされたのかと思います。
しかし私はコーリング伯爵様の提案を拒絶します。
ユーリ様と出会ってからユーリ様のお傍に寄るにふさわしくなろうと以前より明るく社交的になりました。
ユーリ様に良く思って頂けるようにより美しい自分であろうと努力をしてきました。
しかし子爵家の我が家族達は、そんな私に辛い選択を迫ってきます。
ユーリ様との許嫁を解消し、これ幸いと子爵家にとってより良い他家に嫁がせようというのです。
しかし私は決してユーリ様との許嫁は解消しません。
私はユーリ様以外との許嫁は拒絶します。
頑なに首を縦に振らない私に、父母が無理やり見合いをさせようとしてくる事がありました。
私は再び部屋から出てこなくなっていきました。
暫くして、しびれをきらした様子の父母に私から1つの提案をしました。
「ユーリ様がお亡くなりにならない限り私はユーリ様の許嫁で居続けさせて下さい。しかし、もしユーリ様にご不幸がおありであれば私は家の意向に今後逆らいません。」
父母はこれを受け入れました。
言葉だけではなく貴族として正式に書面での契約もかわしました。
「どうせ長生きは出来ない。少しの辛抱だ。せっかく美しくなったんだ、家の役に立て。」
父母の顔はそう語っています。
確かに貴族としては家の意向に従うのが当然でなのでしょう。
しかし、私は信じています。きっとユーリ様は…。
どうやら私の願いは叶ったようです。
女神様はやっぱりお優しい方だったんですね。
正直びっくりしました。
信じてはいましたが、もう今日がお別れの日という事だったので本心では半ば諦めてしまっていたのかもしれません。
私も想いもまだまだですね。
ついにユーリ様と正式に許嫁になる事が出来ました。
これは夢なのでしょうか?心が躍るようです!
あぁいけません。思わず涙が溢れてきます。
私はユーリ様の許嫁♪ユーリ様は私の許嫁♪
暫く何度も心の中で繰り返しました。
改めて考える余裕が出来てきましたが、奇跡ですか…ユーリ様は女神サリア様に助けられたんですよね?
しかも夢の中とはいえお会いしたなんて凄いです!
普通ならこんな話信じられません。ほら吹きだと軽蔑するでしょう。
でも私は信じます!
だって許嫁のユーリ様のおっしゃった事ですから♪
女神様に助けて頂いたなんてまるでおとぎ話みたいです。
この国に昔からあるおとぎ話。
魔神の呪いにかかった主人公を女神様が祝福により蘇らせるお話。
そういば私も好きだったなぁ。
今日は驚いてばっかりです。
今度はユーリ様のスキルを教えて頂けました。
ダブルスキルかぁ凄いなぁ~と思っていたのも束の間、請願スキルって何なのですか?
ユーリ様、それは女神様に祝福されすぎですよ。
もう愛されていると言っても過言ではないでしょう。
いえ、ユーリ様の事は私の方が愛していますよ。それだけは絶対に譲れません。
でも、そうですね…ユーリ様を一人占めしようとか思っているわけじゃないんです。
ユーリ様は素敵な男性です。
この国は一夫多妻が認められている事ですし、優秀なスキルを持つ者からは優秀なスキルを持つ子が生まれやすいという話もよく聞きます。
ただ、私は誰よりも一番ユーリ様を愛していると主張していくつもりです。
正妻狙いですね。許嫁ですから当然です。
愛されもしたいけれどそれはユーリ様のお気持ち次第。
私には自由にできないし束縛するつもりもありません。
ただ重ねて言わせて頂くとユーリ様を愛する気持ちは誰に憚ることなく一番でいるつもりです。
あぁ最悪です。
一番恐れていた事が起こりました…。
私のスキルの事を質問されました。どうしましょう…。
小さい声で言って紛らわせ…られませんでした。
あぁせっかく許嫁になれたというのに私のスキルを聞いて呆れられたらどうしましょう。
知られたくない!!
でも、もしかしてこの方なら…。
ユーリ様になら伝えても大丈夫なのかな…?
大丈夫でした。全然大丈夫でした。さすが私の愛する人です♪
本当によかったです。ホッとしたらまた泣けてきました。
…しかしダメですね私って。
私はユーリ様の反応に舞い上がっていました。
私はせっかく褒めて頂いたスキルを役立てようと無理をしてしまったのです。
その結果、小火を起こすという失敗をしてしまいました。
すると私の失敗を打ち消すようにユーリ様は『請願』を…そして水魔法を使われたのです。
これがスキル『請願』の力なのですね…。
おそらく…いえ必ずユーリ様は今後とても大きな注目を浴びる存在になるのだと思います。
そんなユーリ様のお傍に居られるように私も自分なりの方法で頑張っていきますね。
暫くすると帰宅の時間がやってきました。
楽しい時間が過ぎるのはアッという間です。
本当は帰りたくなんかありません。
ずっとおそばで暮らしたい。
しかし、わがままな所をユーリ様に見せるのも憚られます。
去り際にユーリ様からとても綺麗な月の髪飾りを頂きました。
月の髪飾り。これは私の宝物です。
私は帰りの馬車からふと空を見上げました。
その髪飾りと同じように夜空には月がとても綺麗でした。
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