九品目:ひじきと和豆の煮物 、竹輪の磯辺揚げ、高野豆腐の天ぷら
最近はアニメーターがアニメーター自身の画力でオリジナリティを入れる作画が出来なくなった、とかつてアニメーターさんが何かアニメの雑誌で言っていたのを読んだことがある。それは原作重視で、その通りでないとファンが納得しないようになったからだと。
わたしはオリジナリティを入れても、それが超美麗、神絵ならば許されると思った。問題はあまりにも原作の絵を崩壊させた“作画崩壊”がオリジナリティを許さないのだと思う。
それよりも昨今の問題は原作を無視したり、崩壊させたアニメのストーリーの方も問題だと思う。ストーリーを崩壊させて炎上した作品の教訓を何故活かさないのだろうか?
シナリオを書いている人や監督さんは原作を本当に読んでいるのだろうか?
読んでいるなら、何故重要なシーンや人物をなかったことにするのだろう。重要なシーンを描かず、オリジナル要素で時間を浪費するのだろうか?
不思議でならない。一応シナリオや構成などを考えて、出来るのだから国語は得意の筈だ。
もし、重要なシーンを理解出来ていないとしたら、国語のテストなどである、作者が何を描きたかったのか、伝えたいのかという問題が得意ではなかったのかと思う。
ちなみに、わたしは得意ではなかった。だってそんなの作者しかわからないし、締め切りに追われて書いたかもしれない。
締め切りに追われて書いたのなら、作者の気持ちは負の感情にまみれていたのかも、そんな感情を数文字で表せられるか、とかつての恩師セナちゃんに言ったことがある。
わたしは作者の気持ちを答えろと言われたからあらゆるパターンを考えて答えを出そうとした。しかし、あえて空気を読んで書かなかったのだ。わたしは余計な詮索をしない、口に出さない、見ない、聞かない、無かったことに出来て、空気の読める日本人だ。誉めて欲しい。
胸を張ってセナちゃんに言うと持っていた扇子でピシリとやられた。体罰ではない。ツッコミだ。
さて、わたしが何故このようなことを言っているのかというと、現在、録り貯めしていたわたしのアニメBDを紗羅が観ながら原作と違うと呟いて、だんだん飽きて、ながら観を始めてしまったからだ。いや、すでに意識はスマホに行っているかもしれない。
原作のアニメ化による期待値とPVによる期待値、OP,ED主題歌が良く、いや、神かもしれない。その期待値。しかし、いざ本編が始まると高く積み上げられた期待値は数秒で崩壊した。さながらバベルの塔が如く。
だから教えてあげたのだ「PV、OP,EDが本編なんだよ」ってな。そう、映画でも予告が一番面白く神掛かっているということは多々ある。あれと同じだ。
アニメが原作崩壊させたせいで、原作や声優さんの声も批判されているのは悲しい。
わたしは読みやすくて原作は面白いと思うし、声もあっていると思う。あと演技も。
いわゆる萌え声で萌え萌えキュンな演技がヲタク男子は好きなのかもしれない。
「お姉ちゃん、やっぱり私も一緒につくるよ。私は何をすれば良いの?」
とうとうアニメを観るのを止めた紗羅がパタパタとキッチンに入ってきた。
「高野豆腐で天ぷらを作るんだよ」
「高野豆腐の天ぷら?」
「あ~、こっちに引っ越してから初めてだっけ?」
「うん。初めて食べるよ」
「お出汁を染み込ませたふわふわの高野豆腐。外はサクサクの衣。揚げる前にお出汁を切るんだけど、味が十分に染み込んでいるから噛めば口の中でお出汁の仄かな甘さが広がって美味しいんだよ」
「そうなの? 楽しみ!」
「じゃあ、まずは味の決め手となるお出汁から」
市販の白だし30cc、砂糖大さじ1、水240cc。薄口醤油と生姜を少々、これは味の好みによる。これを煮てて高野豆腐を入れる。
「水で……戻さなくて良いの」
カチカチと拍子木のようにしている紗羅が尋ねてきた。
「うん、戻さなくていいよ。煮立ったらそのまま入れちゃって」
しばらくして――
「じゃあ入れるね」
煮立ったのだろう。紗羅が高野豆腐を二枚投入した。
「弱火にして10分ほど煮て、冷ましたら汁気を軽く絞って、三角に切って」
わたしは高野豆腐を手で軽く挟むようなジェスチャーをする。絞ってと言っても雑巾絞りでは無いことをしめすためだ。
「うん」
わたしは紗羅が高野豆腐を煮立ている間に、天ぷらの衣液をつくる。
天ぷら粉を25g、水40ccを玉にならないようにまーぜまぜ。
――さてさて、お次は、と。
ひじき(乾燥)10g。大豆の水煮、きんとき豆をそれぞれ25g。にんじん、こんにゃくを50g。水200ml、油揚げ1枚、にんじん50g、サラダ油大さじ1、
白だし200ml、砂糖大さじ1、みりん大さじ1、しょうゆ大さじ1・1/2を用意する。
わたしが作るのは、ひじきと和豆の煮物だ。
市販のそのまま使える大豆の水煮だから、豆を煮なくて済む。ただ、ひじきは水を替えながら砂を洗い落とす必要がある。これを5~15分間水につけて戻す。この間に高野豆腐も出来上がり、冷ます時間にもなるはずだ。
戻したひじきをざるにあげて水気を切る。
生のひじきを使う場合も同じように洗って砂を落とさなければならない。
また、ひじきが長い時は約5cm長さに切らなければ、戻ったひじきは約10倍のボリュームになるからね。
「お姉ちゃん、高野豆腐冷ますね」
「お願いね。冷めたら――」
「軽く水気を切る。解ってるよ。油が跳ねて大変だもん、お姉ちゃんが!」
「じゃあ、紗羅はこっち作る?」
「うん」
「じゃあ、油揚げを熱湯に入れて」
すぐに沸騰する湯沸かし器で沸かしていたお湯を使う。
「裏表を返しながらしんなりするくらいまで湯通ししたら、ペーパータオルを敷いたバットにあげて水気を切ってね」
「うん。でも、切る、斬る、Killって戦場だね。無双だね。俺ツエーなの? しちゃうの?」
「いや、なんか、それ途中から言葉が不穏になってるからね」
紗羅、なんて恐ろしい娘。
「まぁ、冗談はさて置き、油揚げの表面の油を落とすと味が染み込みやすくなるのよ。だから、湯通しは必ず必要なんだよ」
「出来たよ」
「じゃあ、油揚げは縦半分に切って細切りにして」
「これで良い?」
「上出来。その調子で、にんじんは4mm幅の細切りに」
なんだろう。にんじんになると少したどたどしい包丁捌きになって、とてつもなく慎重になっている。肩に力が入りすぎだ。少しハラハラしてしまうけれど、任せても大丈夫だろう。大丈夫だよね?
紗羅がにんじんをKill――じゃない。切っている間に鍋にサラダ油を入れ熱つを入れる。
「で、出来たよ」
「あ、ありがとう」
こちらも何故か緊張した返答になってしまった。
「それじゃあ、にんじん、ひじきの順に加えて、軽く油がからむまで炒めて。にんじんを先に炒めておくことで火の通りが早くなるし、ひじきを炒めると水分が飛んで歯ごたえが残っておいしくなるんだよ」
「このくらい?」
「オーキードーキー! 大豆を入れて、油揚げとだし汁を加えて煮立ったら、砂糖、みりん、しょうゆを加えて汁気が少なくなるまで中火で煮詰めて、中火で煮ながら混ぜて、鍋の底が見えるようになれば出来上がりだよ。粗熱を取ったら小鉢に盛り付けてね」
「うん、任せてお姉ちゃん」
それじゃあ、わたしは高野豆腐の天ぷらと竹輪の磯辺揚げを作りますか!
180C°に油を熱して、水気を切った高野豆腐を三角に切って、4つにする。三角高野豆腐を天ぷら液に絡めて、一分ほど揚げる。
パチパチ、カラカラ。一分ほどたち、薄~いキツネ色……。クリーム色、アイボリー、象牙色、何でも良いけれど、そんな色になったから、油から衣が剥がれないように引き上げる。
油切りに置く。
わたしが取り出したのは焼き竹輪だ。
「あ、竹輪の磯辺揚げだ! テンさんのお弁当に入ってたやつだ!」
紗羅が食い付いた。確かテンさんとは、紗羅の親友の天道 美智瑠ちゃんのことだ。天道さんだからテンさん。ミッチェルじゃあないんだね。
「美味しいんだよ。これも家で作るのは初めてだったね」
「うん。冷凍食品のお弁当サイズの小さいのは見たことがあるけどね」
「食べたかったの?」
「うーん。わかんない」
「あんまり、自分で作れたりするのは買わないからなぁ。でも、磯辺揚げって、練りものの具材に青海苔を巻いて揚げた天ぷらのことをいうんだよ。それで見ての通り、今から作るのは、お姉ちゃんの中での磯辺揚げの代表格でもある竹輪の磯辺揚げだよ」
天ぷら液に青のりを入れて混ぜ、焼き竹輪を2本、縦に切ってから5cmの大きさに切って液に絡める。
「えっと、これだけ?」
「そう、それだけ」
わたしの伝えた説明に拍子抜けをしている。
「もっと難しいのかと思ってた」
「魚介類の天ぷらなら面倒だけどね」
天ぷらもそうだけれど、フライも面倒だ。例えば鯵のフライ。鯵の開きを買ってきても、頭をチョンパ(※「首を切る」「はねる」の意)して、骨を取り除いて―― と、まあまあ面倒くさいのだ。そして鯵の開きの姿と目を見てフライを作る気が萎えたという経験がある。その時のわたしは魚売り場から戦略的撤退、後にフライなどを売っているコーナーで鯵のフライを買ったのだ。
出来るだけ手軽にスボラに作りたいわたしには、エビや貝、捌かなければならない魚の料理は敬遠しがちになってしまう。
天ぷら液に絡めた焼き竹輪を油へと入れ、二分揚げる。激しい音がパチパチと、そしてカラカラという音に変わる。お弁当に使う場合は焦げないように気をつけて、もう少ししっかり揚げる。
実質、竹輪が二本だけだからあっという間に揚げ終わり、油を切る。
高野豆腐を煮ないといけないから、多少は手間でも簡単に出来るのが良い。
高野豆腐の天ぷらと竹輪の磯辺揚げを、お皿に盛り付けて出来上がりだ。
今回はここまで。続きはまた今度。まあお会いしましょう。
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