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七品目:カレー、ミルフィーユかつ、カレーうどん出汁

 今日は練習は午後からなので、お姉ちゃんとお買い物に来ている遠矢 紗羅です。


 今夜のメニューの食材を順調に選んでいく。

 しかし、ある場所であるものを吟味するために足を止めた私たち。

 するとお姉ちゃんが、とんでもなくバカな事を言い出した。


「ねえ、紗羅。コレが擬人化―― それもイケメンになったらどんな感じになると思う?」


「え? 何言ってるの?」


「いや、何でもかんでも美少女化とかイケメン化するのが日本のアニメ文化じゃない? だからコレがイケメンになったらどんなかんじかなって思ってね」


 武将が美女とかイケメン化もあるし、お姉ちゃんの言うことも解らなくもないけど、何故いま? そう問いかける私にお姉ちゃんは――


「だって、コレ、ほとんどの人が好きだと思うんだけどさ、コレ、我が強そうじゃない?」


「……我が強いって言われればそうだけど……」


 お姉ちゃんがそれのパッケージ裏を見る。


「でも、色々混ぜられてたりとか、美味しくなる工夫されてるから、性格は複雑で下手をするとメンヘラかも……」


 ――我が強くて、メンヘラ……。


「美味しくなる工夫だけじゃなくて種類もあるからね」


 お姉ちゃん次は何を言い出すの?


「コレはアレね。好きな女の子の気を引きたくて悪戯したり、苛めたりの「構ってくん」。初潮が来たり、胸が成長しだした女の子をからかう感じかな? 胸に興味津々の癖にね」


 ちょっとお姉ちゃん。思春期に何があったの? 仄暗いオーラが滲み出てる気がするよ?


「そういう男の子が親にも窘められず、叱られず、怒られず成長したのがコレ。所謂DQN(ドキュン)になる」


 うん、確かにおちゃらけた子供が、勘違したまま大人になると迷惑系動画配信者になったりとか?


 本当に何があった?


「それで、最後がコレ。イキリ系かオラオラ系かDV男か」


 いや、うん……。『構ってくん』が大人になると『DV男』になるのは、うん、解らなくもないかな。しかし、どうすればコレがそう言うことになるのかな? 過去に付き合った男子が――って、ゴメン、イナカッタネ……。


「ねぇ、何で、コレ、そんなヤバい奴になってるの? 誰も攻略しないよ。そんな男子」


 たとえイケメンイラスト、イケボ声優が演じても人気は出ないはずだ。たぶん……。それともダメンズウォーカーや、ダメンズメーカーなら有りなのかな?


「お姉ちゃん……カレーに何の恨みがあるの?」


 そう、さっきから私たちが居るのはカレールーなどが並べられているコーナーだ。最初の『構ってくん』が“甘口”で、“中辛”、“辛口”だ。


「無いよ? ただ、カレーが擬人化イケメンキャラクターになったら、『俺の色に染めてやるぜ』とか『俺のテクニック(味)で夢中にさせて、イかせてやる』とか言いそうだなって」


 あー……カレーって確かに我が強いね。どんな具材もカレー味だ。お姉ちゃんの嫌いなナスもピーマンもトマトもオクラもカレー味だ。


「ところでテクニックと氷山にぶつかって沈んだ豪華客船の名前って似てるよね」


「……“ニック”しかあってないよ」


 私のお姉ちゃんは時々ポンコツになる。


♪♪♪


 豚バラ薄切り肉をまな板の上に並べて数枚重ねていく。チューブ生姜を少量片面に、もう片面にチューブにんにくを少量スプーンで塗りつけて、塩胡椒最近では味塩胡椒がある、それを振りかける。ガツンと来るのが好みならチューブにんにく、白胡椒に黒胡椒にすれば良い。


 次に市販の竜田揚げ粉で衣の下地をつけていく。それが終わったら、下地をお肉に馴染ませる。


「やった! ミルフィーユ豚カツだ」


「正解。カレーの方を作っていくよ」


「了解だよ!」


 わたしが玉ねぎ、人参、じゃがいもを切って、紗羅が炒めていく。


 湯通しした油揚げ、飴色になるまでバターで炒めた玉ねぎ。あとは、パッケージに書いてある通りに作る。


 紗羅がカレーを煮こんでいる横で、わたしは白だし、みりん、薄口醤油、水でお出汁を作る。一煮たちする前に、そこへ紗羅が煮込んでいるカレーを拝借して、和風カレーを作る。此方は晩御飯のカレーうどんに使用する。


「かつカレーに、カレーうどんだ!」


 紗羅がカレーうどんにはまっている。自分が満足するためにカップカレーうどんをちょくちょく買っているのを知っている。


 一食と考えると食材揃えて作るより、ラーメンとかヌードルとかカップうどんの方がコスパは良いと思うけどね。


 たまにはお姉ちゃんもカレーうどんが食べたいです。なのでついでに作ります。


「紗羅、こっちは出来たから、揚げもの用の鍋にサラダオイル入れて温めて。あ、温度は弱火の中火でね」


「了解~」


 紗羅から弛い返事が返ってきた。


 オイルに熱が入る間に寝かせていた下地をつけた豚肉にパン粉をつけていくことにする。この時に使用するパン粉は極めの細かいものを使う。


 豚肉を押し付けるようにしてパン粉をつけていく。


「お姉ちゃん、オイルの熱良いよ」


 パン粉をつけ終わると、紗羅から声がかかる。


 わたしたちが今から食べる分以外はラップして冷凍庫へ。


「じゃあ揚げていくよ」


 オイルに入れた瞬間のジュワーっという音。オイルの温度を下げないように一口ミルフィーユ豚カツを入れて揚げていく。パチパチという音からカラカラという音に変わっていく。薄いキツネ色になったところで油切りに引き上げるて余熱で火を通していく。チューブにんにくを使っているからオイルにそのにおいがついたのか、揚げる度に空腹感が増していく。


 ――風味付けのチューブにんにくだから、普通ににんにくから作るよりにおいは抑えられているけど……。


 一から擦って、ガーリックオイル作るととんでもないにおいになっていたはずだ。消臭剤がどれ程消費されたかわからない。


 ――こういう時はデカイ家に感謝だね。


 窓を開けて、換気扇も回して換気しても、すぐに隣の家があると隣の家にまで臭いが届いていただろう。また逆も然り。


 カレー皿に紗羅がご飯を盛り――って貴女、それ盛りすぎではないかしら?


 わたしが顔を顰めているのを見て、此方の考えていることを察した紗羅の一言に、わたしは最近崩れ落ちた。


「デスクワークと家と会社の行き帰りの歩きだけのお姉ちゃんとは違うし、私は食べた分はトレーニングのエネルギーとして消化されていくし、それに若いしね」


 泣いていい? 泣いて良いよね? しかし、しかし、だ。若いとかなんとか言っていられるのも今の内だけだ。あとで思い知るが良いよ! 若さ故の過ちって奴をな!!


 わたしが、悔し涙を心の中で流している間にも紗羅は皿にカツを乗せカレーをかけていく。


 ゆらり、と立ち上がる。


「そう、あとでお姉ちゃんが紗羅のトレーニングに付き合ってあげる」


 ポソリと呟いて、わたしは淡々とカツを乗せカレーをかけていく。





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