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その瞳に、覚悟に鬼神が宿る

ここ数話は姉妹の進路の岐路的な話が続いてましたが、つぎからはまたお料理のお話に戻ります。

 私が選手になるにあたり、お姉ちゃんから言われたことがある。SNSなどで何かを発信するのなら、主張をするのなら優勝が必ず出来る選手になってからにしなさい、と。


 なぜなら実績も実力も上位入賞も出来ない選手がそれをすれば、そんなことをする前にちゃんと練習をして表彰台に上がれるようになれ、と言われてしまうから。

 だからルックスだけで注目され、何かに起用されるのは避けなさい、とか勘違いしないようにときつく言われた。


 タレントが本業となってしまっては本末転倒だろうと。バラエティかCMタレントかが精々でそんなのは代わりはいるのだ。女優さんなんて絶対に無理だ。

 二足の草鞋なんて本業が大成功してこそなんだけど、驕りになると本業でさえ上手く行かなくなるのは目に見えているし、何かを発信するなら覚悟が必要だとお姉ちゃんは言う。


 言動には気をつけるよ、と私が言うと、そんなのは当たり前だと言われて、じゃあ何? と聞くと『反対』する覚悟、『自分が動く』という覚悟だとお姉ちゃんは言った。


 私が首を傾げていると、夢や希望、勇気を元気を与え、笑顔を届けると口にするなら、それすらも響かない状況、情勢になった時、反対の意見を言えるか、と言う。開催への反対、辞退。もしくは現実的には実現は不可能に近い、それこそ自分一人が動いても影響など無いという『自分がなんとかするから、みんなの力を分けて』とか、『開催に協力して』と頭を下げることだとお姉ちゃんは言った。


 大会に出る、夢だったなんていうのは我欲で自己の利益だよ、と。もし、苦しみや絶望の世の中でそれでも出る、反対の意見を口にしないなら、それは退路を断つと言うことだと。厳しいかもしれないけれど金メダルは絶対に獲得しなければならない、それが許される、免罪符だ。だけど、銀や銅メダル、逆に予選落ちだと白けるよ、と。


 確かに銀や銅でも『おめでとう』や『お疲れ様』と労う気持ちはあるけれど、まぁ、興味や純粋に楽しめない人、楽しめなくなった人にしてみれば、お疲れ様以上に『そんなことより命が大事だ』と。


 強く酷い言い方になるけれど、その時沙羅には戦犯者となってしまう。惨敗を喫した一人としてその覚悟はある? とお姉ちゃんに問われた。


 冷たくて美味しかったバニラアイスだったけれど、途端に味がしなくなった。今は心胆が寒くなった。


 お姉ちゃんが選手だった頃に、鬼が宿ると言われるほどストイックだったと言われたアスリートの本性が垣間見えた。

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