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辞めてやる

暗い部屋で膝を抱えてぼ~っとベッドに据わったままどれほどの時間が過ぎただろう。


 そう思い、壁の時計をみる。


 ――出勤しなきゃ……。


 とは、言っても、最早遅刻も遅刻、大遅刻。


 少し前に紗羅が声をかけてくれた気がするけれど、記憶はあやふやだ。


 ――面倒だな……。もう、何もかもどうでもいいや。


 わたしが働いている部所は、入社して直ぐに出来た部所。新たなプロジェクトととして始まったゲーム製作。そこに回されてから始まった地獄。


 コンシューマーゲームより、手軽にスマホ一つで何処でもプレイ出来るからと始まった計画。


 原作関係各所に頭を下げ、取り付けた契約。何故、新規でオリジナルでは無いか、というとそれだけの力―― 独創性が無かったからだ。


 原作を用いることでリアルタイムでアニメを見ていた世代―― 現在大人になり、課金が出来る自由になるお金を持つ嘗ての小中、もしかしたら高校をターゲットにしたのだ。そう。小学生の高学年でももうバイトの出来る高校生だ。


 原作から離れたゲームオリジナルストーリーを作る。そこで白羽の矢が立ったのが同人作家だった。同人誌という薄い本では人気が出て成り立つシナリオ、キャラ設定でも、長編や短編だとしても暫くは続くストーリーだと、途端に全てが拙く、シナリオとキャラ崩壊、炎上して挽回しようとして、場当たり的なシナリオになって、また炎上。


 ゲーム内容としても魅力は無い。低予算だから仕方がない、とはあまり言いたくないけれど、仕方がない。


 原作があり、そのSSRキャラのガチャ排出率が0.3%と低い。公式ではそうなっているけれど、実際に回した感じでは0.1%あるかどうかだ。実質出ない。いくら課金しても出ない。


 原作好きなら幾らでも課金するだろう、という隠れた意図が透けて見える。しかもこのゲーム、SSR以外使えないのだ。攻撃、防御、必殺技があるが、SR含めたイカのレアリティキャラの攻防はアリがゾウに挑むようなもので、SRはそのキャラの持つ必殺技の中でもストーリー初期に覚えた必殺技で、威力も物語が進んで強化された初期必殺技に劣るそれが採用されている。


 その為にシナリオが進み、敵が強くなればSRキャラを凸ったところで詰んでしまうという事故が起こる。その為にSSRキャラを凸らなければならない。なぜならSSRの真価は凸ってから発揮されるからだ。


 画面がブラックアウト、ホワイトアウトしてロードがフリーズ、起動出来ない落ちるバク、エラーは日常茶飯事。


 キャラの3Dグラフィックやゲームシステムが日進月歩のゲーム業界の中、わたしが入ってから牛歩の如く代わり映えのしない中、良くユーザーは見限らないものだと思う。


 ――いや、売り上げ落ちてるって事はそういうことかな。そりゃあそうか。新章シナリオもクソ、そのシナリオから追加されたキャラも性格が悪い、ユーザーの推しキャラをそのキャラ側につかせて、落とした挙げ句に雑に扱われたとなれば、ユーザーが怒って当たり前だ。


 スマホが鳴る。ディスプレイには同僚の名前が表示されている。


 ――また、フリーズしたかな? 知らないよ。仕様変更とか、追加とかアップデート前にするからそうなるんよ。


「あ゛い……」


「先ぱぁい。なにしてるんですかぁ!! こっち今、大変なんですよぉ!!」


「無理……」


「なんでですかぁ!!」


「高熱で動けない。だから無理……」


「そんなぁ。そんなこと言わずに助けて下さいよ!!」


「だから無理だって! 頭に響くから切るよ! じゃあね!!」


 会話をぶった切り、電話を切ると、直ぐに上司に連絡を入れる。


「病院に行けるだけの元気があるなら出勤しろって言ってましたよね。でも、起きて病院に行ける状態では無い熱なので休みます」


 ネチネチと何か言っていたが、そう言って何か言われる前に電話を切った。


 のそのそとした動きで机に向かう。退職届を書く。


 ――辞めてやる。辞めてやるぞあんな処。


 そう決意して、書き上げると、少し来が晴れた。そして服を着替えて会社へ。退職届を出して荷物を纏めて撤退だー!! イャッホー!!


 生ける屍の目をした同僚を後目しりめに意気揚々と会社をあとにする。


 ――これでパワハラ、セクハラ、モラハラからおさらば出来る!! あばよ!! セクハラのとっつぁ〜ん!!


 わたし、帰ったら積んでたプラモ作るんだ……。


「お姉ちゃん!!」


「あれ? 紗羅。貴女、学校は?」


 帰宅途中に紗羅とエンカウントした。


「お姉ちゃん、帰ってきてから様子がおかしかったし、今朝も死んだ魚の様な目してて、目の前撤退呼びかけても反応が無かったから心配になって帰ってきたんだよ」


「そっかー。心配かけてゴメンね。でももう大丈夫!! お姉ちゃん仕事辞めてきたから」


「うん。そっか。仕事辞めて良かったんだよ」


 わたしたちは仲良く買い物をして帰った。


 

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