表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

一品目:お姉ちゃんの朝ごはん

「ふぁ……」


 今日も今日とて一日が始まる。

 それなのに、こんな暗い時間帯のに目が覚めるのは、最早呪いと言っても過言ではないと、わたし自身は思っている。


「ん~」


 ベッドの上で上半身を起こして伸びをする。その際足も伸ばす。嘘か真か上半身だけで伸びをすると胴長になると聞いたことがある。


「あー! お姉ちゃん、またそんな格好で!!」


 部屋を出て直ぐにエンカウントしたのは、何時の間にか出来ていた妹の紗羅さら。八つ下の今年から高校生になったばかりの十五歳だ。

 

 ――目がぁ! 目がぁ!!


 これが十代の輝きか!!! 若さが眩しい!!


 キャミソールにパンツ姿のわたしに注意をしてくる。


「あー……ハイハイ。後でね。それより先にリンクに行ってな。朝食持ってってあげるから」


「……お姉ちゃんも」


「わたしはもう良いから」


 紗羅の肩に手を起き半回転させる。


「ほら、行っといで」


 背中を押して送りだす。


「朝食何にすっかなぁ……」



 冷蔵庫と戸棚を開け材料とにらめっこ。


 ――お味噌汁は作り置きを温めて。あとは……。


 戸棚から花かつおを取り出して20グラム計り、冷凍室から出したものを電子レンジで解凍するために放り込む。


 次に小鉢に醤油大さじ2、酒大さじ1、みりん大さじ1、甜菜糖2/1を混ぜて調味料を作る。


 フライパンを温め、花かつおを入れて乾煎りする。しばらくすると煎っていたかつおが踊りだしてきた。そこで先に作った調味料を全体に回し入れて加える。


 余分な水分を飛ばしながら白ごま大さじ1も加えていく。水分が飛び、手作りおかかふりかけの完成だ。


 ちなみに、調味料をひと煮立ちさせてからかつおを投入という方法もある。


 ひとつまみして味見。うん、上出来だ。早く温かいご飯に乗せて食べたい。


 手早く、フライパンを洗い流してキッチンペーパーで拭き取る。


 解凍の終えた鮭を取り出して、皮面を下にして火を入れないでフライパンに並べる。フッ素樹脂加工されていない鉄製のフライパンの場合はフライパン用アルミホイルを使う。


 先にコンロに火を入れて、フライパンに熱を入れないのは、暖まった状態のフライパンに鮭を置くと表面に一気に火が入り、表面だけ焼き上がり、中は生焼け、身が縮んでかたくなったりすることもあるから。


 中火で約3分、焼き目をつける。その間、放置。


 フライパンに接した側の半分程度まで白っぽくなればひっくり返すタイミングの目安だ。


 ――もう少しかなぁ。


 様子を見ながら焼いていく。


 ――皮面の油の甘い匂い~。


 さっき作ったおかかを炒めた時の醤油と仄かに香る甘い匂いに既にやられていたお腹が小さく鳴る。


 ちらり、と出来上がっていたおかかふりかけを見る。


 ――焼きながら立ち食いでもするかなぁ。


 鮭を焼ながらその匂いでかつお(おかかふりかけ)で飯を食う……。これ如何に?


 と、一人で内心で笑っていると、程よく片面が焼けてひっくり返す。


 ――最後に蓋をして約3分中火で蒸し焼き~。こうすることで身がふっくらになるんだよね。まぁ、けど、ほぐしちゃうんだけどね。


 焼いた鮭から骨を取り、パリパリの皮こどほぐして、醤油を隠し味程度に、そしてマヨネーズをぶっ込む。


 ――まーぜまーぜ。鮭マヨのでっき上がり。


 市販の鮭フレークで作るのが一番楽だけど、わたしは断然、自分で焼いて作る。フレークから作った時の味が苦手だ。


 因みにシーチキンマヨは苦手。ハーフだろうがオイル漬けにマヨネーズ……。あのオイルとマヨネーズの味がね。


 妹は好きなんだけど、それが若さか?


 おかかは混ぜと中に入れたもの、焼いてほぐした鮭も混ぜたものと中に入れたもの、そして鮭マヨを中に入れたものをおにぎりにする。


 曲げわっぱのお弁当箱につめる。


 うーん、あとは作り置きのをレンチンで。全ての準備が整ったら、スポーツウェア(ジャージ)を適当に来て、妹の所属しているリンクへ。



♪♪♪



「ん……うっさい」


 手探りでケータイを探す。鳴り続けるアラームを止める。


「おはよう、ラス」


 柴犬のディフォルメが可愛いぬいぐるみに挨拶する。これはお姉ちゃんが誕生日プレゼントでくれた私の大切なぬいぐるみだ。


 私のお姉ちゃんの名前は奏那。お姉ちゃんはずっと日本こっちにいて、私は海外(向こう)で生まれて今はこっちでお姉ちゃんと姉妹二人暮らし。


 向こうで暮らしている時に貰ったぬいぐるみだ。


 まだ眠いのを我慢して制服に着替えて身仕度を整える。


「今日も頑張りますか!!」


 と、気合い十分、部屋を出る。出ると同時に隣の部屋のドアが開いて、キャミとパンツ姿のお姉ちゃんが出て来た。


「あー! お姉ちゃん、またそんな格好で!!」


 スタイルが良いお姉ちゃん。似合う、似合うけど恥じらいを持とうよ。姉妹だけど、姉妹だけどさ、意識しちゃうんだよ!!

 目のやり場に困ります。でも脳内のファイルに保存します。ありがとうございます。妹に生まれて良かったー!! 心から叫びたい。


 そんなよこし――ゲフンゲフン! そんな純粋なお姉ちゃん愛をおくびにも出さず、注意する私に――


「あー……ハイハイ。後でね。それより先にリンクに行ってな。朝食持ってってあげるから」


 面倒出し、楽だから良いのよ、と苦笑しつつ、私に早くリンクへ行けというお姉ちゃん。


「……お姉ちゃんも」


 一緒に行って練習しよう、と言おうとする私の言葉にお姉ちゃんは拒絶の言葉を被せて来る。


「わたしはもう良いから」


 お姉ちゃんは私の肩に手を起き半回転させる。


「ほら、行っといで」


 背中をポンと押されて送り出された。


 遠矢 奏那――元天才ジュニア女子フィギュアスケーターと言われていた。だけど、お姉ちゃんは大きなケガをして跳べなくなった。

 リハビリをして復帰は出来たけれど。お父さんやお母さん、私のコーチでお姉ちゃんのコーチでもあったマティアもゆっくりでもいいから戻れば良いと言って留めたけれど。

 元々アイスダンスをやりたかったお姉ちゃんだったから、たぶんシングルへの気持ちは切れたんだと思う。

 海外も含めてパートナーを探してたみたいだけど、国籍やどちらに本拠地にするか、とかの問題でフィギュア自体を辞めた。


 リンクに着いて練習着に着替えて準備運動。氷上で軽く流して、今シーズンの振り付けの練習。


 曲も振り付けもお姉ちゃんが物置にしまったものを引っ張り出してきた。

 これがなかなか難しい。


 ――お姉ちゃんはこれを難なくやってたんだよね。


 しかもトリプルアクセルや四回転を入れたプログラム。そう思うと、全然な私は落ち込んできた。


 ――うーん、ダメだぁ。お腹空いてるせいだ。今日は何かなぁ。


 楽しみだ。



 氷上練習を終えて着替えてお姉ちゃんを待つ。ふぁ。暖房の暖かさに眠気が。睡魔と戦いながら朝の学習。ラノベ読みたいよ。だけど成績も大事。


「紗羅」


「あ、お姉ちゃん!」


 ――私は犬になりたい。


 犬ならば人目を気にせず駆け寄って抱き付けるのに。


「待たせたわね。食べようか」


「うん!」


 保温ランチバックは三つ。私とお姉ちゃんのお昼と、今から食べる朝食分。


 ランチバックから出されたのは『曲げわっぱ』。


 蓋が外されて、見えたのは絶対に美味しいに決まっている、俵型のおにぎりと三角おにぎり。


 俵型は混ぜご飯。三角は具が中に入っている。


「手を拭いてからね」


 除菌シートで手を拭き、二人で手を合わせて「いただきます」をする。


「味ノリと普通のノリ好きな方で食べてね」


 私は、まずは何も巻かずに食べる。


 ほぐした鮭の混ぜ俵から。


 ――ん~鮭の甘塩と身の旨味がご飯にうつってうまうま。


 次におかかに手を伸ばす。


 甘辛さをご飯が受け止めてゴマの風味がアクセントになってて、も一個。


「おかずもあるからね」


 ズズッとお行儀が悪いけれど温かお味噌汁を飲みながら頷く。


 お味噌汁は玉ねぎとお揚げのお味噌汁だ。


 玉ねぎがトロトロで甘味がお味噌汁に溶け出して甘口のお味噌汁になっているけど、これも好き。


 ほっと息を吐く。


「お姉ちゃん?」


「紗羅が美味しそうに食べてくれるから、嬉しくてね」


「は、恥ずかしいんだよ。食べるとこ見られるのって」


「ごめん、ごめん」


 ――自分で選んだこととはいえ、お姉ちゃんは一人暮らしだったんだもんなぁ。でも、前とは違うんだから、一緒に食べる友達居ないのかなぁ。居なさそうだなぁ……。日向さんもお仕事あるしね。


 眼鏡掛けて、アニメの主題歌歌いながら、有人操縦式人型ロボット兵器のプラモデル作ってニマニマして、その出来に自画自賛している姉の姿が脳裏に浮かんだ。


 それだけじゃあ無くて車とか戦闘機、軍艦とか作ってたりするけれど。


 彼氏とデートとかお家時間よりも大事にしそうだし、「どっちが大事なんだっ」て言われたら「はぁ? アンタ馬鹿ぁ? プラモデルに決まってるでしょう?」って即答、断言するよね。 


「どうしたの?」


「ううん、何でもないよ。今日もお姉ちゃんの朝ごはん美味しいなって」


 シーチキンマヨネーズも良かったけど、お姉ちゃんの焼いた鮭ほぐしマヨが断トツに美味しいんだよね。


 ハグッとかぶりつく。具もいっぱい。鮭の旨味がマヨネーズの味に塗り潰されない絶妙なマヨ加減。


 ご馳走さまのあと、熱い緑茶を火傷に気を付けながら飲見ながら、少しお話して、私たちはそれぞれ向かうべき場所に向かう。


 今日のお昼はなぁにかな♪

続くかどうか、異世界に転移するかどうかはわからない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ