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堀口明日香シリーズ

男もすなる日記といふものを

作者: 山口遊子

今回の堀口明日香は高校教師です。

男もすなる日記といふものを……




 堀口明日香は大学卒業後、自身の卒業した女子高で国語を10年ほど教えている。趣味はBL本とそれにまつわる妄想、たまに自分でもそういった絵を()いてみるがどうも下手でしっくりこない。

 もしも彼女の()いたそういった絵を第3者がみたら、『クトゥルフ的呪術人形の(から)み合い』と評するのではないだろうか。SAN値がゴリゴリ削られるような一品なのだ。



 今日の授業は、紀貫之の『土佐日記』を取り上げている。毎年この時期の恒例である。


「皆さん、今日は紀貫之の『土佐日記』です。教科書の85ページを開いてください」教室の生徒たちがぱらぱらと教科書をめくる音がする。


 その音がやむのを待って、自分で冒頭部分を読む。「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」


「はい。では、鶴井さん、ここを口語訳してください」


「はい。『男もするという日記というものを、女もしてみようとしてするのである』」


「はい。結構です。土佐日記は、紀貫之という平安時代の歌人が土佐の国、今の高知ですね、そこから京都に帰る間での出来事を日記風に書き記したものです。この冒頭部分は有名な一節ですので皆さんぜひ覚えておいてください」教室の生徒たちは、堀口先生の話に耳を傾けている。


「名前からもわかりますが、紀貫之は男性ですね。その男性が女性の振りをして日記を書こうというのが、土佐日記の有名な冒頭部分です」教室の生徒たちは、堀口先生の話に耳を傾けている。


「紀貫之と言う人は、我が国の文学史の中で初めて現れた『ネカマ』だったわけですね」


「先生、それは、『ネカマ』じゃなくただの『オカマ』じゃないですか?」


「鶴井さん、いい質問です。紀貫之は、土佐の国では、国主を務めていましたので、男性として生活していたことが分かっています。ですので『オカマ』じゃなく『ネカマ』です。みなさん、ここ今度の中間に出しますから忘れないように」教室の生徒たちは、堀口先生の話をノートをとる。


「そういえば、皆さんもよく知っていると思いますが、織田信長と森蘭丸の関係」『ゴクリ』堀口先生の話につばを飲み込む生徒もいる。


「この辺は、まあ、有名ですから良いでしょう。それでは皆さん、織田信長と前田利家、この二人が若かった時、信長は吉法師、利家は犬千代と呼ばれていたころですね。この二人もそういう意味で、デキていたんだえすね」教室の生徒たちは、堀口先生の話に耳を傾けている。


「当時、衆道(しゅうどう)というものは武士の(たしな)みともいわれ盛んだったようですね。衆道というのは今で言うところの『BL』のことです。」教室の生徒たちは、『BL』という言葉に反応する。


「皆さんは、無意識のうちに織田信長の攻めと前田利家の受けを想像するでしょう」『ゴクッ』堀口先生の話につばを飲み込む生徒達。


「先生の解釈では、織田信長の受けと前田利家の攻めが史実だろうと思ういます。理由は、その方がロマンがあるからです」堀口先生の無言で頷く生徒達。


「明智光秀の謀反(むほん)によって織田信長が亡くなった『本能寺の変』ですが、織田信長の性癖が原因だったのではと考えています」


「織田信長と森蘭丸の関係に嫉妬した明智光秀が暴走したってことですか?ということは、明智光秀とも?」生徒からの質問。


「そうですね。先生はそう解釈しています。とはいえ、先生は日本史の教師ではありませんからあくまで推測ですけど」


 それからも、国語教師、堀口先生の推測という名の妄想による独自の歴史解釈の話は続いた。


「明治維新で活躍した、西郷隆盛、皆さん知ってますよね、彼と、幕府の重臣、勝海舟、この二人の会談の結果江戸無血開城がなされたわけですが……」とうとう明治維新まで来てしまった。黒板の上には、チョークで書いた妙な線画がいくつも書かれている。


 生徒たちは少し顔を赤らめ、黒板を見ている。これでいいのか日本の教育!


 とはいうものの、生徒たちは、日本の歴史上の人物名をかなり覚えたようだった。これでいいのだ!


「キンコンカンコーン!」


「今日はここまでです。クラス委員さん」


「起立! 礼!」



 毎年、『土佐日記』で授業を脱線させる堀口明日香先生だった。





連載中『巻き込まれ召喚。 収納士って最強じゃね!?』


URL : https://ncode.syosetu.com/n8990fu/ もよろしくお願いします。


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