表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

空を自由に飛びたいな

作者: 京屋 月々

3分程度で読める短編。

私は空を飛べるタイプの人だ。


空を飛べる人は珍しくなく、通勤や通学なんかで飛んでいる人をよく見かける。

休日には空中散歩を楽しんでいる人も多い。

飛べるタイプの人は飛ぶことが好きな人が多いし、飛べない人からは羨ましがれたりもする。

でも、私は飛ぶことがあまり好きじゃない。

文化祭では手が届かない高い場所への飾り付けをさせられ、体育祭では空からの撮影に使われた。まるで脚立(きゃたつ)やドローン扱いでウンザリする事が多い。


飛べると言っても、ドラえもんのタケコプターやドラゴンボールの舞空術(ぶくうじゅつ)のように、自分の意志で自由に飛べるわけではない。飛びたいと思うと、透明な大きな手が私の首根っこをひょいと摘み上げ空中へ浮かせるのだ。

一度飛んでいる姿を写真に撮ってもらったら、まるで首吊り死体のようだった。

うっかり街中で飛んでしまいクスクス笑われた事もあった。


大きな手との意思疎通(いしそつう)はあまり上手くいかない。

JRの駅に飛んでくれと伝えても、降ろされたのは地下鉄の駅だったり、街灯(がいとう)の上によくあるアニメの魔法少女のようにカッコよく着地したいのに、足を下ろす場所がずれて街灯にお尻を強打したり。彼は私の運動神経が良くないことも考慮してくれないのだ。

飛ぶ高さや速さも全然思った通りにいかないので、いつも文句をつけるのだけど、その(たび)に大きな手は申し訳なさそうにしていた。


問題が起こると、次は気をつけてと私はお説教した。彼はわかった、と素直に聞き入れるが、次もまた同じことをするのだ。

最初はとても申し訳なさそうにしていたので、しょうがないかと許した。

けれど、こうも毎度のように問題を起こされるとイライラも(つの)る。


ある時、学校でちょっといいなと思っている男子と話している時、急に浮かび上がってしまったことがあった。私の浮ついた気分を(さっ)したのか、大きな手はここぞとばかりに高く持ち上げてくれたのだ。


(ちがう!そういう意味での『浮ついた』じゃないのに!!)


男子は突然の光景に驚いた後、プッ!と吹き出し、ごめんごめんとその場を足早に去ってしまった。

私は大きな手に激怒した。首吊り死体のように宙を舞う様子を、彼に見られるなんて本当に最悪だ。二度と持ち上げないで!と強く責めた。

大きな手はひどく落ち込んだ様子で、それ以来、私を持ち上げることはなかった。


それから1年ほど経った時、大きな手の存在がなくなっていた事に気づいた。

代わりに別の大きな手が、私に憑いている感覚があった。

どうやら、この透明な大きな手という生き物(といっていいのか?)たちは、ヤドカリが自分に合った貝殻(かいがら)を探すように、適正のある人間に身を寄せるらしい。


新たに取り憑いてきた大きな手は、私の意思をきちんと汲んで飛んでくれた。

以前の首吊りスタイルではなく、大きな手の平に腰掛ける形で私を運んでくれた。空中でブランコに乗っているように快適で、とても気持ちがよかった。

だけど、私はあの不器用な手に摘まれて、不自由に空を飛んでいた頃が懐かしく、少し愛しく思えた。


幾年か経ち、2歳の娘を抱き商店街を飛んでいると、首根っこを掴まれているような姿で飛んでいる女学生を見かけた。彼女は恥ずかしそうに、何かに怒っているように見えた。

私は彼の変わらない様子が嬉しくて、クスッと笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ