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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ギャグ&ナンセンス(ゆるいっす☆)

確信的駄文小説2『主人公たちが新たな悪と戦って勝つ話』

作者: ヒネクレモン

※ この作品は[確信的駄文小説]です。苦手なかたはご注意ください。


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 ごごごごごう……。


 主人公とヒロインが「悪」を退治してから、およそ一年。


 ごごごごごごう……。


 新たな悪が、現れた。


 ごごごごごごごごごうっ……!

 キュルィーンっ、どんっ。



 その名も、「毒」。










 銀河系に姿を現した「毒」は、火星へ着陸した。なぜならそこに、彼または彼女を待っている「悪友エックス」という存在があったからだ。

 かつて「悪」に力を貸してフェイクニュースをまき散らした悪友エックスは新聞社を追われ、時の内閣総理大臣の秘書によるアッパーカット攻撃三連発によって火星へと吹っ飛ばされ、謹慎中の身であったのだ。とはいえ、「悪友」の権化ともいわれる悪友エックスがおとなしく謹慎などするはずもなく、彼は火星人を腰巾着とし、虎視眈々と総理大臣秘書を叩きのめす機会を狙っていた。その腰巾着の使用する SNS を通じて知り合ったのが「毒」であり、「わが銀河系に来いよ。うまいアジフライがあるぜ」ということで、侵略者「毒」を呼び寄せたのであった。


「待たせたな、エックス」

「おお、君が毒か」

「もっとかわいいやつを期待していたか」

「別に」

「それともかっこいいやつか」

「別に」

「ああそうかい」

 てなわけでふたりはかたい握手を交わし……、その手と手を組んだ瞬間、悪友エックスの身体は溶解し、まるで妖怪のように暗闇へと消えていってしまった。

「だ、だましたな、毒っ!」

「ふはっふはは。地球へ行って暴れる前に、ちょうどいい腕慣らしができたぜい」


 しかし、この行為こそが、地球に鎮座する主人公とヒロインを「毒」を倒すための冒険へと駆り出させたことを、毒自身はまったく知らない。

 このことを知っているのは、本作の作者と、彼の書いた確信的駄文小説『主人公らが、悪と戦って勝つ話』を最後まで読んでしまった読者しか知らないのである。






 さて、そのとき主人公一味は、箱根の山から遠く離れたカリブ海のある地点、消えた島々ともいわれる「ハム列島」にバカンスに来ていた。この列島が消えた島々と呼ばれる理由、それは、主人公一味、つまり、主人公とヒロイン・シャルロッタが細工をして、一般人が上陸はおろか目撃すらできないようにしてあるからである。

 主人公はちょうど、ハム列島の中心に位置する島のホテルで朝食をとっていた。メインディッシュは、この島でしか獲れないという高級魚ホレイの塩漬けと、ピリリと辛いガートルード・ソースで煮込んだクロディアス・ハンバーグ。さらにデザートには、主人公とヒロインのためだけに雇われたホテル専属のコックであるネズミダード=ポロニアス氏イチオシの洋菓子、レアティーズ・ケーキ。主人公はこれらを食しながら、人気のブラスバンドの新曲「十四歳(フォーティーン)の領域」を聴き流しつつ、今使っている高級車ローゼンクランツをそろそろ売ってしまおうかと考えたりしていた。


 と、そこへ現れたのが可愛らしいヒロイン・シャルロッタ。二十歳くらいのお団子ヘアが似合う女の子だ。そんな彼女が、冒頭に書いた「ごごごごごう……。」という音を鳴らしながら姿を現したのだ。

「あれ、お前、若がえったな」

「え、そう?」

「前は二十五歳くらいだったのに。髪型も、イメチェンか?」

「うふふふふ」

「で、ご用命はなんだ」

 主人公が要件を聞くと、ヒロインの顔が変わった。

「新たなる悪が現れた。その名も『毒』だ。さあ主人公よ、我々の出番だ、ぶっつぶしに行くぞ」

 こうして主人公と勇者シャルロッタとは、豪華客船ジャイアニック号に乗船して本拠である日本の箱根まで戻り、シジミ汁でエネルギーをチャージするなど、念入りに戦いの準備をして公共交通手段を使って北へと進み、青函トンネルを抜けて、ようやく「毒」の待ちかまえる岬までたどり着いたのであった。






「ふむふむ、ネット小説っていうのは星の数ほどあるんだな」

 毒は、悪友エックス配下の火星人が所持していた地球製のタブレット端末を使ってネット小説を読んでいた。

「『主人公らが、悪と戦って勝つ話』か。……ん、規約には、実在の人物の扱いに関しての注意点が書いてあるが、これはいかに……? これからこのアタシを倒しにくるという生意気な主人公は、この『主人公』とは別なのか……?」


 ※ 本作「確信的駄文小説2『主人公たちが新たな悪と戦って勝つ話』」は、「確信的駄文小説『主人公らが、悪と戦って勝つ話』」の続編であり、どちらもフィクションです。主人公らは実在の人物とはなんら関係ございませんので、ご安心ください。


 毒は、別のネット小説を開き、読みはじめる。

「ふむ、これはおもしろそうだぞ。『異世界の女の子と駆け落ちしたくてトラック転生したはいいんだが、元の世界の彼女が後追い未遂で大変なことになってるとこっちの世界のテレビで知ってうろたえてますのだ』。ブラックで不謹慎なところが、アタシとしても好みだぜグハハ」

 さて、三十話あるうちの三分の一、十話目を読み終えた時点で、毒は目が疲れていることに気づき、一休みをすることにした。そこへ……


「ばあっ」

「なっ、曲者かっ」


 物陰に潜んでいた主人公が懐中電灯を使って毒の疲れ目に追撃をしかけたのだ。


「今だシャルロッタ、この悪党に、お前の力を見せてやれっ!」

「ようし、いくわよ。塩酸攻撃っ!」


「ぐっはーっ……!」








 さて、壮絶な戦いのあと、主人公たちは箱根へと戻り、シジミ汁をすすっていったのだが……。

「目黒のさんまもいいけれど」

「やっぱり箱根で食べるシジミ汁は最高だわね」

「あと、アジフライ」

「ふふっ。アジアジランドからお取り寄せねっ」

 そこへ、パワーアップした毒が、冒頭にも書いた「ごごごごごごごごごうっ……! キュルィーンっ、どんっ。」という登場の音とともに現れた。

「おんまえらあっ、ゆるさんぞおっ」

「なっ、貴様っ」

「三週間前、私の必殺塩酸攻撃でぶっつぶされたんじゃ?」

「そんなこと、ありえんのだ。はっははぐははあっ!」

 それもそのはず、この「毒」は酸性。塩酸とは仲良しだったのだ。

「くそう、こうなったらっ!」

 主人公は魔術を使ってアルカリ性の硫黄泉を呼び出し、酸性の毒を攻撃。

「フハハ、そんなんじゃ、このパワーアップしたアタシさまの毒は中和できんぞお! くらええーっ」

 毒は火星人から奪い取った地球製スタンガンを振りまわして反撃してくる。

「くっ、なかなか手強いわね」

「ほんとだぜベイベイ」

「ああん? だれがベイベイだこの野郎」

「……え?」

 なんということ。主人公の何気ない失言が、仲間であったシャルロッタの怒りに火をつけてしまい、主人公、毒、そしてヒロインの三つ巴戦が始まってしまったのであった。

「うう、くそお……。いい感じのところでヒロインを人質として脅して主人公の情にはたらきかけて動きを封じようと企んでいたのに、これじゃあその作戦ができねえじゃねえかあ……」

「なにっ、貴様、そんなことを考えていたのかっ」

「おい主人公、こいつは卑怯者だ。協力プレイでぶっ倒そうぜ」

「ああ、シャルロッタ。思うところもあろうが、ここはいったん手を結ぶとしよう」

 主人公とシャルロッタは手を組んだ。そして……、

「主人公とっ」

「ヒロインのっ!」


 ごごごごごごう……。


「ひえー、おったまげーいっ」


 凄まじい轟音ごうおんとともに発せられた光線のために、その中二病チックであったろうと予想される必殺技の名前を聞き取ることはだれにもできなかったが、ともあれ、こうして新たなる悪、その名も「毒」は、退治されたのだった。






「やったわね」

「ところでシャルロッタ、喧嘩はどうする?」

「喧嘩? やめにしましょ。疲れちまったわ」


 近くの美術館で見ることのできるルノワール作品『風景』という名の風景画にも似た箱根の山の木々を眺めながら仲直りをするふたり。

 めでたしめでたし。







※ 作中に登場する『異世界の女の子と駆け落ちしたくてトラック転生したはいいんだが、元の世界の彼女が後追い未遂で大変なことになってるとこっちの世界のテレビで知ってうろたえてますのだ』というタイトルの小説は実在しません。少なくとも私は書いておりませんし、読んだこともありません。

 どなたか、このタイトルで書いてくださるというかたがいらっしゃるならば、どうぞお使いください。(タイトルだけね。)その際は、事後報告でもかまいませんのでご連絡いただけるとうれしいです。




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― 新着の感想 ―
[一言] 確信的駄文1と2を読みました。理性を軽くぶっ飛ばす内容ですねw 一体これはどうなっているんだ!?と深く考えようとしてはアウトなのですねきっと。 個人的に和食が好きなのでアジフライとシジミ汁が…
[一言] 恐ろしくテンポよく一気に読めました。 何だか凄いです。 どう凄いのか説明などできないのですが。 全く関係ないのですが、どうも私の脳内で「あおげあおげ」「あおぐぞあおぐぞ」と太郎冠者、次郎冠…
2019/02/04 21:41 退会済み
管理
[良い点] 檸檬様こんにちはです(・・*) 拝読させていただきました。 なんと申しますか…好きです。鮮やかに流れていくハイローテンションな文章、面白いです。好きです(*・・*)笑
2019/01/16 10:08 退会済み
管理
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