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大鬼戦その後

 リルの背にハヤトとセゾンを乗せ終わるとヴェスナーはあることを思い出す。


「そういえば、助けた四人組って……」

「…………あっ」

「忘れてた!」


 ハヤトたちが来た通路に避難させていた四人組を見に急いで向かう。到着するとそこには誰もいなかった。


「目が覚めて移動した?」


 クシュが最初に疑問を口にする。


「かもな……そうだ」


 ヴェスナーはセゾンのポーチをガサゴソと漁る。


「ラストエレクサーが減っているな」

「じゃ傷は治ったってこと?」

「それと、ハヤト。これ飲め」


 セゾンに渡した未使用のラストエレクサーをハヤトに飲ませる。身体が動かせるようになったハヤトはリルから降り軽く身体を動かす。


「問題ないか?」

「うん、問題ないかな……うわっ、リル舐めるなよ」

「わふ!」


 リルは撫でてほしそうな顔をしていたのでハヤトは撫でる。嬉しそうにリルは尻尾を振る。

 ダンジョン内だけどほのぼのとした空間になった。


「続きはダンジョン出てからな」


 ヴェスナーに言われハヤトは撫でるのを止めるとリルが睨む。


「あ、あとでハヤトがいっぱい撫でるから、なぁハヤト?」


 助けを求めるようにハヤトを見る。


「う、うん」

「ほら、ハヤトも言っているし……」

「……わふ」


 リルは渋々と納得する。睨みから解放されたヴェスナーはほっとする。


「よし、急いで地上に戻るぞ」

「わふ!」


 リルは率先してしゃがみ早く乗れって顔をしている。


「よっぽど撫でられたいんだな」

「ははは……」


 先頭にハヤト、気絶しているセゾン、落ちないように後ろにクシュとヴェスナーが背に乗りダンジョン内を駆け抜ける。


「うわっ!」

「なんだ、あの魔物は!」

「きゃあ!」


 物凄い速さで駆けるリルを、途中ですれ違う冒険者たちは驚きまくる。その中に助けた四人組を見つけハヤトたちは安堵する。

 大分地上に近づいたところでヴェスナーが大声で言う。


「おい、ハヤト。このまま外出たらやばくないか?」 

「多分大丈夫だと思うよ!」


 さらにリルは加速する。ハヤトたちは振り落とされないように必死にしがみつく。


「リ、リル! 速度落としてぇぇぇ!」


 叫びながらハヤトは言うが、リルには聞こえてなくそのままの速度で地上に出る。リルは見事な着地を決める。


「なんだ!」

「何が起きている!」


 案の定、入り口にいた衛兵や冒険者たちがリルを警戒して武器を構える。ハヤトは慌ててリルの背から降りる。


「お騒がせしてすみません! こいつは俺の相棒です!」


 まだ警戒を解いていない衛兵の一人が尋ねる。


「その魔物はあなたが契約していると」

「そ、そうです」

「証拠はありますか?」


 ハヤトは急いで白金色のギルドカードを取り出す。すると周囲はざわめく。


「そのギルドカードは!」

「初めて見たぜ!」

「あんな小さいのがSランクだと!?」


 気にしていることを言われ、聞こえた方に睨みつける。

 

「証拠はないけど、こいつは俺が保証します!」

「……わかりました。全警戒を解け!」

「ありがとうございます。怪我人がいるんでこれで!」


 ハヤトは背に乗り、リルは一回の跳躍で大勢いる冒険者たちの頭上を飛び越えて空中に足場を作り駆ける。空を見ると太陽が昇っている。冷酷大鬼との戦いで夜を越していたのだ。

 

 道すがら驚く冒険者を無視してあっという間にバラス村に辿り着く。

 ここでも警戒をされたがギルドカードをみせ通してもらえたが、人が多いためリルから降りヴェスナーがセゾンを背負う形にする。リルは子狼サイズに戻る。


「小さくなるのか……」


 衛兵は驚いているが無視して空いている宿屋が無いかハヤトは尋ねる。


「空いている宿屋ってありますか?」

「この時期ですとほとんど空いて無いのですが……あ、村の奥に方に静寂の眠り亭という宿がありまして、そこなら空いているかもしれません」


 衛兵に地図を描いてもらいお礼を言ってから宿屋に向かう。


 しばらく歩くとちょっと寂びれた宿屋が見えてくる。看板に静寂の眠り亭と書かれている。


「ここ?」

「みたいだな。とりあえず入ってみようぜ」


 中は静かで誰もいない。カウンターには呼び鈴が一つ置いてある。ハヤトは呼び鈴を押すと奥の方から「はーい」っと女性の声が聞こえる。

 

「はいはい、おや、若い方が来るなんて珍しいわね。今日はお泊りで?」


 恰幅のよい穏やかな女性が奥から出てくる。


「はい、四人で泊まれる部屋ありますか?」

「えぇ、あるわよ」


 女性から値段を聞きお手頃の価格だった為一週間分の料金を払う。


「はい、これが部屋の鍵よ。出かける際はカウンターに寄って鍵を預けてね」

「ありがとうございます」


 一礼した後一番奥にある部屋に向かう。部屋には二段式のベットが二つと小さいテーブルがあるだけだった。

 セゾンをベットに寝かせそれぞれ装備を外し、セゾンが寝ているベットにヴェスナーが座り、もう一つの方にハヤトとクシュが座る。


「わふ!」

「わかってるよ」


 リルを抱き上げ約束通りにハヤトは撫でまくる。満足したのかリルは膝の上で丸くなる。


「はぁ……疲れたぜ……」

「うん、疲れた……」


 ヴェスナーは上を向きながら盛大な溜息を。眠いのかクシュの頭は船をこいでいる。


「一旦寝ようぜ。それからセゾンが起きてから話を聞かせてくれハヤト」

「うん」

「はぁ~」


 大きな欠伸をしてからヴェスナーは階段を登り二段目の方に。

 クシュはいつの間に横になって眠っていた。


「リル、上行くから起きて」

「わふ……」


 リルを先に二段目に運んでからハヤトも階段を登り横になると、リルは腕の中に入り一緒に横になる。ハヤトは優しく撫でる。


「ヴェスナーたちについてくれてありがとな、リル」

『ふん、お前が悲しむ顔が見たくなかっただけだ』


 ハヤトはリルを抱き寄せる。


「おやすみ」

『うぬ』


 一度撫でたあとハヤト目を瞑るとすぐに眠り就いた。


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