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大鬼戦決着

「来るぞ!」


 冷酷大鬼は剣を四本同時にハヤトたち向けて投げる。ハヤトたちは四方に別れて躱す。

 地面に突き刺さった剣は一瞬で冷酷大鬼の手に戻る。


「この!」


 ヴェスナーはすれ違いざまに右足を切りにかかる。しかし、冷酷大鬼は剣で受け止め他の剣で追撃する。


「やば!」


 それをブリッジの体勢でギリギリで躱す。


「ヴェスナー離れて!」


 ハヤトとリルが無数の鋭い氷塊を放つ。ヴェスナーは慌てて離れる。


 冷酷大鬼は二本の剣を回転させ全て防ぐ。


「今っす!」

「きゅ!」


 冷酷大鬼の反対側に着いたセゾンの指示でディックは特大の水球を放つ。


「があああ!」

 

 飛んでくる特大の水球を切る。すると冷酷大鬼の顔面で爆発が起きる。その衝撃で動きが止まり鋭い氷塊が襲う。

 

「作戦成功っす」

「きゅ!」


 セゾンとディックはハイタッチする。何故爆発が起きたのか。それは事前の打ち合わせで水球の中にセゾン特製の爆弾を仕込んでいのだ。


 白い霧が晴れると冷酷大鬼は目を閉じ動きを止めている。額の第三の目がギロっとセゾンを見る。すると目から光の光線が放たれる。


「きゅっ!」


 ディックはセゾンに体当たりしセゾンを庇う。もろに受けたディックは地面を何度も打ちながら壁まで飛ばされる。


「「ディック!!」」


 セゾンは急いでディックに駆け寄る。するとまた目から光線が放たれる。


「させない!」


 土の壁を作り防ぐが一瞬で壊れる。


「上でも見てろ!」


 懐に入ったヴェスナーが顎に一撃を入れ、頭を天井に向かせる。おかげで光線は天井に当たり崩れ墜ちる。


「ディック、しっかりするっす!」

「きゅ……」

「ディック!」


 ハヤトは抱き上げられているディックに近づく。ディックは念話を使う。


『セゾン、怪我無い?』

「え……ディックなの? なんで俺なんかを庇ったすか……」

『それは、友達だからだよ? よかった……怪我無くて』


 するとディックの身体が光りだし、徐々に薄くなっていく。


「ハヤト! ディックの身体が!」

『そろそろ、限界みたい……』

「待ってろ、今ラストエレクサーを飲ませるから」


 ディックは頭を横に振り飲むことを否定する。


「な、んで飲まないんだよ……」

『この身体は魂だけの存在なんだ。だから飲んでも意味がないんだ。少しの間いなくなるけど、心配しないで水の階層世界にある本体に戻るだけだよ』

「もう、戻ってこないすか?」

『ちょっと無茶しちゃったから、多分これないと思う……』

「そ、そんな……いやっす! もっとディックといたいっす!」


 ディックは嬉しさと悲しさが混ざった表情で言う。


『ありがとう、セゾン……』


 尾ひれの方から光の粒子になり消え始める。 


「ディック、必ず水の階層世界に行くよ。待ってて」

「俺も絶対に会いに行くっす!」

『うん、待ってる』


 その一言を最後にディックは消え、セゾンの掌にディックと同じ瞳の宝石が付いた指輪が残る。


「これは?」


 セゾンがハヤトに尋ねようとした時、冷酷大鬼が目を開け動き出す。その代わり額の第三の目は閉じる。


「あいつを倒してディックの仇を撃とう」

「わかっているっすよ」


 ハヤトとセゾンは拳を交わす。すると二人を中心に魔法陣が浮かび上がる。


 冷酷大鬼は剣全てをハヤトたちに向けて投げるモーションに入る。


「やらせない!」


 冷酷大鬼の足元に土の柱を生み出す。態勢を崩したところにヴェスナーが一撃を入れる。


「っ! その態勢で受け止めるのかよ! おっと!」


 止めるだけではなく追撃をする冷酷大鬼だが、ギリギリでヴェスナーは躱し離れる。


「わおーん!」


 冷酷大鬼の頭上に氷塊を落とす。しかし、剣全てで受け止め受け流す。


 そんな激しい攻防の中、セゾンは魔法陣に戸惑い、ハヤトは魔法陣から流れ来る情報を読み取る。


「は、ハヤトこれなんすか!?」

「あと少し……よし、セゾン。落ち着いて聞いて」

「なんすか! 急いで加勢しないと!」


 セゾンの肩を両手で掴み落ち着かせる。


「いいから、聞いて」

「は、はいっす」

「セゾンが持っているその指は海嘯の指輪って言って、その指輪を嵌めるとディックの力が使えるようになるんだ」

「そうなんすか!」


 速攻で人差し指に嵌めるが何も起こらない。


「何も起こらないっすよ!」

「最後まで聞いて! 使うのに条件があるの」


 静かに頷くセゾン。ハヤトは続ける。


「その条件は俺と血の盟約をすること」

「へ?」


 間が抜けた返事をしてしまうセゾンだが、ハヤトは細かく説明する。


「メリットはディックの力が使えること。デメリットは俺が死ぬとセゾンも死んでしまうこと、逆でも同じ」

「……」


 腕を組み「うーん」と考えるセゾン。すると、ヴェスナーたちの方で激しい音がする。

 リルが無数の鋭い氷塊を作り冷酷大鬼に放ち、後ろではクシュが大怪我したヴェスナーにラストエレクサーを飲ませていた。


「それやればあいつを倒せるっすか?」

「うん」

「なら、血の盟約をするっす」

「わかった」


 その時、遠くで冷酷大鬼は第三の目から光線を放ち、運悪くクシュが孤立してしまう。それに気づいた冷酷大鬼はクシュに狙いを定める。


「ハヤト急ぐっす!」

「わかってる! ……我、神獣と契約せし者。血の盟約により、汝と永劫なる契りを結ばん」


 ハヤトが言葉を紡ぐと魔法陣の光が一段と強くなる。その時、二人の記憶が交わる。幼少期から現在まで。

 セゾンは目を見開いてハヤトを見る。ハヤトは微笑み返す。


「後で話すから。今から俺が言うこと分かるよね?」


 セゾンは無言で頷く。


「行くよ!」


 ハヤトは手をかざすとセゾンも真似をする。そして言葉が重なる。


「「海嘯の白鯨よ、血の盟約により我と汝の敵を押し流せ! タイダルディック!」」


 二人の周りから大量の水が湧き出て大津波が生まれ冷酷大鬼を壁際に押し流す。

 

 ハヤトがしようとしたことをいち早く察しリルはヴェスナーとクシュを回収すると空中に逃げる。


 大津波が収まるとハヤトとセゾンの手には海嘯の短剣が握られている。二人は冷酷大鬼に向かって駆ける。


 それに気づいた冷酷大鬼は剣を作り出す。


「「はあああああ!!」」


 しかし構える前にセゾンに右足を切断され、ハヤトには左足を切断され冷酷大鬼は地面にうつ伏せに倒れる。


 冷酷大鬼は目を閉じ第三の目で光線を所かまわずに放つ。そして、切断されたはずの足が徐々に修復される。

 全員は躱すことに必死で近づけないでいる。


「っく! 回復能力持ちかよ!」

「ハヤト! 俺がやるっす! 援護頼むっす!」

「任せろ!」

 

 セゾンは動きを止め海嘯の短剣を掲げる。すると、セゾンの背後に水で出来た特大の大剣が生まれる。

 ハヤトは光線がセゾンに被弾しないように海嘯の短剣で弾くの集中する。


「これで! 終わりだあ!」


 セゾンは海嘯の短剣を振り下ろすと大剣も冷酷大鬼に振り下ろされた。

 

 冷酷大鬼は足が完全に修復され立ち上がり、全部の剣で水の大剣を受け止める。


「まだ、足りないっすか!」


 その時、突如出現した大剣がセゾンの作り出した大剣と合わさり二倍の大きさになる。


「ハヤト!」


 第三の目が閉じたことでハヤトも水の大剣を作り出したのだ。


「行くよ、セゾン!」


 水の大剣の勢いが増し、冷酷大鬼が徐々に押され剣に罅が入る。


「はあああああああああああああ!」

「うおおおおおおおおおおおおお!」


 最後の一押しで水の大剣は冷酷大鬼の剣諸共真っ二つにされ、魔核も壊され冷酷大鬼身体は崩れていった。


「はぁ……はぁ……はぁ……やっと……倒し、たっす……」


 意識を失ったセゾンは倒れそうになるところをハヤトが支える。


「お疲れセゾン……って俺も、限界だけどね」


 そう言いハヤトは仰向けに倒れ、セゾンが乗りかかる感じになってしまう。


「「ハヤト!」」

「わふ!」


 ヴェスナーたちは慌てて駆け寄る。ハヤトは頭だけ動かし見る。


「おい、大丈夫か?」

「身体が動かないだけで後は、大丈夫だよ、いて!」


 ヴェスナーに軽く頭を叩かれる。


「それは大丈夫って言わねぇよ。ラストエレクサーまだあるか?」

「【無限収納】の中にあるけど、指一本動かせない取り出せない」

「一旦ダンジョンの外に出るぞ。リル手伝って」

「わふ!」


 リルはしゃがみ、ヴェスナーとクシュは二人をリルの背中に乗せるのだった。


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