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冒険者の少年

 俺はいつのまにか寝てしまっていた。洞窟の外はまだ雪は降り続いている。子供の体温は戻っていたとりあえず一安心だ。

 少しお腹が空いたため子供を起さない様に離れ焚火近付くに移動した。【無限収納】から食材と鍋を取り出し料理を始める。前の世界では一人暮らしをしていたからある程度なら料理はできる方だ。作るのは肉と野菜を大きめに切ったクリームシチュー。しばらく煮込んでいると洞窟の中に匂いが充満する。とりあえず味見した。美味い。食事を始めようとしたら視線を感じ振り向いたら子供がこちらをよだれを流しながら見ていた。


「食べるか?」

「いいの! やった」


 器にシチューを入れ渡す。子供は熱々のシチューをものすごい勢いで平らげてる。おかわりもした。少し多めに作ったはずなんだが鍋の中は空になった。これだけ食べれるなら大丈夫だな。

 

「美味しかった! えっと……」

「ハヤトだ。」

「俺はロイド。ハヤトさんシチュー美味しかった。それと吹雪熊から助けてくれてありがとうございました」


 お互い自己紹介し俺は何故あそこにいたか尋ねた。ロイドは昨日十二歳になり冒険者ギルドで登録したあと常時討伐依頼の雪兎(スノーラビット)を狩りに来ていたが気が付いたら遠くまで来てしまった。その時に偶然遭遇してしまったそうだ。

 ちなみに雪兎は危険度Eの魔物だ。白い毛皮に覆われ赤い目が特徴的。雪景色と同化して見つかりにくいがしっかり見極めれば然程脅威では無いため初心者冒険者は狩の練習にしている。


「ハヤトさん、頼みたいことがあります!」

「頼みたいこと?」


 突然の頼みを言われたが内容は村まで護衛をしてほしいそうだ。詳しく聞くと吹雪熊から逃げるために荷物と武器を失ったため道中で魔物と遭遇してしまったら戦えないとのこと。丁度いく村だったので俺は了承した。


「ハヤトさんありがとうございます」

「気にしなくてもいいよ。案内は頼むよ」

「任せてください」





 翌朝、雪はすっかり晴れて雲一つない空になっていた。早々に洞窟を出て移動を始めた。村まで約三時間ほど、ロイドと話しながら街道を進んいると【世界地図】に反応が出た。色は白。敵対してない魔物を示す。反応がある方を見ているが見当たらない。


「どうかしました?」

「遠くに魔物がいるみたいだけど目視できなくて」


 指をさした方をロイドが見る。するとロイドの黒い瞳が赤みを帯び始めた。やがて瞳全体が濃く明るい緋色になった。カメラがあれば撮りたいぐらいに綺麗な緋色だ。


「うーん、あれは雪兎ですね。てか遠くにいるのによくわかりますね……え、えっとなにか顔についてます?」


 思わずロイドの顔を凝視していたようだ。素直に思ったことを口に出した。ロイドは鼻を掻いて照れている。


「へへっ、そういってもらえて嬉しいです。この目は……俺のスキルです」


 どうやらスキルを使うと赤くなるらしい。ロイドのスキル【鑑定】は対象を視認することで名前や状態などがわかってしまうスキルだ。そんな説明を聞いてると【世界地図】に新たな反応が三体。色は青。敵対してない魔物を示す。先ほどいた雪兎の方に向かっている。

 あれは危険度Dのアイスゴブリンだ。二足歩行する人型の魔物。集団で行動するため集団戦に慣れていないと危険。雑食で同族すらも食べてしまう時がある。繁殖力が高く常時討伐依頼にされている。

 どうやら雪兎を狩りに来ている様でまだこちらに気づいていないがロイドに伝え野放しにしても危ないからと討伐することにした。【無限収納】から弓を取り出した。もちろんこの武器も神獣武器なのだ。名は颶風の弓――颶風の幻蝶から授けられた神獣武器。属性は風。


「え!? ハヤトさん今どこからだしたの!?」


 ロイドが驚いているが今は無視して弓を構えた。すると周りの音が消え静寂の世界になる。弦を引くと薄緑色の矢が生成された。狙いを定め一矢を放つ。すると一矢が三本に別れそれぞれのアイスゴブリンの頭部を貫いた。頭部を失ったアイスゴブリンたちはその場で倒れる。それに気づいた雪兎は逃げてまった。


「なにいまの……めっちゃかっこいい!」

「そうか?」

「うん、めっちゃかっこよかった。俺にも教えてほしいです!」

「こ、今度な」

「やった! 絶対約束ですよ」

「それよりも回収しよ」

「うん」


 アイスゴブリンの死体を回収して再び歩き始めた。特に魔物とかも遭遇することなく太陽が傾き始めたころに無事に村まで辿り着けた。入り口には門兵が一人立っていた。


「あれが俺が住んでる村、カルト村だよ。あ、あそこにいるのはアーケンさんだ。アーケンさんー」

「お、ロイドじゃねえか! 無事だったのか!」


 門兵ことアーケンさんはロイドが帰ってこないことに心配していたようだ。ロイドは俺の事を紹介したあとこれまでの経緯を話した。


「そうか……ハヤトさん、ロイドを助けてくれて感謝する。ついて早々なんだがこの件を冒険者ギルドに報告してほしい。ロイドも一緒についていけ」

「「わかった」」


 二人して返事し村に入ろうとしたが俺は身分証がないため銀貨一枚を払った。あとで身分証を作って見せればお金は返してくれるそうだ。


「ようこそカルト村へ」


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