次の目的
「人、少なくね?」
冒険者ギルドに辿り着いたハヤトたちだが、ギルド内はほとんど人がいないことに疑問に思う。
「そうだね。なんかあるのかな……まぁ受付空いているしさっさと手続きしよ」
「それもそうだな」
そう言い空いてる受付に行くと最初に来た時に対応してくれた受付嬢が座っている。
「こんにちは皆さん。パーティー『銀の槍』のヴェスナーさんとクシュさんにハヤトさんですね。本日はどのようなご用件で?」
受付嬢は一回しか会っていないのに覚えていたことにハヤトたちは驚く。ハヤトはすかさず受付嬢の胸元にある名札を見る。そこには『副ギルドマスター:アイリス』と書かれていた。
「俺たちの事、覚えていたんですね。えっと……副ギルドマスターのアイリスさん」
「アイリスでいいですよ。はい、王都にいる冒険者の顔と名前でしたら全員覚えていますよ?」
しれっと凄いことをなんともないように笑顔で言い放つアイリス。
「アイリスさん、凄いです!」
「すっげぇ。俺には無理だ」
「うん。ヴェスナーには無理」
「そこは肯定しないで!」
「うーん、確かに」
「ひっでぇ!」
そんなやり取りをみてアイリスは口を隠し上品に笑う。
「ふふふ、話は逸れましたが本日はどのようなご用件で?」
ヴェスナーが答える。
「そうだった。今日はハヤトを正式にパーティーに加入させたくて手続きにきました」
「わかりました。では、こちらの用紙に記入とヴェスナーさんとハヤトさんのギルドカードを提示をお願いします」
「わかった」
ヴェスナーはすらすらと必要なことを用紙に書き、残りはハヤトの署名だけの状態にしハヤトに渡す。受け取ったハヤトは一瞬硬直する。
「どうした?」
「え、なんもないよ?」
こちらに来てから字を書いたことがないハヤトは書けるか不安になる。だが、いざ書いてみると日本語じゃない文字を、すらすらと書いていることに一安心する。
書き終わるとアイリスに渡す。用紙の上から下まで確認した後アイリスは頷く。
「では、ギルドカードをお願いします」
そう言われヴェスナーは首にかけているギルドカードを、ハヤトは鞄から取り出しそれぞれカウンターに置く。
「ハヤトさん、Sランクになられたんですね。おめでとうございます」
アイリスからは祝福の言葉を掛けられる。
「ありがとうございます」
ハヤトは照れ笑いする。
「ハ、ハヤト……その、色……」
「……白、金、色?」
機械みたいな喋り方をするヴェスナーとクシュにハヤトは話す。
「あ、そういえば言ってなかったな。氷帝様と会った時に「危険度Sの魔物を討伐できる人がBランクだと冒険者ギルドの評価が疑われちゃうからね」ってことを言われてSランクにしてもらったんだ」
「そうだったのか。これがSランクのギルドカードかぁ……」
「初めて見た……」
まじまじと見ているヴェスナーとクシュにハヤト。
「アイリスさん待っているし早く手続きしよ!」
「あ、そうだったな。アイリスさんお願いします!」
「はい。では次にお互いのカードに血を一滴付けた後、署名欄にも血を一滴付ければ手続きは完了になります」
アイリスの指示に従いあっという間に手続きは終わる。
「お疲れでした。これで手続きは完了しました」
「ありがとうございます」
ハヤトは立ち去る前気になっていたことをアイリスに尋ねる。
「あの、アイリスさん。今日は冒険者が少ないんと思うんですが何かあったのですか?」
「ええ、ニ、三日前に新しいダンジョンが発見されまして、冒険者の皆さんはそちらに挑んでいますよ」
「どこにあるんですか?」
「王都から東に馬車で二日行ったバラス村の近くです。馬車が出ているのでそれでいくといいですよ」
「ありがとうございます。アイリスさんそれじゃ」
冒険者ギルドを出て近くでやっている屋台でセゾンとディックのお土産の串焼きを買って宿に戻る。
「あ、おかえりなさいっす」
「きゅ!」
ディックはぷかぷかと浮き出迎えてくれる。
「安静にしてたか?」
「もちろんっす。ねぇディック?」
「きゅ!」
「お前らほんと仲いいな~」
それぞれベットに座りお土産の串焼きを食べた後、今後の予定を話し合う。
「さっき冒険者ギルドで聞いた話なんだけど、新しいダンジョンが発見されたぽいから俺たちも挑戦してみないか?」
「おお、いいっすね! 俺っちは賛成っす!」
「私も行きたい」
セゾンとクシュは賛成の意見。
「ハヤトは?」
「俺も行きたい!」
「じゃあ決まりだな。よし、明日朝一の馬車に乗って行くためにもしっかり準備するぞ!」
「「「おう!」」」
「わふ!」
「きゅ!」
皆それぞれ必要な物を買い出しに行く。買い揃えた頃には夜になった。
夕食をとり、最後に持ち物確認をして早々に寝る。
次の日。
ハヤトたちは朝食を取りダンジョン行き馬車の停車場に急いで向かう。セゾンが二度寝したせいだ。なかなか起きないセゾンに、ディックは見かねて周りが引くぐらいに容赦なく叩き起こす。おかげでセゾンの顔が赤くなりポーションを使う羽目になった。
「セゾン学習したか?」
「ハイっす……」
「ディック怖かった……」
「あれは、うん、怖かった」
「きゅ?」
ぷかぷかと前で浮くディックはつぶらな瞳で見てくる。
「ほら急ぐぞ!」
「わふ!」
ハヤトたちは走りどうにかギリギリで停車場に辿り着く。数組の冒険者たちが既に馬車に乗り込んでいた。ハヤトたちも慌てて馬車に乗り込んだ。
「どうにか乗れたな」
「だな!」
「セゾンが二度寝するから」
「うぅ……悪かったっすよ!」
談笑していると出発の時間が来たようで御者が大声で言う。
「バラス村に出発します!」
馬車は動き出した。ハヤトは初めてのダンジョンに期待と不安を抱くのだった。