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氷帝と……

 氷帝――ノヴァは軽快に歩きハヤトの向かい側のソファーに座る。

 ハヤトはリルとじゃれるのを止めて姿勢を正す。リルはハヤトの横で丸くなる。


「やっと会えたね! いやー、まさか朝に大雪が降るとはね……それに突然晴れて僕、びっくりしたよ」


 ノヴァは微笑みながら話し始める。大雪の件でハヤトは一瞬ギクッとなるが顔に出ないように装う。


「あ、あの時はびっくりしました」

「そうだよね! 一体誰がやったんだろうね~」

「そ、そうですね~」


 とりあえず誤魔化すために相槌を打つハヤト。


「まぁいいけどね!」


 いいのかよ!っと内心でツッコミを入れるハヤトは苦笑した。


「じゃあ本題ね。フロストあれ持ってきて」

「かしこまりました」


 ノヴァに呼ばれたフロストは二つの袋を台車に乗せ運ぶ。


「遅くなったけど、劫火竜の金貨一万枚と護衛中に討伐したマンティコア金貨一万枚。合計金貨二万枚だよ。受け取ってね」

「金貨二万枚!?」


 あまりにの金額にハヤトは口を大きく開け驚く。


「ハヤト様、こちらの金貨如何なさいますか?」


 フロストに尋ねられどこかに飛んでいた意識を取り戻すハヤトは少し考え言う。


「あ、この鞄に入れるので」


 ハヤトは立ち上がり金貨が大量に入っている二袋を鞄に入れる。


「魔法の鞄ですか……」

「ハヤトは魔法の鞄持っているんだ。便利だよね~」

「はい、すごく助かってます」


 入れ終わると再び席に戻るハヤト。リルはまだ丸くなっていた。


「報酬金はこれで終わり。それと、ハヤト。ギルドカード貸りてもいいかい?」

「はい、構いませんが……何するんですか?」

「いいから、いいから」


 ハヤトの問いには答えず急かすノヴァ。鞄からギルドカードを取り出しノヴァに渡す。


「ありがとう。フロスト」

「はい、既にご用意しております」


 ハヤトの銀色のカードをフロストに渡し、フロストはノヴァに白金色のカードを渡す。太陽のような笑顔でノヴァは言う。


「はい。これがハヤトの新しいカードだよ!」

「こ、これって、Sランクの」

「うん。危険度Sの魔物を討伐できる人がBランクだと冒険者ギルドの評価が疑われちゃうからね。じゃ、血を一滴カードに垂らしてね」


 そう言い針を渡すノヴァ。人差し指に針をチクっと刺し血を一滴ギルドカードにつけると光だす。光が収まるとギルドカードにはハヤトの名前が刻まれていた。ハヤトはカルト村で作った時を思い出す。


「これでハヤトはSランクだね! おめでとう!」

「ありがとうございます。あの氷帝様。その古いギルドカード貰ってもいいですか?」


 ノヴァはフロストみて確認する。フロストは頷き返す。


「構わないけど。そんなこと聞く人、初めてだから理由聞いていい?」


 ハヤトは恥ずかしそうに鼻を掻きながら優しい眼差しで言う。


「俺にとって、その……思い出の一つだから」

「そっか……フロスト」

「ハヤト様、こちらを」

「ありがとうございます」


 フロストから受け取り、ハヤトは立ち上がり深く頭を下げる。そして古い銀色のカードと新しく貰った白金色のカードを大事に鞄にしまう。


「よし、これで僕からは終わりだね。フロストたちは外で待機してて」

「かしこまりました」


 そう言いフロストとメイドは外に出る。


「うん、外出たね。もういいよタイダルディック様!」

「えっ!」


 ノヴァの口から神獣の一柱の名前を聞き驚くハヤト。すると後ろから気配を感じる。そこにはクリーム色した髪の毛に海のように深い青の瞳ををした爽やかな青年が突如現れる。


「やっと会えたね、ハヤト」


 タイダルディックの気配を感じ丸くなってたリルは身体を起こす。


「え……タイダルディック、なの? な、なんで、人の、え……」


 色々起こりすぎてハヤトは困惑する。


『ディックか、久しいな。その姿……初代か?』

「久しぶり。うん、そうだよ」


 リルとタイダルディックと名乗る男性は話している間にノヴァはハヤトに近づく。


「やっぱり、あの狼はフィンブルリル様だったんだ」

「知ってたんですか?」


 少し落ち着いたハヤトが尋ねる。


「うん、でも知ったのは昨日だけどね」


 ノヴァは語る。

 昨日、ノヴァの公務中に突然部屋に現れ、ハヤトとリルの事を聞いたようだ。


「初めまして、フィンブルリル様。そして改めましてタイダルディック様。現氷帝に就いておりますノヴァと申します。そして十帝代表してあの日の過ちを謝罪いたします」


 片膝をついてリルたちに挨拶し、昔の過ちを謝罪するノヴァ。代々帝を継ぐ者は昔に起きたことを忘れぬよう伝承される。


『謝罪を受け入れよう。ただし、我らはハヤトについて行く故、我らのことは他の帝に言うのではないぞ?』

「俺が昨日伝えているから大丈夫だよ」

「はっ! かしこまりました」


 ノヴァは立ち上がり一礼した後扉をに向かって歩き始める。


「じゃ、僕は公務があるから行くね。終わったら外で控えているフロストに声かけてね」


 無理矢理作ったような笑顔で言うノヴァは立ち去る。部屋にはハヤトとリル、そしてタイダルディックと名乗る男性だけになる。


「本当にタイダルディックなの?」


 本当に今更なことを聞くハヤトにリルたちは呆れる。


「そこまで言うなら元の姿に戻るね」


 そう言った途端、男性の周りに水が集まりだす。そして集まった水が弾け。小さな白いイルカ?が宙に浮き現れた。


『これで信じてくれた?』

「う、うん」

『よかった』


 やっと信じてもらえたタイダルディックはハヤトの頭に移動してペタッと乗っかる。


「疑ってごめんタイダルディック」

『許さないよ』


 タイダルディックは拗ねたように言うとハヤトは困惑する。


「え……どうしたら」

『ディックって呼んでくれたらなぁ~』

「……ディック?」

『うん!』


 一気に機嫌がよくなるディックにハヤトは苦笑した。


「それでディックはなんでここに?」

『もちろん、ハヤトと契約するために決まっているよ? ここに来る時に大分力使っちゃったから早く契約しよ!』

「武器出せばいい?」 

『うん! じゃテーブルとソファーを動かして場所確保して。あ、許可取ってるから安心して』

「了解」


 ハヤトはテーブルとソファーを部屋の端に移動させる。リルは手伝う気が無く移動し終わったソファーに座り眺めている。

 十分な場所を確保したハヤトは部屋の中心に海嘯の短剣を置く。


『じゃあ始めるよ!』


 そう言いディックはハヤト周りを一周する。するとリルと契約した時と紋様は違うが魔法陣が浮かび上がる。

 そしてディックは紡ぐ。


『我、海嘯の白鯨タイダルディック。汝、ハヤトを主とし契約を結ばん』


 魔法陣が光りだし光がハヤトを包む。眩しすぎて思わず目を閉じる。やがて光が収まり目を開けると床に置いたはずの武器がなくなっていた。初めてリルと契約した時と同じだ。だけど、ディックは目の前にいた。


『武器出しってみて?』

「わかった」


 リルに言われたことを思い出しハヤトは右手をかざして真名を言う。


「タイダルディック!」


 かざした右手に水が集まる。やがて短剣の形に変わりハヤトが握ると水が弾け飛び海嘯の短剣が現れる。


「うん、問題ないかな」


 一振りして違和感がないか確かめる。


『よかった。これからよろしくハヤト!』

「こちらこそよろしく!」


 ディックは口角を上げ笑っているような表情をしている。そしてハヤトの頭に再び乗っかるのだった。


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