寒い!
「う、う……ここ、は……なんか寒い」
重たい瞼を擦り、身体を起こし周りを見渡す。辺りには何もなく真っ白い雪原の世界が広がっていた。
ここがどこだかを知るため【世界地図】と唱えた。そこには『氷の階層世界』と表記されている。
氷の階層世界。
亜属性の一種、氷属性を中心に成り立っている世界。
ここの魔物は全て氷系統に進化している為、火属性が弱点である。ただし、中途半端な火力の場合は逆に凍る。
夜になると雪が高確率で降る。
この世界の王都クロウカシスには、巨大な氷結晶を使ったクリスタルタワーが中心にそびえ立つ。そこには【氷帝】が住んでいるが、一部は観光地として開放されている。
知らない知識が次々とでてくる……これがクレアが言っていた世界の知識を刻むって意味か。
【世界地図】を眺めていると鼻の先に白く小さな冷たい結晶が触れた。……冷めった! 俺は空をみた雪が降り始めた。
「雪だ……荒れる前に、どこかに避難しないと。
ここから近い村は……え、ここから三時間! うーん、お、この近く洞窟がある! そこで一旦避難しよ」
【|世界地図】を使いながら洞窟を探した。
どうにか洞窟に辿り着けた。すると途端に天候が荒れ、気温が急激に低下した。
なにかないかと【無限収納】を漁り、ローブと木片と剣を取り出した。
何故、剣を取り出したのか疑問に思うだろう……実はこの剣には炎の力が宿っているのだ。名は、炎天の剣。神獣の一柱、炎天の霊鳥から授けられた神獣武器。所持者には加護を与え、加護により各属性を使えるようになる。そう、クレアから貰った武器は全て神獣武器なのだ。
閑話休題。
剣を握り掌に炎を作り木片を燃やし、焚火をともす。念のために洞窟の入り口付近に魔物除けのお香を焚いた。することがなくぼーっと焚火を眺めていたらだんだんと瞼が重くなる。抗っがてみたものの、健闘むなしくそのまま夢の世界に旅立った。
洞窟に差し込む朝日が顔にあたり重たかった瞼を上げる。猛吹雪だった外は晴れていた。移動するなら今しかないっと思い急いで食事をし洞窟を後にした。
白銀の世界を眺めながら街道に向かって歩いていると【世界地図】に反応。色は橙色。橙色は瀕死状態の意味だ。
反応のある方角を眺めていると、子供が一人今にも倒れそうになりながら、ふらふらとこちらに向かって歩いている。俺は急いで子供に近寄った。
子供は躓き倒れそうになるがどうにか間に合い、子供を支えた。子供は意識を失っていた。全身傷だらけ、至る所出血がみれる。急いで杖を取り出し回復魔法を使った。この杖の名は光芒の杖――光芒の白虎から授けられた神獣武器。属性は光。
すると【世界地図】にさらに反応がでた。色は赤、敵意もしくは害意が有るもの。
「グラァァァァァァ」
獣の咆哮が鳴り響いた。ズドンっと重い足音が近づいてくる。そこには大熊がいた。あれは確か……
吹雪熊
氷属性の熊型の魔物。気性がかなり激しい。執念深く、獲物と見定めた物は逃げようものならどこまでも追いかける。氷属性魔法を使う。危険度A。
魔物には危険度がある。下はEから順にD.C.B.A.Sの順に危険度がランク付けされる。
「この子を追ってここまで来たのか……やるしかない」
【無限収納】から炎天の剣を取り出し、剣先に炎を纏わせた。
吹雪熊は炎を警戒して周囲に氷柱を作り出し飛ばしてきた。
剣を一振りで飛んできた氷柱を溶かした。……いける! 一気に駆け出し吹雪熊に近づく。
吹雪熊は西瓜並みの大きさの氷塊を飛ばしてくる。俺は勢いをそのままに氷塊を切り捨てた。
さらに吹雪熊に近づく。すると吹雪熊は息を吸い込み氷の息吹を吐く。
これを躱すとあの子に当たってしまう……なら共鳴するしかない!
「炎天と化せ、フレムニクス!」
共鳴。
神獣の真名を唱えることで神獣武器と共鳴し、神獣の一部の力を行使することが出来る現象。
剣はより一層激しく燃え炎が俺を包みこむ。炎を纏いながら限界ギリギリまで加速し氷の息吹に正面から突っ込んだ。
「うおおおおおおおおおおおお!」
吹雪熊を一閃。切ったところから爆発し吹雪熊を炎が飲み込む。やがて炎が収まり吹雪熊が横たわっていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……やったのか?」
肩で息をしながら吹雪熊に近づき死んでいることを剣でつついて動かないか確認。念のため【世界地図】でも確認した。色は白。白は死体を表す。
倒した吹雪熊を【無限収納】にしまい、急いで子供に近付く。子供はまだ気を失っていた。町でちゃんと休めさたいがまだここから二時間ほどの距離があるのだ。着くまでに子供の体力が持つか怪しく、一旦さっきの洞窟に戻ることにした。こちらの方がまだ近いからだ。
着くなり魔物除けのお香をたく。焚火跡に新し木片を追加して火をつけた。
子供を横に寝かせ毛布を掛けたが体温はなかなか戻らない。俺は子供を引き寄せて優しく包むように身体を密着させ毛布と一緒に包まった。