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戦いの後

「ハヤト、お疲れ」

「ヴェスナーもお疲れ」


 幌馬車に戻り、マンティコアと二十体の雪獅子を相手に勝てたこと誰一人死ななかったこを喜びヴェスナーとハヤトはハイタッチをする。


「いてて」


 腕を伸ばした瞬間、肋骨部分に痛みが生じ胸を抑えるハヤト。


「大丈夫か?」

「大丈夫じゃないかも……マンティコアに叩きつけられた時に肋骨やったかもしれない」

「まじか! 今ルージュ呼んでくる待ってろ」


 ヴェスナーは治癒魔法使いのルージュを呼びに離れた。


『ハヤト、痛いのか?』


 ハヤトの苦痛の表情を見て心配になったリルは、ハヤトの顔を舐めた。


「少し……だけだよ。心配してくれてありがとな」

『心配なぞしてない。ふん』

「ふふふ……いてて」

「お待たせ」


 リルの分かりやすいツンデレをみて笑って胸が痛くなった時ヴェスナーが戻ってくる。後ろからルージュも一緒に来た。


「ハヤトさん。今、治癒魔法掛けますね。癒しの光(ハイヒーリング)!」


 ルージュの中級の治癒魔法、癒しの光はハヤトを包み怪我や傷を治す。やがて光収まりハヤトは完治した。すると、ルージュが倒れそうになったところをハヤトが支えた。


「大丈夫?」

「はい……少し魔力を、使いすぎただけですから……休めば大丈夫です」

「そうか。あ、そうだ!」


 空中で【無限収納】を発動させ、黒い穴に腕を突っ込みこ紫色した液体が入った瓶をを取り出す。


「ルージュさん、はいこれ」

「これは?」

「マナポーションだよ? 飲んだことない?」


 ハヤトは液体の正体を告げるがルージュは困惑している。 


「飲んだことがありますが……私が飲んだのは赤色のマナポーションです。紫色のマナポーションなんて見たことないです」

「俺も見たこともないな」


 ヴェスナーも賛同する。ハヤトはそんな二人に淡々と説明する。


「これはね、光の階層世界でしか出回っていない上級マナポーションだからね。見たことないのはしょうがないよ」

「へー、そんなもがあるんだ。てか、なんでハヤトが持ってんだよ!」

「それに、なにもない空間から出してませんでした!」


 矢継ぎ早に質問するヴェスナーとルージュ。どう答えればいいか悩むハヤト。


「昔に光の階層世界の知り合いに譲ってもらってんだ。なにもない空間から出したのは俺のスキルだよ」


 ハヤトは二人の前で【無限収納】の説明をしながら実演して見せる。


「便利すぎ! てか、スキル二つも持ってんのかよ! ずりぃ!」


 ヴェスナーは心の底から羨ましいがる。


「ハヤトさん、これ飲んでも平気なんですよね?」

「うん、平気だけど。試しに俺が飲むね」


 ハヤトはルージュを安心させるために【無限収納】からもう一本、マナポーションを取り出し、ごくごくと半分まで飲む。


「ふうー、美味しかった」

「俺も飲んでいいか?」


 ハヤトの飲みかけを奪ってヴェスナーも飲む。瓶は空になる。


「ぷっは! まじで美味いなこれ」

「だろ」

「……いただきます」


 一口目を警戒して飲んでいたルージュだったが二口目からごくごくと飲んで瓶はすぐ空になった。


「ハヤトさん、すごく美味しかったです」

「口に合ってよかった。だいぶ魔力回復した?」

「はい! おかげさまで。ありがとうございました」

「こちらこそ助かったよ」


 空の瓶を回収したその時、遠くからバッツが三人を呼ぶ。


「ハヤト殿、ヴェスナー殿、ルージュ殿。そろそろ出発すから早く戻って来てくれ」

「今、戻ります!」


 代表にヴェスナーが答える。三人は慌てて幌馬車に戻る。




 ハヤトたちを乗せた幌馬車はどうにか門が閉まる前に本日泊まる村――フロス村に到着した。

 先日と同じく宿は二つに別れ、それぞれ移動した。

 レド村よりも大きい宿だった為、今回はベットが二つある部屋を二部屋用意してもらったが問題が発生した。


「俺だ!」

「俺っす!」

「いや、私!」


 部屋の前に到着すると誰ハヤトと一緒の部屋になるかの言い争いが始まるが誰も譲ろうとしないため長引いた。


「もう、じゃんけんで決めれば?」

「「「それだ!」」」


 ハヤトの提案でじゃんけんが始まる。空腹を感じたハヤトは早く終わることを祈ったが、案の定あいこが続く。どんだけ仲がいいんだよ!と心の中で叫ぶハヤト。そして長く続いたあいこが終わり迎えた。


「勝った」


 クシュは高らかに拳を上げ、ヴェスナーとセゾンは両手両膝をついて落ち込んでいる。

 部屋に荷物を置き早々に食堂に向かうハヤトたち。食堂では怒った表情で仁王立ちして待っていた。


「遅いですの! 他の皆さんはもう食べ始めてますわよ! ほら、早く並びますわよ!」

「「「は、はい!」」」


 ソフィアの迫力にハヤト、ヴェスナー、セゾン、クシュの四人はピシッと姿勢を正し、言葉従った。

 それぞれ夕食をトレーに乗せ席に座る。席順はレド村の朝食を取った時とほとんど一緒だが、ハヤトの隣にはルージュが座った。


「ハヤトさん、まだ痛いところとかあります?」


 騒がしく和気藹々と話してる中でルージュは小声で尋ねる。


「ううん、どこもいたくないよ。心配してくれてありがとな」

「い、いえ」


 ハヤトは微笑んでお礼を言うと頬を赤くさせルージュは俯く。

 食事後、御者のバッツとガッツも交わり明日の事の打ち合わせをする。三十分程でおわりそれぞれの部屋に戻った。

 部屋に着いて早々ハヤトはベットに飛び込む。リルもハヤトを覆い被さるようにベットに飛び込んだ。


「リル、重いって」

「わふ!」

「ふふふ」


 もう一つのベットに座ったクシュはハヤトとリルのじゃれ合っている様子をみて微笑んだ。


「ハヤト、リル。今日はお疲れ様」

「クシュもお疲れ様」

「わふ!」


 お互いに労い合う二人は自然とそれぞれのベットで横になる。リルはハヤトの隣に横になりハヤトはもふもふの毛に抱き着く。


「さっき、ルージュと何話してたの?」

「ん? 怪我したところまだ痛むか話してだけだよ」

「怪我したの!?」


 クシュは身体を起こし尋ねる。起き上がる音がしてハヤトも起こしクシュに身体を向ける。


「マンティコアに掴まって、地面に叩きつけられた時肋骨をやっちゃてルージュに治してもらったんだ」


 するとクシュはハヤトの近寄り、胸に手を据える。


「もう痛くないの?」

「う、うん。痛くないけど……クシュ」

「うん?」


 若干上目遣いで答えるクシュ。


「その、恥ずかしんだけど……」

「あ、ごめん! おやすみ!」


 ハヤトに指摘され、顔を茹蛸のように赤くさせ慌てて自分のベットに戻るクシュ。


「お、おやすみ……」


 少しドキドキしたハヤトだが、横になった途端一気に疲れが襲ってきて早々に眠り就くのだった。


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