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正体

「どうしたんすか? 早く行かなきゃ」


 一刻も早く助けに行きたいセゾンにハヤトは伝える。


「セゾン、あれは……敵だよ」

「え……」


 ハヤトのその一言にセゾンだけではなく皆に緊張が走る。その時、ソフィアとバッツが様子見に来る。


「どうかしましたの?」

「何言ってるんすか!」


 困惑したセゾンがソフィアの言葉を遮る。


「落ち着けセゾン!」

「で、でも」

「いいから!」


 セゾンを落ち着かせヴェスナーは真剣な眼差しでハヤトに尋ねる。ソフィアは傍観している。


「あれが敵だと言い切れる根拠を教えてくれ」

「俺のスキル【世界地図】には敵や味方の状態を色で区別が出来るんだ。それであの倒れている人の色は赤。敵意もしくは害意が有るものを示すんだ。それに……この幌馬車は囲まれている」


 幌馬車の周囲にも反応があることを伝えるハヤト。


「あの倒れているのは囮ってことか……」

「だと思う」


 ヴェスナーは少し考えすぐ決断する。


「わかった。ハヤトを信じるぜ! ソフィアもいいか?」

「ええ、もちろんですわ」

「それで作戦だけど、誰かが囮役の所に行くと周りの奴らが幌馬車を襲い動くとはずだ」

「なら俺が行くよ」


 自ら行くことを述べるハヤト。


「ダメだ、ハヤト一人でなんて危険すぎる」

「そうですの」


 案の定、ヴェスナーとソフィアは危険ということで否定する。だがハヤトは意見を曲げなかった。


「リルも一緒だから一人じゃないよ」

「わふ!」

「それにこの中で一番ランクが高いのは俺だよ。俺が行った方が危険が少ないでしょう?」


 パーティー『銀の槍』と『暁の黒蝶』のメンバーは全員ランクCの冒険者たちだ。反論できないことを言うハヤト。

 

「そうだけど…………ああ、もう! わかったよ! ただし、無茶はするなよ!」

「わかった。幌馬車は任せたからな」

「わかってるよ。ソフィアもそれでいいか?」

「しょうがないですね……ハヤトさん気を付けくださいね」

「了解。行くよリル」

「わふ!」


 ハヤトは敵の数と配置を教えた後、外に出る。次いでヴェスナーたちも外に出た。ヴェスナーは右側、セゾンとクシュは左側。

 ソフィアとバッツはパーティーと乗客に現状を説明をするために戻る。そしてソフィアたちも外に出る。全員はいつでも戦闘に入れるようにする。ハヤトは既に氷獄の手甲を装備する。


 ゆっくりと囮役に近づくハヤトとリルは念話で話し合う。


『リル、あいつの正体分かるか?』

『分からぬが、人間の臭いのだ……』

『人間……』


 思考しながら近づくハヤトたち。


「たす……けて……」


 残り三メートルの所で助けを求める弱弱しい女性の声が聞こえる。


「大丈夫ですか? 今助けますね!」


 ハヤトは素知らぬふりして駆け寄る。


『リルはここで待ってて』

『気をつけろよ』

『分かってる』


 念話でリルに待機の指示を出し更に近づく。そしてもうすぐ触れそうな距離に近づいた時、女性はにやりと笑った瞬間、女性の腹から無数の鋭い牙が生え、ハヤトを襲う。

 襲った衝撃で舞っていた雪煙が晴れていくとそこにはハヤトはいなかった。


「! どこにいった?」


 もはや顔しか人間部分がなくなった女性は周囲を見渡す。


「ここだよ!」


 一瞬で女性の死角に現れ、重たい一撃を顔に打ち込むハヤト。叫びながら吹き飛ぶ女性は態勢を整えハヤトを殺気を込めて睨みつける。


「貴様あああああ!」


 怒号とともに女性は形を変える。

 黄色い毛皮を持っており顔の周りには茶褐色の鬣に、なんでも切り裂く爪。女性の部分は完全になくなり鋭い牙を生やした全長七メートル近くある巨大な獅子の姿に変わった。


「マンティコア……」


 その姿を見たハヤトは魔物の正体を呟く。

 マンティコアは危険度はSランク。劫火竜に匹敵する魔物だ。


「俺が行って正解だったな。よっと!」


 マンティコアは怒り狂い爪での攻撃をする。しかしハヤトは風のように避けるためマンティコアの攻撃が一切当たらない。だんだんとマンティコアは苛ついてくる。


「許さぬ、許さぬぞ! 人間風情が! 皆殺しだ!」


 その合図で隠れていた敵が現れる。

 現れたのは白い肌に丸くて黒い斑点が特徴の雪獅子(スノーライオン)だ。数は二十体。

 

 雪獅子(スノーライオン)

 単体では危険度はDランクだが群れで遭遇した際はBランクまで上がる厄介な魔物。

 

「やばいな……よっと」

「貴様! 余所見をするとはいい度胸だな!」

「お前、の攻撃が、遅いんだよ! おらぁ!」

「がああああああ」

 

 再びマンティコアに一撃を加え吹き飛び、幌馬車から更に遠ざかった。


『我はどうする?』

『こいつは俺が引き受けるから、リルはヴェスナーのところ行ってくれ』

『……分かった。遠慮なく三位一体を使え』

『分かってる』


 リルはヴェスナーの方に走り出す。

 

「貴様は殺す! 貴様は、殺す! があああああああああああ」


 マンティコアから黒いもやもやが溢れ出る。するとマンティコアの身体が歪み分離し始める。


「まじかよ……」


 そこには同じ姿だが本体よりも暗い色をしたマンティコアが生まれた。


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