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本気でプレイするダイブ式MMO ~ Dive Game『Re:behind』~  作者: 神立雷
第零章 さぁゲームを始めよう
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第一話 一ヶ月間遊んでみよう

□■□ Re:behind 首都『ゲート』付近 □■□




「…………さて、そういう訳でお前らには自由が与えられた」




 そうしたり顔で話すのは、威圧(プレッシャー)すら感じる程の大男だ。

 綺麗に剃られたスキンヘッド。一つひとつがどっしりとした顔のパーツ。はち切れんばかりの筋肉は、柔軟性に難がありそうな素材に押し込められ、ぎしりぎしりと悲鳴をあげさせて。まるでファンタジー世界に生息する大鬼(オーガ)のようだ。

 そんな恐ろしい容姿に追い打ちをかけるように、そのイカつい顔と身体にタトゥーまで入ってるっていうんだから……リアルに恐怖を覚えてしまうぜ。


 そう。何しろここは、仮想現実。"極めて現実に近い、作られた世界" だ。

 眠りながら見る夢より現実的(リアル)な、現実と区別がつかないような世界の中で、すぐ目の前に巨体のスキンヘッド・タトゥー男が立っていたら……普通に怖くなってしまう。


 そんなイカつい大男を前にしているのは、土の地面に座る新入りの俺たち。

 多くの人が踏みならしたのか、妙に(たいら)な地べたに座り、それぞれ真剣な顔で話に耳を傾ける……俺を含んだRe:behind(リ・ビハインド)初心者の5人組だ。




「これから何をしよう? 早速この街…"首都"と呼ばれているが、そこから外に出てみてもいいし、立ち並ぶ店を冷やかしに行ってみてもいい。やりたい、なりたい、作りたいと、はっきりした目的があるのならそれに向かって行動を始めてみてもいいだろう。お前らはここで何をするにしても、ひたすら自由に選ぶ事が出来る。さぁ、行ってもいいぞ」




 まるでかつては自由がなかったような言葉で、それは紛れもない事実でもある。

 好きに出来る事なんてのは殆ど無いと言っていい現代の日本から接続した俺たちは、唐突に与えられた自由にとりあえず困惑した。




「……ああ、そうだよな。どうしたらいいかわかんよな。みんながそうだし、俺もそうだった。しかしダイブ初日ってのは、そんなに悠長に過ごせるもんじゃない。何しろダイブ時間が限られるし、この世界に来て浮足立った気持ちを押さえつけるのも難しいからなぁ」




 ニカっと笑う男の歯が白く光る。

 爽やかな雰囲気を出したつもりなのだろうが、その笑顔は控えめに言っても悪人面にしか見えない。

 簡単に言えばすげえ怖いくて、俺たちは苦笑いをこぼすばっかりだ。




「そんな訳で、まずは俺がこの街を案内しようと思う。全部を指差し語っていたら()()()()1()()じゃ足りないからな……主に使えるところだけになる。が、知っていて損はないぜ。知るべきだと言ってもいい。ああそれと、途中で自由になりたかったら好きにしていいぞ。そういうのも、全然アリだからな」




 おずおず、と行った様子で立ち上がり歩き出す俺たち新人を率いて、地面が土で出来た部屋から出口へ進み始める男。周囲に4つある『艶のある石と、そこから溢れる光の柱』に照らされて、スキンヘッドが()()()と光る。


――――と、不意に男は顔を上げ、何かを思い出したようにぴたりと歩みを止めた。

 俺たちの先頭を歩いていた女性アバターがその突然に対応出来ず、男にぶつかるその瞬間、男と女性アバターの間に光のエフェクトが鋭く走り、"新人" はやわらかく押し戻される。




「おっとすまん、いや、よく考えたら自己紹介がまだだったな。円滑な人間関係には名前の把握が必要だ。そう思うだろ?」




 男はそう言うと、女性アバターの頭に優しく手を乗せる。

 光のエフェクトがやわらかく走り、ぽんっと弾けた。


 女性アバターを操るプレイヤーの感情を敏感に察知したのか、恥ずかしげに頬を染める姿は――――まさに現実そのもの。

 仮想である事を忘れてしまうほど、人間味の溢れる些細で大仰な感情データの入力と結果だ。




「俺はウルヴ。二つ名は【戦斧でかち割るスキンヘッドで強面の新人教官】だ。大して売れてはいないが、まぁ、なんだ。出来る限りそう呼んでくれてもいいぞ」




 俺も思ったし、皆も思った事だろう。"このハゲの『二つ名』なげぇな" と。

 なぜならそれは、俺たちがゲームを始める前から知る有名な『二つ名』とは、まるっきり違う物だったのだから。

 そんな空気を感じ取ったのか、ウルヴさんはこほんと咳払いを一つして、気を取り直したように話を続ける。




「そうだなぁ、じゃあまずは嬢ちゃん。軽めに自己紹介といこうぜ。キャラクターネームと、軽い目標ぐらいは語ってみてもいいんじゃないか?」


「――――へぇっ!? わ、私ですか?」


「そう緊張しなくていい。何しろここは自由で気楽なRe:behind(リ・ビハインド)の世界だ。互いが互いを尊重し、相乗効果で名を売って……したい事をする下地を固めていこうぜってな」




 丁度いい、と言わんばかりに、先程の件からそのままの位置にいた女性キャラクターに手のひらを向けるウルヴさん。そうして催促された彼女は、思わぬご指名に動揺を見せた。


 ……どことなく、引っ込み思案っぽい少女だ。いや、Re:behind(リ・ビハインド)の規約上18歳以上でしかダイブ出来ないから、少女ではないんだろうけど。

 それでもどことなく『少女』と呼んでしまいたくなるような、小動物的雰囲気がある。


 そんな茶色い髪の少女は、その大きな桃色の瞳を2度揺らし、決心したような顔つきでおずおずと語りだす。



「え、ええと……私は、名前は、ロラロニーです……。ちょっと前からRe:behindの世界に憧れていて、今日をずっと待っていたから、今は凄く……うれしいです。えっと、やりたい事は、冒険して可愛い生き物と一緒に遊んだり、動物に乗ったりしたい、かなぁ……」



 茶色の毛先を弄りながらモジモジしていた『ロラロニー』という名の彼女は、一仕事終えたように鼻息を吹くと、すすっと一歩下がった。



「う~む、いいじゃないか。夢と希望に溢れてるって感じだな! いいぞいいぞ。それじゃあ、ロラロニーから時計回りで行こう。次はそっちの兄ちゃん、頼むぜ」



 ロラロニーに続いて指名されたのは、その隣に居た細身の男だ。

 くるくるとした金髪に柔和な表情を浮かべる、甘い雰囲気の男性プレイヤー。ちょっと気取った雰囲気がある。上品というか、そんな具合の。




「皆さん、改めてはじめまして。私はキキョウ。ずっと昔の日本に咲いていた花で、遠い過去には秋の七草のうちの一つにも数えられていたものだと聞いています。その花開く姿は本でしか見たことはありませんが、七草粥は経験があります。繊細な中に感じられる仄かな苦味が自然の力強さを感じさせ、命を取り込むという事を改めて実感し、そしてそれを幸せに感じました。はは、少し関係がありませんでしたね。この世界では、商売や開拓に興味を持っておりまして……いつの日か、この首都に大店を構えるのが夢でしょうか。そうなった暁には、是非当店をご利用ください」




 まだ存在すらしていない店の宣伝をちゃっかりと済ませ、キキョウが一歩後ろに下がる。

 その無駄に厳かなお辞儀と語り口は、まるで貴族か何かのようだ。作り物じみてる、と言った所か。

 そんな現実っぽくない雰囲気に俺が戸惑っていると、ウルヴさんの口元がどこか満足げに緩んだ。


 そうして最後にニコリを笑みを浮かべて、キキョウが地面に再び座り――――隣にいた燃えるような赤髪の男性が、一歩……更に一歩と余分に前に出る。

 ……なんだか主張が激しいぞ、こいつ。




「お控えなすってぇ、お控えなすって! ……さっそくのお控え、ありがとうござんす。リビハは首都……の土地を3寸ばかり借り受けましての御仁義、失礼さんにござんす。手前、名をリュウジロウ・タテカワと申します。人呼んで……百鬼無双(ひゃっきむそう)のリュウジロウとはあっしの事!」




 ……人呼んで、とは現実の話だろうか? いや、考えるまでもなくそうだろう。

 今日ログインしていきなり『二つ名』がある訳がないし。って言っても、リアルで百鬼無双って呼ばれてるってのも……アレだよな。変だ。

 アホっぽいとか時代にそぐわないとか色々あるけど、とりあえず――――とても個性的だと思う。




「東へ向けば鬼とドンパチ、西へ向いたら竜とガチンコ。北へ南へカチコム日々で、名を売り顔を売り大陸全土を大股開きでのし歩く! 武でもってここに一旗掲げ、天地に名を(とどろ)かす大益荒男(おおますらお)になりに参りやしたッ!! この場でこうして顔を合わせた、兄さん姉さんおっさんも、合縁奇縁を(よしみ)にして、行く末お見知りおかれましてよろしくお引き立てのほどお願いいたしやすッ!!」




 溌剌(ハツラツ)とした表情と声色で時代錯誤な挨拶を大声で叫ぶその男は、誰も知らないその名前を、世界に刻みつけるように叫んだ。

 天を突くような逆だった赤髪と、強い意思を感じさせる真っ直ぐな瞳。股を開いて手のひらを上に、その手を前に突き出すポーズでもって繰り出された挨拶は、正直言って……意味がわからない。

 最初に自己紹介をしたロラロニーとやらに至っては『び、びっくりした……お、おひか……えっ? どういう言葉だろう? 何語?』と、のっけの数秒から理解が及んでいない有様だ。




「……ハハハッ! 面白いじゃねえか! そうだよ、お前……リュウジロウだったか? わかってるぜ、お前さんは。この世界でデカくなりたきゃ、()()が大事だ。特に今、こういう時はな」


「ありがとうごぜぇやす!! アニキ!!」




 しかし、そんな置いてけぼりの4人とは裏腹にウルヴさんは大層気に入ったようで、白い歯を見せながらうんうん頷く。いたくご機嫌のようだぞ。

 そんなウルヴさんの態度に、ロラロニーとキキョウは困惑顔。リュウジロウは成し遂げた顔。ドヤ顔とも言えるよう感じの物だ。


 ……どうしよう。もうすぐ、俺の番だよな?

 俺は至って普通の男だし、それなりの平凡な自己紹介を考えていたのだから……この空気はたまったものじゃない。

 ああいう変な感じが良いのかな?『ロールプレイ』って言うんだっけ?

 そういうのは、ちょっと苦手だ。




「うん……まぁ、後の二人もそんなに気負わず自分なりの言葉でいいぞ。リュウジロウは間違っちゃいないが、何より大事なのは "出来ることをする" って所だからな」


「全くもってその通り! あっしの事はしがない任侠野郎と差し置いて、どうぞお二方ぁ……やってくんなせぃ!」




 いや、逆にやりづれぇよ。

 立ち位置から見た順番でいうと青い髪の女キャラクターの番だけど……この空気じゃ大変だろう。


 ……仕方ないな。

 狂った雰囲気を振り払うように、順番抜かしで前に出る。

 こんな空気での自己紹介は、女の子には辛いはず。俺の普通な自己紹介で、場を整えるのが上策だ。




「ええと、俺はサクリファクト。何がしたいかはまだ決めてないんすけど……とりあえず、リビハで稼いで、リビハで食ってけたらいいなって思います。金、無いんで」


「……っと、私かぁ……。えー、ハローハロー! みなさん! 私は さやえんどうまめしば と申します~っ! 私もサクリファクトさんと同じく、やりたいことはまだないです。でも、ロラロニーさんの話を聞いて、ペットとか飼うのもいいなぁって思わされました。影響受けるの早すぎ! って感じですけど……あはは。あ、あとはやっぱり、私もリビハで生活していきたいですね。小さいけど『Metube(ミーチューブ)』にチャンネルもあるので、そっちでも稼げたらいいなって思ってます。『さやえんどうのまめしばちゃんねる』っていうので…よかったら是非みてくださいね! 一応リビハチャンネルのつもりではあるんですけど、今日が初ダイブなので……今ある動画は外で得られるリビハの情報を喋って妄想するだけの物でして……でも今日からは違いますので、よかったらぜひ! ……と、そんなわけで――――よろしくお願いしますっ!」




 短く簡素な俺と、ミーチューバーの匂いを感じさせる軽快なテンポかつ冗長な内容の、さやえんどうまめしばと名乗った女性プレイヤー。


 対極的な俺たち2名が、それぞれ個性を仄かに漂わせながら自己紹介を済ませる。

 リュウジロウはオーバーリアクションで頷き、キキョウはニコニコ、ロラロニーは名前を出されて少しビクついた。




「よし! それじゃあ……時間もないし、早速行くか! 後は歩きながら親睦を深めりゃあいいしな。リュウジロウじゃないが、人の(えん)ってのはどこで繋がるかわからんものだ。特にダイブ初日のお前たちには、この機会を大事にするのをおすすめするぜ」




 そう言いながら歩き始めるウルヴさんと、それに続く5人の新人である俺たち。

 とうとうこの世界に――――多くの人が様々な形で確かに生きる、フルダイブ式VRMMO『Re:behind(リ・ビハインド)』での生活が、本格的に始まるんだ。


 そうしてしみじみ考えれば、足に力がみなぎった。

 ずっと待ちわびたこの瞬間、俺のファンタジー生活は、この一歩から始まるんだ。




「おっし、そんなら行くぞぉ~……さぁ、新しい人生の始まりだ!


 ようこそ! Dive Game『Re:behind』の世界へ!」




     ◇◇◇




     ◇◇◇




     ◇◇◇




□■□ 首都中央噴水広場 □■□




 と、言うログイン初日の自己紹介から、20日あまりが経った……とある日。

 首都の広場でウルヴさんと再会した俺たちは、軽く思い出話に花を咲かせていた。




「え……あの時の最後の台詞って、本当は最初に言う物だったんスか?」


「ああ。本来なら最初に『ようこそ、Dive Game Re:behindの世界へ』って言うんだけどな。うっかり忘れたから、出発前にとりあえず言ったんだよ。笑えるよな! ガッハッハ!」


「マジっすか。俺、結構感激したのに」


「私も私も! 遂にリビハ生活が始まるんだぁ~って震えたよ!」




 初めてダイブインして、初めて皆と顔を合わせたあの日のあの言葉。

 いよいよ始まるファンタジー生活への期待感を高めてくれる『それっぽい』台詞でワクワクしていたのに、ウルヴさんのうっかりと適当さで言った台詞だったらしい。思い出が少しだけ色褪せる気分だ。聞かなきゃよかった。




「それにしても、お前らが初ダイブインしてからもう一月か! リアル日数ってのは早いもんだなぁ」


「ゲームの中と現実では経過する時間が違うから、感覚が狂っちゃうっていうのはありますよねっ! 頼りになるのは動画の録画時間のみって感じ!」



「そりゃ、Metuberらしいこったな。…………で、お前らは実際どうなんだ? パーティとして上手くやっていけてるか?」


「ええ、問題はありませんよ。バランスの取れた、素晴らしいパーティです」


「ほう? キキョウがそう言うなら、安心だな」


「ええ、ご安心下さい。ふふふ」




 キキョウとウルヴさんが、上級者っぽい雰囲気で言葉を交わす。

 初ダイブインは同じ日だし、パーティを組んでいるからゲームの進行度は大体一緒のはずだと言うのに、彼ら二人はまるで先輩プレイヤーのような口ぶりだ。


 ただ、そこに違和感は無いんだけどさ。

 何しろこのキキョウというプレイヤーは、とんでもない()()()なのだから。


 顔つなぎや情報収集、流通やそれによるRe:behind(リビハ)の経済なんかを知る事に日々精力的に動き回ったコイツは、もうすっかりとこの世界へ順応している。

 すでに沢山のコミュニティと繋がりを持っているし、流石初期職業を商人で初めただけあるって感じだ。本人のやる気と手腕もあるんだろうけどさ。


 ただまぁ、逆に……他のパーティメンバーたちが、あまりに自由過ぎるってのもある。

 アホみたいに剣を振るってばかりの "リュウジロウ(リュウ)" 、動画撮影だとか言う名目で、四六時中散歩ばっかりしてる "さやえんどうまめしば(まめしば)" 。

 そしてついには、一日中首都南の草原にいる『白羽ウサギ』を撫で回している、ロラロニー。

 誰も彼もが適当にVRゲームを謳歌するばかりで、キキョウのガチなビジネススタイルとはまるで真逆を行っている。


 ちなみに、そんな個性的なメンバーの中で、唯一平凡なこの俺はと言えば……。

 日によっては、リュウと一緒に剣を振ったり、あるいはまめしばと散歩したり、はたまた今度はロラロニーと一緒にウサギを追いかけたりする日々を過ごしたりしてる。


 ……別に、そんな事がしたいって訳じゃあないんだけどな。

 ただ、リュウを放って置いたらすぐさま危ない所に突っ込むし、まめしばは『動画映え』とかいう物の為に無茶をしようとする。

 ロラロニーなんか、気づけば一人でダンジョンに入り込みそうな危なっかしさがあって、ことさらに目が離せないから……俺が監視していないと、危なっかしくてしょうがないだけだ。


 そんな感じで、お目付け役というか、巻き込まれ役というか、引率というか……とにかく受け身なゲーム生活を、それなりに楽しみながら過ごしている。

 なにせ、目標のないゲームスタートだ。そういう感じになるのも当然かもしれない。




「まぁ、俺から見ても良いパーティだと思うぜ。それぞれが必要な立ち位置を持ってる気がするしな」


「ウルヴの兄貴のお墨付きとあっちゃあ、ひと安心ってもんでさぁ!」


「果敢なリュウジロウ、俯瞰で見るさやえんどうまめしば、商売人のキキョウと冷静に見るサクリファクト……それぞれ補い合ういいメンバーだ。そして何より、ロラロニー。この子のような存在は、何より大切にしないと駄目だぜ」


「……へ? 私ですか?」




 リュウやらまめしばやらは……わからなくも無いけど、ロラロニーも役割ってものがあるのか? 俺にはよくわからないな。

 こんなとぼけた奴が、何の役に立つって言うんだか。




「ハハ、そのうちわかるさ。それじゃあ、俺は行くぜ。頑張れよ、新人共」


「合点承知の助ぇっ!!!!」


「……声がデカいぞ、リュウ」


「ガッハッハ! じゃあな!」




 そう笑ってウルヴさんは立ち去った。

 見た目も豪快なら、その笑い方も豪快だ。ガハハて。




「…………それにしても……ロラロニーが必要、ねぇ……」


「むむっ? なに? サクリファクトくん」


「……何でもねーよ」


「『こいつ、必要かな?』って顔してた!!」



「そう思ってたからな、アホだし」


「あ! ひどい!」




 ロラロニーがむくれた顔で俺に詰め寄る。実際何がどう必要なのかわからないのだからしょうがない。

 むーむー言いながら俺の周りをぐるぐる回るロラロニーにでこぴんをしようとして、セーフエリア限定で発動される『接触防止バリア』とか言う存在に弾かれる。


 …………これは、アレだな。

 毒にも薬にもなりはしない、パーティ内のマスコット的な意味で必要なのかもしれない。





『セーフエリア』


 本来はRe:behind(リ・ビハインド)の世界のどこにも存在しない安全地帯。

 しかし、プレイヤーたちが集結し、そこでの生活を組み上げ、屋根のある建物や店舗、そして一定範囲内にプレイヤーが常時存在する事によって『プレイヤーの支配領域』として認められる。


 その地はモンスターがポップしない『安全地帯セーフエリア』と呼ばれ、様々な恩恵を受ける事が出来るようになる。

 今の所システムがそのように処理をする地は、街の形が整っている数カ所だけである。

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