第十九話 * おおっと *
燦々と照りつける太陽。
青く澄み渡る空と海の爽やかさたるや……と言った仮想現実は海岸地帯。
そこに佇むのは、数人のトッププレイヤーと、俺たち初心者パーティの七人。
…………そして、恐怖の人食いドラゴン。
『残機が"9"ある、死ぬ度にパワーアップするリス型ドラゴン』だ。
例えそこがどんなに心安らぐ絶景だったとしても、コイツが居ればそこは地獄に早変わり。
極上の花畑に置かれる、血糊の付いた断頭台のような台無しエッセンスだ。
「……クソゲーだな、やってらんねぇ」
「同意」
「そんな……っ! こんなの……こんなのおかしい! 我らの死力を尽くす時間は、一体なんだったのだ!!」
『さて、それでは、プレイヤーの皆さん。
気を取り直して参りましょう。まだまだ余力は残っていますね?
……そんなに悲しい顔をしないで下さい。あと9回、繰り返せば良いだけの事ですよ。
あなた方ならきっと出来ます。
反復・反芻・繰り返し。それらは、ネットゲーマーの得意分野であるのだから』
「……無理だよ、無理無理っ! こんなのもうやだっ!」
「全くもって、世知辛い世界だぜぇ……」
「ドラゴンとは、これほどのものか……と言った所でしょうか。割に合わないというのは、私のポリシーに反する所ですよ」
体がどっと重くなるような徒労感。頑張った事が水の泡で、パワーアップする事も踏まえたら……10分の1も終わっちゃいなかった。
マラソン大会で2km走って、ゴールテープを切ったと思ったら……"よし、あと30km頑張れ"とか言われた気分。
つまりは、最悪って事だ。ああ、本当に世知辛い。
『皆さんの奮迅に期待すると共に、この言葉を送ります。
"俺たちの戦いは、これからだ!!"。うふふ、希望に溢れる、良い言葉ですね。
それでは皆さん、また、いつか』
そうして消え去る運営のお知らせ。
最早誰もが答える意欲を失くして、きっと皆は思ってる。
"ダイブアウトして、さっさと寝たい"と、そう思ってる。
それ程までの死闘だったし、そうなる程の絶望なんだ。
こんな辛い所から逃げて、すやすやぐっすり眠りたい。
そう、まるでこの腕で眠る……ロラロニーみたいにさ。
「…………ぅ…………ん……」
「……ロラロニー?」
なんて考えて見つめていたら、もぞもぞ動いたロラロニー。
幸せそうに寝息を立てていやがったが、とうとうここで目を覚ますのか。
そのまま寝てろよ。今目を開けると、絶望しかないぞ。
「…………ありが……と……」
「…………」
「……助けて、くれて……ありがとぉ……」
目を安らかに閉じながら、寝言で礼を呟くコイツ。
とぼけた女でありながら、その辺はきちんと決めるってか?
こうなっては、マグリョウさんが言う『ヒロイン』ってのも……適切かもな。
「……ありがと……嬉しい……私の…………大切な…………
…………タコさん……」
「………………おい」
ふざけんなよ。タコかよ。よりによって、タコかよ。
俺とかマグリョウさんとか、もっといるだろ。
何でタコだよ、どうしてそこだよ。何時も通りに、とぼけやがって。
やってられるかこんなモン。ここまで頑張ったのに、軟体動物に手柄を取られてさ。
リスは死んでないし、俺達は『竜殺し』ならぬ『竜殺せない』だし、俺よりタコに感謝をするし。
こんな顛末、クソゲーだ。やってられない。
――――ああ、そうか。
やってられない。
だから、逃げよう。
◇◇◇
「マグリョウさん、行きましょう」
「悪いが、その意気は些か無謀だぜ。俺もお前も、文字通り手が足りねぇ」
「違いますよ。もう行きましょう、帰りましょう。
付き合う必要ないっすよ。さっさと帰って、安全な所でダイブアウトして……各々リアルで祝杯あげましょう」
「……あぁ、それもそうか」
「ロラロニーはここに居るんすよ。俺たちはもう、やる事やったんです。
後は帰って、ダイブを終えて。家に帰ってベッドに入って『ざまあみろ、クソドラゴンにクソ運営』って言って寝るだけっす」
「そいつぁ良いな。今日はいい夢が見れそうだ」
「……悪夢」
「あぁ? 天球、なんだてめぇ。俺に悪い夢を見ろってか?」
いつの間にか寄って来ていた大きな光球に寝そべる彼女が、四肢を投げ出す ぐでっ としたポーズのまま良くない事を言ってくる。
マグリョウさんをしっかり見つめて…………ついでに俺までじっと見てるぞ。
さっきからこのスピカは何なんだ。俺の事が気に入らない様子で、何か嫌な感じがする。
「ケッ……おい、クリムゾン! 相手にしてらんねぇ。アイツが俺の腕食ってる間に、とっとと帰るぞ」
「し、しかし……悪しきリスドラゴンは…………」
「無理ゲーだっての。救うべき奴は救ったんだ、さっさと行くぞ」
「サクの字ぃ、ロラロニーは俺っちが持つぜ」
「それでは私は、サクリファクトくんを支えましょう……英雄に肩を貸せるとは、光栄の極みです。ふふふ」
幸いリスはマグリョウさんの腕に夢中で、俺たち七人はそそくさと退散だ。こんな"やりすぎコンテンツ"、わざわざ真面目にやる事もない。
首都を破壊しに行くらしいけど……流石にこの人数じゃこれ以上は無謀って物だろう。
「奴を止めねば、首都は…………」
「わかんねぇ奴だな? 正義バカ。あのリスは竜型ドラゴンより明らかに強い。あの時の七人が集まった所で、殺しきるのは絶対無理だ。【死灰】の名に賭けて、断言するぜ」
「……くっ! 我が身の無力さが、恨めしいっ!!」
「何でもかんでもやろうとするのは、お前の悪い癖だろうよ。フィクションのヒーローだって、退くべき時は退くんだぜ?」
「…………それほんと? 何て作品?」
「あ~……アメリカのヒーローだよ。ど忘れしたからまた今度な」
「……そうなのか……じゃあ帰るのだ」
…………正義さんは単純だし、マグリョウさんもよく言うものだ。
これも軽戦士の軽業かね。すげえ嘘っぽいけど、効果がてきめんな、軽口と言うかそんな感じで――――
「…………ん?」
――――匂い。
芳しい匂いがした。
甘く優しい、包み込むような香り。
まるで心の隅々まで洗われるような、静謐な香りだ。
何物にも汚す事の出来ない、清純で純粋で粋然な。
これは、何の匂いだろう。
「…………白百合?」
カメラを持っていたまめしばが、ぽそりと呟く。これは百合の香りなのか。すごく良い匂いなんだな、知らなかったぜ。
「おや、まめしばさんは花に造詣が深いのですか? これは良い物ですね。胸がすくような思いです」
「腹減ったぜぇ」
珍しく知識面で遅れを取ったキキョウは、素直に感心しつつも率直な感想を言う。
こんな状況で何だかはわからないが、そのふわりと漂う物に慈しむような優しさを見出す俺と、何故か腹を鳴らすリュウ。
コイツに関しては正しく花より団子だな。
…………それにしたって……なんだかとても、心地がいい。
体の疲れも癒えるようだし、頭もすっきりして来た気分だ。
「この匂い――――!?」
「……まさかッ!?」
「…………っ」
しかし、彼らは…………【竜殺しの七人】の3人は、俺達とはまるで逆だった。
ぶるりと震えが来るような殺気を纏うマグリョウさんに、女の子の顔をすっかり引っ込めるクリムゾンさん。
そしてスピカまで目を見開いて…………全員が異常なまでの戦闘態勢。
それこそ――――あのリスと対峙している時か、それ以上の警戒を見せる。
そうして、香りが徐々に濃くなると同時に…………『彼女』は現れた。
◇◇◇
全身を覆う白いローブ。所々に入った金糸の刺繍細工は、繊細かつ丁寧な出来栄えのもの。
体のラインを見せながらも、そこに卑しい下品さはなく、触れてはいけない荘厳さを強調させて。
そしてその顔…………目は完全に閉じられて、口元は弧を描くアルカイック・スマイル。人間性を感じさせないその表情は、より一層に彼女の持つ神々しさを引き立てる。
綺麗に流れる白い髪は、白というより……白銀。
太陽の光を浴び、さらり、さらり、きらり、きらりと表情を変えていた。
そして何より…………その頭に付けた、『白百合』。
髪飾りのように頭の左辺りについた大振りの花は……ぽとりと落ちてはまた咲いて、花びらを散らしてはまた、蕾が開く。
枯れては芽吹く、白い百合。
死と生を永遠に繰り返す、無限の開花。
あれは一体、どういう事だ? そういうアイテム? どういう効果だ。
そんな彼女がトボ、トボと歩みを進める度に百合が散れば、歩んだ道には足跡のように白い花びらが残される。通ったルートが丸わかりだ。迷路とか、得意そうだと思う。
「おい、リュウジロウっつったか……?」
「へぃ。なんでございやしょう、【死灰】の旦那」
「サクリファクトから預かった"ロラロニー"を、担げ。いつでも走り出せるように。すぐやれ、今やれ、迅速に」
「…………? 合点でさぁ」
「糸目の金髪……お前は……スペルキャスターか。俺は腕が一本ないから……クリムゾン、お前がサクリファクトを担げ」
「…………了承した」
……何だ? リスから退くと決めた時より、余程話が早い感じだ。
まるで、この白い女から逃げるかのような口ぶり。
「…………最初、なんだったか」
「…… "まー" 」
「ああ、そうだ。"まー"だ。最初は "まー" 」
"最初は、まー" ?
何だかじゃんけんの前口上みたいだ。マグリョウさんとか、そういう事言うの好きそうだよな。
『最初は "まー" とか、じゃんけんかって。あほくさ』みたいな。言いそうだ。
…………言いそうだけど、言おうとしない。
そんな冗談も言ってられないほど、今は切迫してるって事なのだろうか。
「白百合……微笑み……もしかして、【竜殺しの七人】の【聖女】さんかも」
「ふむ。確かに情報とは合致しますね」
「へぇ? 聖女っつったら、優しくて一等に良い女なんだろうなぁ」
スケって。今時言う奴いないだろ。
だけどまぁ、リュウの言った事には同意だ。聖女なんて呼ばれるんだから、それはもう優しい女の子に違いないよな。
白い服に白銀の髪、微笑む姿と白百合は……ああ、言われて見れば聖女らしいかもしれないぞ。
「聞け、初心者共。今はとにかくこの場を離れる。詳しい話は後でする。焦るな、駆けるな、慌てるな。静かにゆっくり着いて来い。まるで崩れかけの吊橋を渡るような心持ちで、慎重にこの場から遠ざかれ」
そう言って有無を言わさぬ雰囲気のマグリョウさん。その内容は、まるで避難訓練だ。
リスという自然災害にすら果敢に立ち向かったマグリョウさんを持ってして、何がここまで言わせるんだろう? 不思議でしょうがない。
だけど、今は従おう。先輩の忠告は、大事にしないといけない。
◇◇◇
「ゆっくりだ……決して駆けたり、刺激を与えるような事はするな」
「合点承知の助ぇっ!!」
「……言い忘れたが、大声も出すな」
「……へぃ」
「なんか……すいません。クリムゾンさん」
「……気にする必要はないのだ。これも正義の務めなのだから」
そろり、そろりと皆で歩く。聖女を視界に入れて後ろ歩きだ。
と言っても、俺は片足しかないから……クリムゾンさんに抱かれて運ばれているんだけど。
「ゆっくり、慎重に行け。万が一にアイツが声を、恐らく第一声は "ま" から始まるが――――それが聞こえたら全速力で走り出せ」
「聖女さん……Metuberに最近の動画が無いんだよねぇ」
「ふむ……聖女に『元・聖女の広場』……白百合と赤百合……」
ロラロニーを運ぶリュウと、クリムゾンさんに運ばれる俺。
女の子に抱き上げられて情けない限りだが……乗り心地は抜群だ。
正義として、救った少女を抱きかかえる事に慣れているからか? 練習でもしてるのか?
揺れず、優しく抱かれる今は、思わず眠ってしまいそうなほどの快適さなんだ。
「チッ……ツイてねぇ日だ。よりによってアイツが来るとは……」
呟くように悪態を吐くマグリョウさん。人嫌いの更に上、憎しみすら持っていそうな声色だ。
「マグリョウさん。結局の所、あの女ってなんなんすか? 今はどういう状況っすか?」
「…………アイツは、チイカは、一言で言えば……イカれたチーターなんだ」
「チーターって……チートっすか?」
「ああ……紛うことなき、ソレさ。『聖女の広場』を作り上げ、その名を『元・聖女の広場』に変えた狂人。微笑みながら人を殺すサイコ野郎。"安全地帯"でPKを行う、ルールを無視したチート使いだ」
そう言いながらも視線はきっちり聖女に向けるマグリョウさん。
一挙一動見逃さないぞ、という強い意思が籠もった目に釣られて俺も見てみれば……聖女はきょろ、きょろと顔を動かしていた。
「アイツは目が悪い。状況を理解出来てないんだろ」
「目が……? VRで、身体能力はある程度平均化されるのに?」
このRe:behindにおいて、現実で各々が持つフィジカルステータス――――筋力、視力、体力なんかは、初期値が全員均される。
そこに職業を得る事によって補正がかかり、更には二つ名効果が乗って……それぞれの個性的な能力を持つキャラクターが作られていく仕組みだ。
ちなみにそれを『発育』と呼ぶらしい。まるで子供の成長を言う言葉だ。
…………AIが言っていた『子供たち』って、そういう事かな。
ああ、今思い返すだけで、憎たらしいAIだった。
「その辺はよくわからんが、アイツはしっかり【聖女】をしてた頃からそうだったぜ」
「へぇ……目が悪いかぁ。なんとも不思議な――――――」
「マグリョウッ!!」
――――――そんな会話を小声でしていた、刹那。
クリムゾンさんに抱えられていた俺の体が、突如として吹き飛ばされる。
……いや、吹き飛ばされたんじゃない。奪われた。誰かに腕を掴まれている。誰だ。
「マグリョウッ! 迎えにきたよ! レイナがマグリョウを、迎えにきたよ。一緒にリスに、食べられに来たよ」
なんだ、コイツは。俺はサクリファクトで、マグリョウさんじゃない。
「どうして正義の女に抱かれていたの? どうして? 浮気? そうなの? ひどい!
マグリョウ、それは駄目。禊、制裁、お仕置き。一緒に死のう? それなら許すよ。ううん、許さない、許さないぞ。死んでも許さない、消えても許さない。どうして? そんなのひどいよ」
凄いスピードだ。コイツの喋りも、動く速さも。
地面と並行に、滑るようにして移動するこの女。
足は全く動いておらず、つま先でスケートするみたいに動いてる。
なんだ、これ。何をしてるんだ? 何が起こってるんだ?
「――――って、てめぇ!! レイナァッ!! 何してやがるッ! 止めろッ!」
「やめない、とめない、どうして? マグリョウ。レイナと一緒にいよう? そうしよう。ずっと一緒で、リスのご飯になるんだよ。一緒に消えて、ずっと一緒になろう? それって素敵ね。夢のよう。マグリョウの夢を見たいな。見たいよ、見せろ、一緒に消えろ」
懸命にもがいて逃げようとするが、片腕だけじゃどうにもならない。
足で地面に食らいつこうにも、片足だけじゃ力が足りない。
必死で地面に足を突き立てようとしてみても、それは蛇の通り道のような一本筋を描くばかりで、俺を掴んだコイツの暴走は止まらない。
「止まれッ!! そいつは "マグリョウ" じゃねえ!!」
「……危険」
「少年っ!!」
一息で遠ざかるマグリョウさん達の声と、一気に戻った『リスがいる砂浜』。
だけれど今に至っては、リスより近い場所に居るヤツがいる。
【聖女】。目を閉じ、口角を上げ、きょろりきょろりと首を傾げる白い女でチーターらしい。
まずい。何だかわからんけど、まずい。
……そして、俺を引っ張っていたのは…………。
「あれ? 誰? お前。誰だ? あれ? マグリョウは?」
「…………お前が誰だよ、なんなんだよ」
黒い女だ。真っ黒い長髪で片目を隠し、その毛先には所々『何か』で結び目が付けられている。まるで悪趣味なメリーゴーラウンドだ。
全身すっぽり覆い尽くした黒いローブを身に纏い、片目でギョロギョロ睨めつけてくる。
…………何だよ、この不気味な女は。
「だれ? なに? マグリョウみたいな背丈して。マグリョウみたいな剣も持ってる。その上全身灰まみれ。だれだ? マグリョウは? 彼はどこ? お前は何なの。何がしたいの。偽物め」
「……こっちのセリフだ、何なんだよ……お前」
お化け、レイス、ゴースト。そんな言葉がこれでもかって似合うまでに、薄暗くて異様な女だ。
喋り方だって、それはもう信じられないくらい気持ち悪い。ベラベラと細かく刻むような言葉で、一人で会話してるよう。聞いてるこっちまでおかしくなりそうだ。
「なに? マグリョウ? 偽物め。むかつく。何なの。むかついた。
【聖女】もいるし、どういう事? また浮気? だめだよ、マグリョウ」
「…………」
いよいよ全開で警報を鳴らす俺の頭……そして視界の片隅に入る、聖女。
きょろきょろしていたその顔は、今はしっかり俺を見ている。
閉じられた目で、はっきりと見つめているんだ。
「血塗れ、赤百合、【血まみれ聖女】。お前はここで何してる? マグリョウを奪いに来たの? どうして? ひどい。消えろ。死んじゃえ」
頭がおかしい黒い女。だけど俺には、聖女と呼ばれる白い女しか……目に入らない。入れられない。
開いていないのに見つめてくる目は、まるでヒトを見る目でなくて。
無機物に向けるような無機質な感情は、AIよりもよっぽど人間味が感じられず。
俺の失くした四肢を見ながら、口を開いて唱えだすんだ。
「まーまー」
まるで子供のように舌っ足らずな、甘く さえずる可愛らしい声。
だけど、そこには底冷えするような恐怖しかない。
「ちゃんと」
機械的で、非生物的。作業のような魔法詠唱。
「ぷれい」
頭の白百合が、はらはら舞い散る。
その再生と衰退の輪廻は、徐々に回転を上げて行く。
「いんぼーく」
水瓶から流水が流れ出るが如く、百合の花びらが溢れ出す。
"まーまー・ちゃんと・ぷれい・いんぼーく"
そう言った【聖女】が、薄目を開けた。
「なんなの? 血塗れ。街に帰れ。何時も通りに引きこもれ。チーターめ! バグキャラが! えこひいきの癖に! お前なんかいらない。レイナとマグリ」
「『えりあ ひーる』」
足が生えた。腕が生えた。目が治った。
俺より前にいた『レイナ』とか言う黒い女の頭が弾けた。
俺の頭も、弾けて、死んだ。
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