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第五十一話 You raise me up 1




     ◇◇◇




「オオォォ……! タテコォ! ウオオォォ~ッン!!」




 筋骨隆々の大男が黒い鉄板にすがりつき、獣のように泣いている。


 治療薬として在る訳でもなく、プレイヤーのようで在る事もないその『役に立たない召喚獣』に、唯一無二の相棒であるタテコさんの影を見て。




「…………」




 それは確かに鉄くずだった。

 重くて、デカくて、役に立たないどころか邪魔ですらある代物だ。

 もし自分が召喚士(サモナー)で、気合を入れた初めての『召喚』でこんなんが出てきたら……ひどくガッカリすると思う。

 ソレは、そんな "ハズレ" の召喚獣だ。




「うむ……うむ。良かった……本当に良かったっ! これは何より幸せな、大団円なのだ」


「『療育用AIの記録データのサルベージ』……? これはなんとも……運営もずいぶん粋なはからいをするんだねぇ。ボク、リビハの人たちをちょっとだけ見直したよ」




 だけど、ヒレステーキさんにとっては何よりの "大当たり" だった。

 彼がRe:behind(リ・ビハインド)に求めるものは、そこにしっかりと込められている。




「…………下らねぇ。使いモンにならねぇ召喚獣を喚び出して大喜びだとか…………あぁ、まるで理解が出来ねぇな」




 嘘や誤魔化しを嫌うマグリョウさんが、照れ隠しの嘘を言う。


 ……きっと彼は、恥ずかしげもなく本心を晒したヒレステーキさんとタテコさんの繋がりに、心を強く揺さぶられたんだろう。

 ああ、絶対そうだ。

 何しろ悪態を吐き捨てながら背中を向けるマグリョウさんの振り向き際、そこに見えた灰色の瞳は、うっすらと赤く染まっていたんだから。




     ◇◇◇




「……しかし……それにしても…………むむむむ……」


「くあっ! くあっ!」




 シマリスは一時的に倒れ、ヒレステーキさんの件は落ち着いた。


 そうして場が落ち着いてくると誰もが目を向けるのが、【死灰】のマグリョウさんが喚び出したアヒル、『ぺったん』だ。




「あぁ……まるい体でよちよち歩いて……! ……あの! し、【死灰】っ! その……! さ……触ってみてもいいだろうか!?」


「あ、いいな~。ねぇねぇ、ボクもボクも~」


「……好きにしろ」


「くあっ! くあっ!」


「…………よしよし……ほほぉ! これはなんとも……すごくスベスベなのだ! それにとっても人懐っこいぞ!」


「飼い主とは大違いだね、いい子いい子」


「……おい、正義バカ。その羽根の所はデリケートだから触るんじゃねぇ。それに首とお尻も止めろ。撫でるなら頭か、くちばし辺りだ。そこを優しく……できたてのプリンを指で撫でるようにだな…………」


「んふふ。そこは普通、『乙女の柔肌を愛撫するように』とか言うものやよ」


「な……っ! いきなり下品な事を言うんじゃねぇよ! ハラワタ引きずり出すぞ!」




 戦いも役立つ効果も持たない代わりに、とにかく可愛い水色のアヒル。

 そんな愛玩用召喚獣を前にして、女子勢は大興奮だ。

 ぺたぺたとマグリョウさんの周りを動き回るアヒルに手を伸ばし、思い思いに撫で回して。


 っていうか、マグリョウさん。

 言葉のチョイスが恐ろし過ぎるだろ。




「……くあ~っ……」




 しかし、そんな女性陣の撫で回しを受ける『ぺったん』の姿はどうだよ。

 これでもかってくらい愛想を振りまいて、全身で喜びを表現しちゃってさ。

 まさしくツシマの言う通り、飼い主とは大違いの愛され系ムーブをしているぞ。




「くあぁ~っ……」


「あぁ、なんて愛らしい。見るのだ【殺界】よ。このアヒルは、私の手に頭を乗せて休憩しているようなのだぞ。この私をすっかり信頼しているようなのだ」


「お菓子食べるかな? ピーナッツがあるよ~」


「……おい、変なもん食わせんじゃねぇよ。やるならこの野菜スティックにしろ」


「む……【死灰】よ、それはもしかして『野菜売りのハベスト屋』の物か? それなら私も携帯しているのだ」


「貴重なストレージ容量を召喚獣のおやつにあててるの? んふふ、【死灰】って意外と面倒見がいいんだねぇ」


「…………うるせぇ、首切り落とすぞ」


「あひる」




 アヒルを撫でるクリムゾンさんと、それをハラハラした様子で見守る飼い主。

 その隣にはそんなマグリョウさんをニヤニヤ見つめてイジり始めた "ジサツシマス(ツシマ)" が居て――――そしてさりげなく、本当にさりげなくチイカがにじり寄ってきてる。

 "あひる……" とか呟きながら、ねっとりと距離を詰めてきているぞ。


 やっぱり可愛いものが好きなんだろうか。

 何だかんだ言っても結局チイカも女の子って所かな。




「ところで【死灰】よ」


「……ぁんだよ」


「この子に名前は無いのか?」


「…………………………ねぇよ」



「あれれ? だけれどさっき【死灰】は言ってたよね? "俺が望んだから、この『ぺったん』が出てきたんだぜぇ~" ってさ」


「…………」


「だから名前は『ぺったん』でしょ? ね? そうだよね? んふふ」


「ほほう、ぺったん」


「あひる……ぺったん?」


「…………」


「うむ、とても可愛らしい名前なのだ」


「んふふふ、そうだねぇ。愛情のこもったステキな名前やよ。【死灰】のマグリョウらしからぬ、渾身の名付けだね?」


「くあ?」




 エサに気を配っていたり、一生懸命考えたっぽい『ぺったん』という名前を与えたりする事から、マグリョウさんもアレを大切に思っているんだろう。


 そうして今考えると、マグリョウさんが気を散らすために持っていたおもちゃがアヒルも()()()()()()なのかな。

 彼がウサギやらの可愛い系に弱いのは前から知ってたけど、その中でも一番好きな動物がアヒルなのかもしれない。

 だからああして望み通りに、アヒル型の召喚獣が出ているんだろう。


 ……俺が召喚をしたら、一体何が出てくるんだろうか。

 ちょっと気になるし、いつか召喚士(サモナー)もやってみたいな。




     ◇◇◇




「……おい、いつまで撫でてやがる。もういいだろ、送還するぞ」


「む! ちょっと待ってくれ! あとひと撫で……いや、2抱っこをさせて欲しいのだ!」


「……2抱っこってなんだよ、どういう言葉だ。意味わかんねぇから死ね」


「んふふ。そうして死ね死ね言ってるくせに、ペットの名前は可愛いんだから面白いよね」


「…………おう、【殺界】。いい加減死にてぇならはっきりそう言えよ。一瞬で終わらせてやるからよ」


「わぁ、怖~い。"ぺったんの飼い主" がボクを殺しに来るよぅ~」


「……わかった、もういい。ブチ殺してやる」


「くあ~?」


「あひる」




 ずいぶん平和な空間だ。

 厳しく激しいドラゴン戦の中にある束の間の休息で、遠くを見渡せばラットマン共の包囲網すらあるっていうのに。


 これも【竜殺し(りゅうごろし)()七人(しちにん)】が持つ()()()()による所なのだろうか。

 物怖じしないというか、常に余裕を持つというか……何があっても自分のペースを崩さない感じだ。


 これは、アレだな。

 ヒレステーキさんとタテコさんがこうして望ましい形に収まった事を、誰もが心良く思っているんだろう。

 だからこうしてゴキゲンに、アヒルだなんだとはしゃいでるんだ。




「ひゃあ~助けてぺった~ん! 可愛い可愛いアヒルなキミを撫でて寂しさを紛らわす、哀れぼっちな飼い主くんが追いかけてくるんやよ~」


「……てめぇ……」


「凶悪な目つきで可愛いもの好きなマグリョウに、可愛いボクが殺されてしまうんやよ~んふふ~」


「くあ~? くあくあ~?」


「あひる」




 そりゃあ確かに今は大事な戦争中だし、更に言うなら俺たちはドラゴン戦の真っ最中だ。

 だけど、だからと言ってずっとピリピリしてたって仕方がない。


 リスドラゴンは死んでるし、周りのネズミは襲ってこない。

 だったら今はこうしてゆっくり遊んで、次のために英気を養ってても良いんじゃないかと思う。




「…………ヂ……」


「……おやや?」


「…………ギヂヂィ……ッ」


「むっ!? どうやら休憩はおしまいのようだな」


「……還れ、ぺったん」


「くぁあ~!」




 と。

 そんなこの場のゆるい雰囲気を、忌々しい声がぶち壊す。


 ……言ってるそばから『次』が来た。

 レイドボス戦のフェーズ移行、リスドラゴンの復活と強化だ。




『プレイヤーネーム サクリファクト。シマリス型ドラゴンが目覚めます』


「あぁ、わかってるよ」


「ギヂィ……ヂヂヂィ……ッ!!」




 しつこいドラゴンとの第五戦目だ。

 そろそろリスにも慣れてきたし、まぁ何とかなるだろう。




     ◇◇◇




『強大な力を持つシマリス型ドラゴンは、とうとう4度の死亡判定を受けました。そして今、4度目の蘇生を経た かの者は、新たな弱点の克服を手に入れます』


「弱点の克服っていうと……この場合、"毒物耐性" とかになるのか?」


『いいえ。毒物に弱いのは、生物として当然持ちうる弱みです。ですのでそれが消える事はなく、今後もそれは有効のままであるでしょう』


「マジかよ、それはラッキーだな」


『ただそれは――毒を以前と同じようにむしゃむしゃ食べるのであれば――という話ですが』


「……あぁ、そう。そうね。まぁそうだよな」




 今更言うまでもない事だけど、あのリスは学習をする。

 一度食らった戦法にはそれなりの対策をしてくるし、同じ罠には嵌まらない。


 だったら当然、食べたら死にかける "お菓子類(毒物)" をもう一度口にするなんて事も無いよな。


 ……ん?

 じゃあ今回消える弱点って……なんだ?




『プレイヤーネーム サクリファクトにお答えします。この度シマリス型ドラゴンが克服するのは、"花の香りが苦手" という要素です』


「……花の香りって……なんだそれ。俺たちはそんな物使ってないのに、このタイミングでそれを克服するのか?」


『聞いて下さい、そうではないのです。そのように考えるべきではありません。シマリス型ドラゴンの復活による "強化" は、自身の弱点を取り除く "強化" です。そしてその "弱点" という物は、元々持っているユニットとしての性質なのです』


「……わかりにくいな」


『つまるところ、かのシマリス型ドラゴンは、ずっとその弱点を持った状態でおりました。それゆえに4度も殺され、4度も復活をする自体に陥っているのです』


「う~ん……?」


『言葉を変えます。あなた方がその少数のままこれまでを戦えていられたのは、シマリス型ドラゴンが花の香りが苦手だったから、という事です』


「…………って事はつまり、アイツは今までずっと花の香りにヤラれてたって事か?」


『はい、そうです。ヤラれていました』




 花の香りと言われても……何だかこう、実感がないと言うかなんというか……いまいちピンと来ない。


 つーか、そんなフレグランス的な物がNGと言った所で、ここはどうしたって土くれだらけの荒野地帯だ。

 花なんてどこにも無いぞ。




『いいえ、この地に花はありました。白く清楚な大ぶりの花が、幾度も散り、幾度も咲きかえしていましたよ』


「幾度も、って………………あぁ」




 ……わかった。チイカだ。チイカの頭の白百合だ。

 それが咲いたり散ったりする中で香りを振りまいて、リスの鼻をおかしくしてたのか。


 それなら色々納得だ。

 リスドラゴンがやたらとチイカばかりを狙ってたのは、大っきらいな『花の香り』を嫌っての事だったのか。




「うん、まぁ……花の香りがあったってのは理解したわ。だけどそれって、具体的にはどんな影響があったんだ? 鼻が効かなくなってた~とか、そういう感じか?」


『いえ、確かにそれもありますが、それよりもっと単純なものです。シマリス型ドラゴンは調()()()()()()()()()()()。ですのでその弱点が消えた只今より――――』


「ヂィ……ギヂヂィィイイイッ!!」


『――――かの者の身体能力は、そのすべてが格段に上昇します』




 ごう、と茶色い暴風が吹いた。

 それがリスドラゴンが動いた事で起こったものだと認識できたのは、数秒経った後だった。


 それほどまでに雲泥の差。

 さっきまでとはレベルが違う、数倍速のスピードだ。



「ぐぅ……っ!?」




 デカい図体からは想像もつかない早さで動くリスドラゴンに、不意を突かれたクリムゾンさんが、トラックに轢かれたみたいに吹き飛ばされて、遠い地面に着地した。



『だからわたしはあなたがこの地を訪れた時、"調子はどうだ" と言ったのです。それはプレイヤーネーム マグリョウの真似っこでもありましたが、わたしからあなたへ送る些細なヒントでもあったのですよ、うふふ』


「な……今までとは、まるで違う……っ!!」




 クソウザい笑い声を漏らす "MOKU" の声を聞き流しながら、遠くへ飛ばされた赤い彼女を見る。


 ガクガクと足を震わせ、片膝をつくクリムゾンさんは、どう見たって被害が甚大だ。

 ……全身鎧と類まれなるステータスを持つ彼女に対して、ああまでダメージを負わせるのか。


 これが最強種の本来のスペック。

 絶対強者の数値の暴力で、仕様通りのぶっ壊れステータスか。

 調()()()()()()()シマリスドラゴン。

 "あなた方がその少数のままこれまでを戦えていられたのは、シマリス型ドラゴンが花の香りが苦手だったから" という "MOKU" の言葉は、こういう意味だったのか。


 ヤベーな。




「ヂィィィッ!!」


「わひゃ~」


「…………むぅ」




 そんなリスが次に狙うは、ちょうど足元に居るツシマとチイカだった。

 死神の鎌のような鉤爪を携えた右前足が振り上げられて、2人の命を刈り取ろうと狙いを定める。


 マグリョウさん……は、すでにリスの後ろだ。

 守るより殺す構え。それがあの人の生き様だし、あの人にしかできない仕事だろう。


 なら、彼女たちを守るのは――――俺しかいない。



「クソッ!」



 死ぬ気で地面を蹴りつけて、リスと2人の間に入り込む。


 守れるかどうかは関係ない。

 とりあえず、例え()()()()()()()()()()()、無残に死ぬだけだったとしても……そうしないといけなかった。




「チイカぁっ!!」




 自分の口がどうしてその名を呼んだのかはわからない。

 だけどとにかく、心が言うまま叫んで飛び込む。


 チイカは俺が殺させない。俺より先には死なせない。

 なんやかんや理由は思いつくけど、なんでもいい。

 とにかくそれは絶対させない。



「…………っ!」



 そして、チイカとツシマを思い切り抱きしめながら、襲い来る痛みを覚悟した。





 …………。




 …………。





 ……そんな痛みを待つこと、数秒。

 しかし、いくら待っても "痛み(それ)" は来なかった。



 …………なんだ? マグリョウさんがリスを止めたのか?

 いや、いくらあの【死灰】と言えども、今の一瞬でそうまでできるのか?


 そうして思いを巡らせながら、背後のリスドラゴンを振り返る。





「は…………?」




 そこにあったのは、大きな『壁』だった。




「わぁ……んふふ、何だかすごいや」


「…………意味わかんねぇ。どんな馬鹿力だよ」




 それは鉄板――いや、そんな言葉が似合わないようなデカい物だった。

 高さはおよそ2メートル。厚さは、少なく見積もっても30センチ以上。

 家の建築にすら使わないどころか、工事現場でも見られないような、とにかくデカくて分厚いクロガネの塊。

 そんな威圧感全開の頼もしい障害物が、俺たちとリスドラゴンとの間に立っていた。


 ああ、俺はこれを知ってるぞ。さっき初めて見たばっかりで、すでに大事な思い出だ。



「ンヌゥゥァァアアアアッ!!」



 ……これは、つまり。


 守ったんだ。

 ()()ヒレステーキさんが。


 "男" であるマグリョウさんを、じゃなく。

 "許せる女" であるクリムゾンさんを、でもなく。


 ツシマとチイカを、ヒレステーキさんが守った。

 ……黒い鉄板を盾にして、2人の()()の危機を、彼が救ったんだ。



「……は、はは」



 …………マジかよ、なんてこった。

 あのヒレステーキさんが、まさか、こんな。


 ああ、ちくしょう。これは最高だ。最高の展開だ。

 目頭が熱くなってきて、口元が自然に歪んでしまう。




「……フゥ~……フゥ~ッ…………! 見てるか……なぁ! 見てるかッ!? 見てるかタテコォッ!!」


『……ええ、見てます……キミの隣でしっかりと、見ていますよ……! ステーキ……っ!』


「オレは、治った! 変わった! 成長したッ!! だから今日からこのオレは、立派なヤツになってやるぞッ!!」


『はい……うっ……は、はい……!』




 ヒレステーキさんが、女性を守った。


 言葉だけでは知っていた。

 もう女性嫌いではない って事を。


 だけど、だからと言ってこんなに早く、それをこうまではっきり行動で見せてるってのは……俺にとって予想外の出来事だ。




「オレはお前に教わった! お前にこうして貰ったんだッ! お前が隣に居てくれたから! オレはこういう風になれるんだッ!!」


『はい、ええ……そうして、くれるんですね……!』


「お前のお蔭だッ! お前がオレを良くしてくれた! 治してくれたッ!! だからオレは、立派になる! オレをこうしてくれたお前が……お前は最高の()()()A()I()()()()って、証明するためにッ!!」


『はい……はい……っ! ああ、ステーキ……! ありがとう……ありがとう……!!』




 そのすべてが、大切な相棒『タテコさん』のため。

 彼の治療が間違いではなかった事を、身をもって証明するため。


 それは変化で、成長で――――紛う事なき『女性に対するトラウマの完治』の瞬間だった。


 精神も、肉体も、ゲームとリアルの生き方も。

 今まで培ったその全部を受け止め、それを立派に進展させて……今。


 ヒレステーキさんは自分のために、そして自分の友のために。

 新たな役割(ロール)を、高らかに名乗り上げる。




「オレとタテコ(お前)は2人でひとつだッ! だからお前の役割も、今日からはオレが一緒にやってやるッ! 今日から【脳筋】ヒレステーキはッ! 筋肉の鎧と最強の鉄盾を持つ、ムッキムキの壁役タンクをやってやるってのッ!!」


『ステーキ……っ! あぁ! ステーキっ!! り、立派です……僕の最高の、相棒……っ!!』


「んふふ、暑苦しかった筋肉も、こうなってくると何より頼もしく見えるんやよ」


「まぁ……肉壁くらいにはなるんじゃねぇか」




 ……ああ、やっぱり黒い鉄板(アレ)は最高だった。


 デカくて分厚い超重量級の特大盾。何物も貫けない最硬の盾。

 常人には持ち上げられない重さでも、【脳筋】だから扱える。

 そしてそれを『男女を問わず完璧に守りきる盾』を使いこなせるのは――――


――――今日までこの世界を『タテコさん』と共に歩んだリビハプレイヤー、ヒレステーキさん唯1人だ。



 Re:behind(リ・ビハインド)の運営ってのは、俺が思ってるより悪い奴じゃないのかもしれない。




     ◇◇◇





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