第三十六話 Ripple fire at them 4
◇◇◇
普通の『ヒール』をしたり、まともに喋ったり。
そんな至極当たり前の事をしているチイカに驚かされてばかりだ。
急にどうしたんだろうか。色々とらしくない。
好ましいけどおかしい、って感じだぜ。
「……言葉、喋れるのか?」
「…………」
「俺はてっきり、なんかのシステム的なアレで喋れないとか、そういうのかと思ってたぜ」
「…………」
「……おい」
「…………」
「聞いてんのか、ニヤけ面」
「……む~!」
ちゃんと聞こえているようだ。
俺から少し離れた位置で、頬を膨らませながら腕をぶんぶん振って怒りをあらわにしてる。
……もう少し意思の疎通が出来れば色々楽だけど、今はこの程度で十分だろう。
"大事なことには返答してくれる" ってのがわかれば、それでいい。
「ギィッ!!」
「……そんなん当たるかよ」
体力が回復し、二つ名【金王の好敵手】とスキル『一切れのケーキ』による加速も続く今なら、リスの攻撃を避ける事は造作もない。
さっきみたいなヘマをせず、着実に確実に、余裕を持って回避していればいいんだ。
「ギヂィ……!」
「ほれほれどうした。俺はこんなに元気いっぱいだぞ」
リスドラゴンを煽って自身に集中させつつ、チラ、とクリムゾンさんたちを見やる。
……未だ彼らは回復中なようで、いつの間にか居たクリムゾンさんのクランメンバーがごそごそと何かをやっている。
アレは確か……魔法師の人と、吟遊詩人の人か。
ヒーラーは居ないっぽいな。
『治癒のポーション』はスタミナ的な物は即時に治すけど、骨や内蔵の損傷を癒やすのには時間がかかる。だからきっと、それほどまでの大きなダメージだったんだろう。
なにせ一撃が強烈なリスにやられた3人だ。それが召喚獣であろうとも、そしてプレイヤーであろうとも、治るまで時間がかかるほどの大怪我をしているに違いない。
それに加えて、俺自身は人より速い時間の中に居る。
体感の経過時間が彼らよりずっと速いから、俺が思っているより時間が経っていないのかもしれない。違う時間軸に生きてるって奴だろうか。
「ヂィ……」
「……なんだよ、どうした? かかってこいよ毛玉野郎」
そうしてあちこち余所見する俺を、リスドラゴンが忌々しそうに睨めつける。
それはまるで、苛立ちながら "どうしてやろうか" と思考をしているようにも見えた。
俺の動きを覚え、予測をする学習能力。
そしてその上で、俺の回避先へと先回りする知恵。
それほどの知能を持っているなら、きっとそんな思考を巡らす事だってあるんだろう。
そんな悪い予感も、今度こそきちんと頭に入れておく。
俺は同じ失敗をしないんだ。学べないってのは、それこそネズミにも劣る事だろうから。
「ギヂギィィ……!」
「……来いよ、俺は死なないぞ」
「――――ヂッ!」
「……はぁ? ……なんだ?」
「ヂ! ヂィッ!!」
――――地団駄。
唸るリスが見せた動きは、それだった。
何もない場所を踏みつける動作。
二足歩行の後ろ二本、太い太ももから伸びた細長い後ろ足を、左・右と交互に出す。
……大地が揺れる。と言ってもそれは些細な物だ。
俺の体勢を崩すほどじゃないし、地割れを起こすなんて超絶パワーも有りはしない。
意味がない動きだ。
ただの威嚇で、癇癪を起こしているだけにしか見えない。
「ヂィ! ヂィィィッ!」
そんな、意図が不明だったリスの足踏み。
それが繰り返された幾度目か――ふとした時に、リスの足の毛が逆立った。
鋼鉄のように硬く、レイピアのように尖る体毛。
その先端がキラリと光って、鋭い先端に怯える本能で、肌が少し泡立つ。
「ギヂァッ!!」
――――そして行われたのは、毛の射出だった。
ずん、と踏み出されたリスの左足。その膝辺りの茶色い体毛が、こちらに向かって飛び出して来た。
……マジかよ。
あれって "燃えたら飛ばす" みたいな仕組みじゃなかったのか。
『疑問にお答えします。シマリス型ドラゴンの体毛は、かの存在による自由意志で "射出" が可能です』
咄嗟に横に飛ぶ回避。
俺がいた位置に針と化した毛が飛来し、地面に生えるようにして刺さった。
その射出速度はまさに弾丸じみていて、脳内に聞こえる "MOKU" の声に返答する余裕なんてない。
『しかしそれは、現時点では限りある資源で、自身の安全性を脅かす捨て身の攻撃です。現状硬くしなやかな体毛によって身を守っているシマリス型ドラゴンは、それを新たに生やす手段を "リスポーン" 以外に持ちません』
「ギィィッ!!」
『さて、そんな状況にあるプレイヤーネーム サクリファクトに対し、いいニュースと悪いニュース、その両方の準備があります。どちらからお伝えしましょうか?』
間髪入れずに次は右足を踏みしめ、毛の弾丸を飛ばしてくる。
さっきより広い範囲に向けて飛ばされた茶色い針は、避けきれなかった俺の片足、そのくるぶし辺りに何本か刺さった。
「……いいニュースっ!」
『それは、シマリス型ドラゴンがそうまでの事をしている現状の事です。身を護る盾を投げつけるがごとく、防御を捨てた一心不乱の攻撃。それは、プレイヤーネーム サクリファクトがシマリス型ドラゴンを追い詰めているという確固たる証ですよ』
「ああそうかよ! そりゃあ嬉しい話だなっ! ……じゃあ、すげえ聞きたくないけどっ! 悪いニュースってのは!?」
『悪いニュースをお知らせします。プレイヤーネーム サクリファクトのスキルによる加速効果は、残り時間がおよそ30秒足らずです』
「……マジか、本当に悪い情報だなっ!」
血に濡れてねちゃりとする針を引き抜きながら、切羽詰まった状況を知る。
知りたくなかったけど、知れて良かった。
……残り30秒か。まずいな。
加速が切れたら、俺は正真正銘のクソザコだ。
それまでに何としてもリスドラゴンの明確な弱点を見つけるか――……もしくはクリムゾンさんたちに回復して復帰して貰うしかない。
どっちも努力じゃ何ともならない難問だ。
どうしよう。想定していたより何も出来ていない気がする。
「ギィ……? ギギギッ!」
「は……?」
そうして足をヤラれた俺を見たリスドラゴンが、不意に明後日の方向へと走り出す。
……どうしてトドメを刺さない?
自分で言うのも何だけど、今は俺を殺す大チャンスだろ。
何を考えてやがる。
「……ギヂィーッ!!」
「…………」
そうしてリスは向かうのは、俺でもなければクリムゾンさんたちの居る場所でも無い方向。
地面にぺたりと座ってこちらを見ている――白い少女へと、真っ直ぐ。
「……ま、待てっ! それはやめろっ!」
……ふざけんな。
要らぬ理解をしてんじゃねーぞ、このクソネズミ。
"ヒーラー" ってもんと、それがする "ヒール" 。
それらの意味を知っていて、狙う優先順位を変えたってのか。
"ヒーラー" を先に食い殺すって知恵ある常道な戦法を、シマリスごときがしようってのか。
めんどくさい事になった。
一番困る展開で、ひたすら厄介だ。
「――ふざけんじゃ……ぐぅっ!」
立て。立って走ってチイカを救え。
そう考え、それを実行に移そうとした、その瞬間。
俺の頭がここ一番に痛みだす。
……【聖女】の、『ヒール』だ。
それも、とびきり気合の入った強いやつ。
劇的なピンチが連続するこの場の空気に当てられて、"癒しを" という願いに力が入りすぎたのか。
「…………くっ!」
チイカにだって見えているはずだ。
自分に迫る、大きな大きなリスドラゴンが。
どんなとぼけた奴にだってわかる、はっきりとした終わりが。
そんな状況だってのに、俺にヒールを飛ばすのかよ。
逃げるでもなく、自分に何かの防御系魔法をするでもなく。
自分がはっきり死ぬ寸前であるこの状況で、俺をヒールで助けようとしてんのか。
「……ぐぅぅ……っ!!」
チイカの優しさが身にしみる。物理的に頭が痛い。全身がはち切れそうだ。
今なお "ヒール" はかけられ続け、癒やされすぎて頭がズキズキ痛みだす。
……ちくしょう。下手くそヒーラー、誰より聖女らしいチイカの中身め。
治してあげたいって気持ちが、その優しさが、慈悲が。
それら全部が、強すぎるだろ。
「ギギヂィーッ!」
「…………」
「ぉぉ……っ!」
痛い、痛い、痛い。もう無理だ、耐えきれない、そろそろ頭が破裂して死ぬ。
だけどそれより、チイカがヤバい。
優しいあの子がドラゴンに食われる。
駄目だ。それだけは駄目だ。
こんな時まで他人の無事を願う彼女が、死ぬ寸前まで俺にヒールをし続けるチイカが、そんな目に遭うのだけは――――何が何でも絶対駄目だ。
助けろ、俺。チイカを救え。
彼女の『一生懸命』に応えるんだ。
どんな事をしてでも、何を捧げても、優しいあの子を助けるんだ。
変わろうとしているチイカを、こんな所で終わらせるな。
……わからないけど、きっと……俺が変えたんだから。
だったら責任持って、きちんと終いまで見届けてやれ。
それがまともってもんだし、男ってもんだ。
なぁ、そうだろ?
「……そうだろ、リュウ」
……相棒。
俺の親友、リュウジロウ。
お前の漢気、少し貸せ。
それとついでに――――
「……お前の勇気、ちょこっと分けてくれ」
剣を逆手に、腹へと当てる。
悩んでる暇はない。躊躇する余裕もない。
すげえ怖いけど、チイカが食われるよりは受け入れやすい。
やってやる。
漢気いっぱい、自傷行為だ。
◇◇◇
「――ぐぅッ……チイカぁ!」
「…………!」
リスドラゴンに掴まれる寸前、ギリギリの所でチイカにタックルし、怪我をさせないようにしながら抱きしめて滑る。
回避は成功だ。だけど、俺の脳内はそれどころじゃない。
ヤバい、マジで痛い、リアルに死ぬ、本当にやべえ。吐きそう。
ぐるんぐるんと襲い来る、混じりっけなしのド激痛。
世界のすべてが恨めしくなるほど、絶望が滾々と湧き出る地獄の苦しみ。
今までの人生にないのは当然として、これからも一生無いだろうって確信出来ると痛感する痛烈な疼痛。
痛すぎてマジでヤバい。本当に死んじゃうぞ。もう無理。
「うぉぉ……イィィィーッ! ッテェェッ!!」
自分で付けた腹の傷が、爆発するように痛みを訴える。
それを声に出せば少しは和らぐかと思って絶叫した。ことさらに痛くて後悔した。
意識もせずに涙はとめどなく溢れ、顔面は鼻水やらヨダレやらでぐちゃぐちゃだ。
「ハァッ……ぶ、無事……か…………ああっ! ……いてぇ! ぐぅぅ……ああっ! もう! マジでヤベえ……あああッ! 死ぬぅぅ…………ひぐぅ…………」
「…………っ!?」
……俺の相棒、【腹切り赤逆毛】から【ハラキリ】へと名を変えた漢、リュウジロウ。
そんなあいつを真似た腹切りは、俺の思うがままの成果をあげた。
"回復しすぎて死ぬのなら、回復をする受け皿があればいい" 。
それはヒールの過剰回復を怪我の治療に回し、『回復しすぎて死ぬ』って事象を回避するっていう、強引な解決策だった。
と言っても結局の所、これは明確に『自傷行為』だ。
自分の手で腹をかっさばいた愚行の罰は、これでもかってくらい味合わされている。
…………例えるなら。
巨大なペンチで腹を捕まれ、力任せに引きちぎられた感覚。
ギザギザの錆びたノコギリで、ゆっくり腹を開かれる感覚。
歯並びの悪い野犬に、ハラワタを踊り食いされている感覚。
そんな悪夢みたいなキツい痛みを全部ごちゃまぜにして、そんでもってまるごと100倍にしたってくらいの激痛だ。
……こんな事があっていいのかよ。ヴァーチャル拷問だ。法的にNGとしか思えない非人道だぞ。
改めて思う。『痛み』を脳へ "刷り込む" って、たかがイチVRMMOの運営では越権行為も良いとこだって。
社会問題になるべきだ、こんな魂を弄ぶ禁忌の遊戯は。
視界が暗く染まり、また明るくなるのを繰り返す。意識を保っているのでさえ一苦労だ。
頭がフラつく。痛すぎてもう色々がわかんねぇ。
もしかしてすでに死んでるんじゃないか、俺。
そして煉獄でこの身に厳罰を受けてるんだ、きっと。
そう思ってしまうほどの痛みが、とめどなく襲いかかる。
「ハァッ……うぉぁ……ハァッ……ぐぇぇ…………」
「…………あ……」
「ハァッ……これ……っ、これを、2回かよ、リュウ…………お前、本当すげぇなぁ……はは…………ぐぅぅ……っ!」
「…………あ うう……っ」
誰かの声がする。チイカか? "MOKU" か? もうわかんねえよ。
目もよく見えないし、何より痛すぎて頭がまわらない。
「ギヂァァッ!!」
うるせえネズミが鳴いている。ぽたりと俺の顔に何かが垂れた。
チイカが泣いてる。俺の腹を悲しそうに撫でながら、おろおろしつつぽろぽろ涙を零す。
動かなきゃ駄目だ。呑気に痛がっている暇は無い。
俺がやらなきゃ。頑張らなきゃ。優しいこの子を守らなきゃ。
そうしなければ、必ず後悔する事になる。
だから気合を入れろ。気合で何とかしろ。
「チ……イカ。俺に、捕まっとけ…………んぐぅ……っ!」
「…………んん!」
「大丈夫、大丈夫だ……俺は平気だ、漢だから…………ぐッ!!」
「んー!」
「任せろよ……こんなん、楽勝だぜ…………お前の『マナ・チェンジ』に比べたら、一回二回の自傷なんてさ…………」
リュウだけじゃない、チイカもだ。
誰かのためを思って、何度も "自傷行為" を繰り返していた。
口から血を吐き、痛みに全身を蝕まれながら、それでも他人を想って頑張ったんだ。
そんなチイカの気持ちがあればこそ。
俺だって、ハラキリくらい何遍だってやってやれるぜ。
……すげえ嫌だけどな。
「ハァッ……うう…………大丈夫、大丈夫だ。俺は平気だ……ぐぅっ! に、逃げようぜ、逃げるぞほら……チイカ、ほら…………」
「…………いたいの」
「そりゃあ……死ぬほどいてぇよ…………いいから、行く……ぞっ! 安全な所に……行こう……立て、ほら…………あっちに……」
チイカを抱えようとして、足がフラつき、崩れ落ちる。
なんてこった。糞根性じゃどうにもならないくらい、頭が『無理』だと判断してる。
気合でなんとかなれ。本気を出してどうにかしろ。
【七色策謀】らしく、ビシっと決めてくれよ、俺。
「ギヂィーッ!」
「ぐぅああ……ッ! 行くぞッ! ……ッチ、イカァ! 逃げ…………」
「……頑張ったね、サクくん」
――――ぽふ、と柔らかい何かに当たった。
次いで頭を優しく包まれ、髪を梳くように撫でられる。
暖かい。そしてなんかいい匂いもする。
嗅いだ覚えのある、少しトラウマじみた香りだ。
「もう、大丈夫やよ」
……ああ、この声。この喋り方。
ツシマ…………【殺界】、ジサツシマスか。
「……来て、くれたのか」
「勿論さ。ボクはキミのためなら、例え火の中ネズミの中~ってね」
「……でも、リスドラゴンは…………あいつが……っ」
「ううん、それも大丈夫」
「…………え?」
「ボクより先に、ジョーカーが来てたから」
そうしてリスに指を向ける【殺界】に釣られるがまま、チラつく視界でそっちを見る。
……なんだ?
視界がボヤけて、よく見えない。
何度瞬きをしても、リスの向こう側だけモヤがかかったようになってて…………。
…………モヤ?
「…………あ……っ!」
ああ、マジかよ。あれはモヤじゃない。
――――『灰』だ。
光を拒絶するような灰の霧だ。
……幾度となく見た、あの人が来た証だ。
「んふふ、リスの不運が始まるねぇ。それはとっても素敵なコトなんだ」
そうして上機嫌に笑うジサツシマスの声とほぼ同時。
どぷりと空気を染め上げながら、こちらに向かって進んでくるその『灰』に、ぼ・ぼ・ぼ とまあるい穴が開いた。
「――――ギッ!?」
それはクロスボウ、そのボルトだ。
ほとんど同時に3本打ち出されたソレは、リスドラゴンの両目と心臓にぴったり狙いを着けて放たれた。
「ヂィッ!」
避けるリス。それを知っていたかのように、間髪入れずに灰から飛び出す、無数の手斧やナイフに剣――――そして沢山の黒い玉。
そのどれもこれもが、全力で乱暴に、だけど的確にぶん投げられて。
「ギヂッ!?」
地面と水平のナイフ。ゆるやかな山なりの剣。くるくる回って飛ぶ手斧。
それぞれの特徴を活かしながら、それぞれしっかり殺せるようにと飛ぶ幾つもの刃物。
そこにどさくさで混ざった黒い玉は、パパパンと弾けて小さなトゲを撒き散らす炸裂弾だ。
「……ギヂヂィ――――ギッ!?」
そうした幾つもの投擲物。
それらが飛ぶ間に――誰も彼も、リスドラゴンでさえも気づかぬ内に――地面に転がされていた、大量の小瓶。
その小瓶すべてが、リスドラゴンの足元で同時に爆発した。
……音のなる物、目立つ物を堂々と投げ、それに気を取らせている間に決殺の『爆発ポーション』を地面に転がす、その殺意。
戦いの場に来て、即殺す気全開だ。
そんな仕草に、あの人らしさを存分に感じ……心の底から湧き上がる安堵に身を任せ、ジサツシマスに体重を預ける。
「……あぁ……つかれた…………」
「うん、お疲れ様。んふふ……お姉さんがこうして膝枕していてあげようね」
「…………頑張ってて、よかった」
「うんうん、そうだね。後は先輩に任せちゃおうね」
もわ、と灰が蠢いて、一部が揺らぎを止める。
灰と同じ存在感、灰と同じ雰囲気、灰と同じ色合い。
そんな灰色の何かが、徐々に人型を為していく。
そして、一人の男が、その姿をはっきりさせた。
「ギヂヂギィィ……ッ!!」
「よう、先日ぶりだなクソネズミ。死ねよ」
頭が痛い。腹が痛い。足がフラついて、立つ事すらままならない。
クリムゾンさんもヒレステーキさんも、タテコさんだって戦えない。
リスドラゴンは無敵の防御を持っていて、どうしたってダメージを与えられない。
だけど、もう大丈夫。この場の憂いは消え去った。
あの人が来た。
【竜殺しの七人】で【迷宮探索者】。
孤高の軽戦士、【死灰】のマグリョウ。
そんな誰もが認める最強の男が、ここに来た。
それだけで、大体は全部解決する。
マグリョウさんっていうのは、そういう人なんだ。
◇◇◇