急がば回れにも……
小説界に稀代の天才が現れた。
その作品がネット上に掲載されると同時に絶賛の嵐が吹き抜け、瞬く間に評判が広まった。
話題が話題を呼び、早くも書籍化の声が上がるなど、作者は一躍時の人となった。
……だが。
それほどの評価を得たにも関わらず、その小説は完結することなく、また、書籍化もしないままに作者はこの世を去る。
原因はその作風にあった。
元書道家の彼は、その作品の全てを半紙に毛筆で書き、ネットに画像にてUPしていた為、執筆に途方もなく時間が掛かってしまったのである。
息を引き取る直前、彼は今際の際にこう呟いたという。
━━速記で書けばよかった。
……と。